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ふたりの巨匠から学んだ飽くなき探究心

小林珠季(Maison Vérot シャルキュティエ兼料理人)

INTERVIEW 2019.04.18

フランスで3つ星を獲得した唯一の女性シェフ、アンヌ=ソフィー・ピック氏と、前衛的な手法で知られる3つ星シェフ、ピエール・ガニェール氏--対照的な2人のスターシェフのもとでスーシェフを務めたのが小林珠季氏だ。そんな輝かしい経歴をもつ、フランスで活躍する彼女が、なぜ「RED U-35」への出場を決めたのか? 大会を終えた彼女は今、何を見据えているのか? 


料理好きの祖母の影響で料理人を志すようになったと語る小林珠季氏の料理人人生において、アンヌ=ソフィー・ピック氏との出会いが大きな転機となった。それは専門学校時代のフランス留学時のこと。当時、ソフィー・ピック氏は2つ星シェフで、3つ星獲得に闘志を燃やしていた。ちょうどそんなタイミングで彼女の仕事ぶりを間近で見る機会に恵まれ、小林氏はますますフランス料理にのめり込んでいったという。

「彼女との出会いがなければ、今の自分はありません」とまで言う小林氏。専門学校を卒業後、「ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション 名古屋」での修業を経て、再びソフィー・ピック氏の店で腕を磨くことになり、スイスはローザンヌの店舗を経てヴァランスの本店へ。そこでなんとスーシェフに抜擢されたのである。しかし、「何でも吸収していこう」という小林氏の姿勢は変わることはなかった。小林氏がその後、スーシェフの肩書きを捨ててまで、ソフィー・ピック氏とはスタイルが異なるピエール・ガニェール氏の店の門を叩いたのも、“自分に足りていない何か”を吸収するため。こうしていち料理人として再スタートを切った小林氏だったが、驚いたことに、数年後、ここでもスーシェフに抜擢されたのだ。

小林氏によれば、これまで学んできた2人のシェフの料理は実に対照的であるという。

ソフィー・ピック氏のアプローチは、シンプルそのもの。納得する形になるまで、何度でも試作を繰り返し、素材のおいしさに最短距離で到達すべく、工程をそぎ落としていく。一方、ガニェール氏の料理は複雑だ。色を重ねていく油絵のように、即興で工程を重ねながら料理を仕上げてしまう。アプローチは異なれど、飽くなき探究心で我が道を突き進み、おいしさの感動を生み出すという、目指すゴールは同じだ。

この2人の巨匠に十分に実力を認められ、料理人としてさらなる飛躍をという時期に、なぜ「REDU-35」に出場したのか。その答えは意外なものだった。

「これから後進指導をしていく立場になっていくのに、私にはコンクール出場の経験がありませんでした。これでは、彼らに何もアドバイスできないなと思ったんです。この先もこの業界で生きていくのならば経験しておくべきだろう、と」。

そんな小林氏が、数あるコンクールのなかで、「RED U-35」を選んだのは、「大会を通して料理人の地位向上を図りたい」という滝久雄氏(RED U-35発起人/共催である株式会社ぐるなび 代表取締役会長 CEO・創業者)の言葉に共感を覚えたから。

「母は体力的にきつい料理人の仕事に良いイメージをもっていませんでした。滝会長のおっしゃるように、この大会で活躍する私の姿を見せれば、料理人に対する負のイメージを払拭してもらえるかもしれないと思ったんです」。

同大会の特徴は、与えられたテーマの解釈力が常に問われているところにあると感じていた小林氏は、その点を踏まえながら課題に取り組み、着実に勝ち進んでいった。ファイナリスト(ゴールドエッグ)という結果には満足しているが、グランプリや準グランプリに選ばれた出場者のプレゼンテーションを目の当たりにして、「自分には言葉で表現するスキルが足りていない」ことを痛感してもいる。もちろん、料理の知識・技術についても満足しているわけではない。多彩なジャンルの料理人が集結する「RED U-35」では、調理技術や技法、素材使いなど、さまざまな発見もあった。

「私はいろいろなタイプの料理人の技術を学び、それを一度消化して自分のアイデンティティーにしていきたいんです。今はまだその途中ですね」。

そんな小林氏が今、強い興味を抱いているのは、フランス伝統の食文化でもあるシャルキュトリー(食肉加工品)だ。

「今後は、一度レストランを離れて、シャルキュトリー専門店で職人技術を学ぶのもいいかなと思っています。これからも自分が学びたいと思ったことは、貪欲に吸収していきたいですね」。

小林氏の探究心は尽きることがない。再びスーシェフの肩書きを捨て、フランス料理の巨大な森に、さらに深く分け入る覚悟だ。

*Author|RED U-35編集部(MOJI COMPANY)

プロフィール

小林珠季(Maison Vérot シャルキュティエ兼料理人)

1984年、兵庫県生まれ。調理師専門学校卒業後のフランス留学中に、巨匠、アンヌ=ソフィー・ピック氏と運命的な出会いを果たし、師事。彼女の店「Maison PIC」でスーシェフを務めた後、奇才、ピエール・ガニェール氏の門を叩く。2018年より現職。

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