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本岡将|貫き通した等身大の“自分”

本岡 将(Restaurant Bio-s シェフ)2018 Finalist インタビュー

INTERVIEW 2019.04.22

25歳の若さで「Restaurant Bio-s」のシェフを務める本岡将氏は、卓越したセンスと料理に対するまっすぐな心意気が評価され、見事、「RED U-35 2018」の準グランプリに輝いた。大事にしているのは「料理が好き」という気持ちと、相手を思いやる「やさしさ」だ。論理的な思考をベースに、具体例を交えながら自身の料理をわかりやすく語る本岡氏の“自然体”に迫った。


管理栄養士だった祖母の影響もあり、本岡氏にとって料理は身近な存在だった。あまりに身近すぎたのだろう。自身の「料理好き」をはっきりと自覚したのは、進路を考えはじめた中学2年生のときのこと。その頭にふと浮かんだのは「料理人」の仕事だった。

「たとえば、毎日一緒にいる家族のことを、好きかどうかなんて普段は真剣に考えませんよね。でも好きか? と聞かれれば迷わず好きと答える。料理も同じでした」。

高校生になり、フランス菓子店でアルバイトを始めた本岡氏は、フランス文化に興味を抱きフランス語の勉強をはじめた。そのうちに、移民を受け入れるオープンな国柄に惹かれ、フランス料理を志すようになった。調理師専門学校を卒業すると、南仏、フランス・バスク地方、スペイン・バスク地方、パリと回り腕を磨いた。転機は23歳のとき。このまま海外で修行を続けるべきかと、悩んでいたところに、現職である「Restaurant Bio-s」のシェフの話が舞い込んだのだ。

「自分にはまだ早いと思ったのですが、当時、在籍していたレストランのシェフが、自分の料理を考えられるチャンスは滅多にないのだから、やってみなさいと背中を押してくれたんです」。

こうして帰国した本岡氏は2017年6月から「Restaurant Bio-s」でシェフを務めている。

「Restaurant Bio-s」は「里山ガストロノミー」を標榜する注目のレストランだ。静岡県富士宮市の山間にある店のすぐ隣には畑があり、そこで収穫された季節の素材を存分に味わえるため、遠方から来る熱烈なファンが多い。

本岡氏は、店のすぐ近くに住み、毎朝、野山で山野草を摘みながら通勤。レストランのすぐ脇にある畑では旬の野菜を収穫し、その日やって来る客を想像し、どうすれば一番喜んでもらえるかを考える。本岡氏にとってそれは至福の時間だ。

「たとえば、あるお客さまの前回の来店が2カ月前だとしたら、この野菜はまだ口にしていないはず。今回はこの素材をどうやって食べていただこうかな、と考える時間が好きなんです」。

毎日、素材と対話し、それをすぐに料理に反映できるうえ、お客からじっくり話を聞いて、次のサービスに生かせる環境……それは、人を気遣う「やさしさ」が最も大事と語る本岡氏にとって、理想の環境だった。

「料理が好き」という想いを噛み締めながら過ごす「Restaurant Bio-s」での日々。そんな日常の自分を本岡氏は「RED U-35」でも貫いた。大会を通して「料理が好き」という気もちを存分にアピールし、料理に「やさしさ」を込め続けた。その想いが「おいしさ」に変わり相手に伝わるという信念を抱いて。その結果としての準グランプリ獲得には、納得していると本岡氏は語る。

「もし入賞できれば、お客さまへの恩返しになるかもしれないと思って出場を決めました。あれほど著名な審査員の方々に評価してもらえる機会はなかなかないですから、自分を見つめ直すという意味で、ひと回りもふた回りも成長させてもらったなと思います。料理だけでなく、人間性も含めて評価していただいたことも嬉しかったですね。でも、大会が終わって自分のなすべきことが変わったかといえば、やっぱり何も変わっていないんです」。

では、10年後、本岡氏はどんな料理にチャレンジしているのか?

「わからないですね」と本岡氏は即答した。だが、こう続ける。

「でも、料理が好きであることは変わらないと思います。たとえば、かっこいいから好きになって結婚した相手がいるとします。では、その相手が老化して、かっこよくなくなったら好きじゃなくなっちゃうの? ちがいますよね。“好き”に特別な理由はないんです。それと同じで、理由はないけど、なんとなく料理が好きなんです」。

とはいえ、料理を嫌いにならないために、大切にしていることもある。

「この素材を使ってある特定のものをつくらなければいけない、というように、しばりを設けてしまうと辛くなるので、あれをつくりたい、この素材を使ってあげたい、という欲求が料理の原動力になるよう心がけているんです。そんなスタイルを一生続けていきたいですね」。

むやみに高い目標を掲げるのではなく、日々を大切に、足元をしっかりと見つめながら歩んでいく。そんな若き才能の自然体をこれからも応援したい。

*Author|RED U-35編集部(MOJI COMPANY)

プロフィール

本岡将(Restaurant Bio-s シェフ)

1993年、兵庫県生まれ。高校時代はバドミントンでインターハイに出場。調理師専門学校を卒業後、南仏、フランス・バスク地方、スペイン・バスク地方をまわり、腕を磨く。2017年、23歳の若さで「レストラン Bio-s」の料理長に就任。細やかなサービスで遠方から来る客を喜ばせている。

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