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山本紗希|苦労の末、たどり着いた新たなスタートライン

山本 紗希(コンラッド東京 オールデイダイニング「セリーズ」シェフ・ド・パルティ)2018 Finalist インタビュー

INTERVIEW 2019.04.19

山本紗希氏は、「RED U-35」への3度目の挑戦で見事、ファイナリスト(ゴールドエッグ)となり、優秀な女性参加者に贈られる岸朝子賞にも輝いた。それは、紆余曲折のあった山本氏の努力が報われた瞬間だった。常に思い悩みながら腕を磨いてきた氏の歩みは、若き料理人たちの共感を呼ぶはずだ。

好きな料理の道に進むべきか、海外で働く夢のために進学して外国語を学ぶべきか--。悩んだ末に大学に進学した山本氏は、インドネシア語を専攻し、さらに英語を学ぶためにニューヨークにも留学した。そして卒業後は広告代理店に就職。しかし、料理への想いが消えることはなかった。23歳で料理人になる決意をした山本氏は、以来、フランス料理やスペイン料理店、あるいはビストロ、ピッツェリア、ワインバーなど、さまざまな業態の店で腕を磨きながら、フードコーディネーターとしても活躍。さらにソムリエの資格を取得するなどして視野を広げることにも努めてきた。そして現在、都内屈指のラグジュアリーホテル「コンラッド東京」のオールデイダイニング「セリーズ」にてシェフ・ド・パルティを務める山本氏はやがて、ひとつの思いにとらわれるようになる。

「今の自分の力を確認したい」。

そんな思いから「RED U-35」への出場を決意した山本氏だったが、過去2回の出場は、いずれも一次の書類審査で落選。35歳を迎え、ラストチャンスとなった2018年は、これまでとはちがう気持ちで臨んだと言う。

「今回、駄目だったら、いつ、どこで私は評価されるのだろうという焦りがあったことも確かです。諦めずに出場し続けたのは、料理人としての自信を手にしたかったから。大学を卒業して、就職もしたのに、それを捨ててまで料理人を選んだのだから、トップレベルまで自分を高めたい、周囲に認めてもらいたい、と常に思っていました」。

決意を胸に挑んだ3度目の挑戦で、見事、書類審査を突破した山本氏。だが、勝ち進むにつれて、味わったことのない緊張の連続に苦しんだ。

「審査員は、憧れの方ばかり。三次審査でいろいろ質問をいただいたのですが、緊張のあまりどう受け答えをしたのか、ほとんど覚えていないんです」。

実は自分をアピールするのが苦手という山本氏は、続く最終審査の公開授業と公開討論で、その現実に直面することになった。

「最終審査では、自分のプレゼンテーション能力不足を痛感しました。こんなにも料理が好きなのに、それを十分に表現できなかった自分が不甲斐なくて……。面談や討論では、ただ質問に答えるだけでなく、さらなる自分のアピールを盛り込まなければいけなかったのだと思います」。

しきりに反省の言葉を口にする山本氏だが、女性ならではの細やかな感性で料理に込める「思いやり」の大切さを訴え、見事、岸朝子賞を受賞した。

「岸朝子賞をいただけたことは本当に誇りに思います。料理人としてようやく認めてもらえたと思えたのですから」。

大会を終え、山本氏は「RED U-35」に参加した意義について考えている。

「この大会は、自信のなかった私に成長のきっかけを与えてくれたのだと思います。ほかの挑戦者は、ほとんどが自分の料理に自信があったのかもしれません。でも、私はちがいました。大会中は、不甲斐ない思いをするばかり。ただ、その分だけ今後の成長の糧にできたと思います。ですから、私みたいに自信がない人こそ、挑戦してほしいですね」。

「RED U-35」出場を通して山本氏が得たことはたくさんある。料理人の仕事は料理をつくるだけではないということもそのひとつ。同世代の料理人の考えに耳を傾け、自分にもまだまだできることがあるのではないかと思えるようにもなった。それはまだ明確になっていないが、まずは今後、先頭に立ってホテル業界のイメージアップに努めながら、新しい料理人の働き方を模索していくつもりだ。

「今は新たなスタートをきった気分なんです。料理が好きでこの道を選んだのですから、『RED U-35』の経験を糧に、これからも悔いのないよう精一杯楽しんで仕事をしていきたいと思います」。

晴れやかな表情で語る山本氏の未来は、さらに明るいものになるはずだ。

*Author|RED U-35編集部(MOJI COMPANY)

プロフィール

山本紗希(コンラッド東京 オールデイダイニング「セリーズ」シェフ・ド・パルティ)

関西の大学を卒業後、大手企業に勤務したのちに料理人の道へ。「コラージュ」の前身「ゴードン・ラムゼイ at コンラッド東京」を皮切りに、都内のミシュラン2つ星、スパニッシュレストラン「スリオラ」、ビストロ、ワインバー、ピッツェリアで経験を積み、フートコーディネーターとしても活躍。2016年コンラッド東京に戻り、「コラージュ」と「セリーズ」にて腕を振るう。2018年には、ヒルトングループ内の料飲コンテストでCulinary Masterを獲得、RED U-35でも岸朝子賞を受賞するなど、コンラッド東京において、期待の若手シェフである。

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