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落ち続けた6年間が今の自分を支えている

浜田統之(「星野リゾート ブレストンコート ユカワタン」シェフ)

INTERVIEW 2013.10.18

世界一のフレンチ・シェフを決めるコンクールとして名高い「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」の日本大会において史上最年少優勝の実績を持ち、今年1月に開催された同世界大会において世界第3位、 9月末に開催された「国際料理写真フェスティバル」では日本人で初めて優勝という偉業を達成するなど、若手料理人の中でも高く注目される浜田統之氏。その実績に飽きることなく、 現在も様々な挑戦を続けている浜田氏に、その情熱の源となる想いと若き料理人へのメッセージをいただいた。

 

6年間予選に落ち続けた

 

——「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」世界大会第3位おめでとうございます。浜田さんは同コンクールの日本大会において史上最年少優勝の実績もお持ちですが、こういったコンクールにはいつ頃から挑戦をされていたのでしょうか?

 

ありがとございます。僕がコンクールに初めて挑戦をしたのは23歳の時です。当時の先輩がとある料理コンクールで世界第3位を受賞されたのですが、僕は最初「どうせ見た目だけだろう」と思っていました。それが食べてみたら、おいしかった。見た目も味も両立する料理があるのだと知り、興味を持ったのがきっかけです。

 

——初めて挑戦をしたコンクールはどんな結果だったのですか?

 

予選落ちでした。それから色々なコンクールに挑戦をしてみたのですが、落選ばかりで全然予選が通過できないという状態が続き、気づいたら6年間も予選落ちが続きました。
僕のプロフィールには史上最年少優勝とかしか書いていないのですが、実はその裏ではものすごい数のコンクールに挑戦し落選しています。

 

コンクールに出ることに価値がある

 

——浜田さんは、若くして成功しているシェフというイメージがありますので、意外なお話です。

 

ですが、僕はこの経験があるからこそ今があると思っています。落ちることで学べることがたくさんあります。落ちたからこそ「なぜ落ちたのだろう」と徹底的に考える。そこで気づくこと、学べることが多いのです。
そして、翌年は必ず出られるように頑張ります。僕は、人より技術もセンスも無いと今も思っています。ですから、すごい人たちに追いつくために、6年間、休日はフランス料理だけでなくイタリアンや和食、中華など、いろいろなレストランを手伝いながら、勉強をさせていただきました。

 

——それだけ努力をし6年間落ち続けて、途中であきらめようと思ったことはないのでしょうか?

 

毎回凹むのですが、やり続けていくとその中に少しずつ見えてくるものがあります。こうやったら見栄えがいいぞとか、味も自分なりに納得いくものになるぞとか。それと、自分はコンクールを数多く経験していますが、大切なのは勝ち負けだけではないと思っています。コンクールに出ることで自分にプレッシャーを与えられるということ、そしてコンクールによって自分は世界の中で、どのくらいのところにいるのかということもわかりますし、コンクールに挑戦することで得られるものは多いのです。ですから、僕は後輩たちには積極的にコンクールに出るように勧めていますし、ホテル内でもレベルに合わせたコンペティションを定期的に行なっています。

 

フランスの料理人に「日本のレストランに興味は無い」と言われた

 

——世界の大会でも高く評価された浜田さんですが、浜田さんはこれから先何を目指していらっしゃるのでしょうか?

 

世界の人たちがこのレストランをめがけて日本にやって来るような、日本人の感性を生かした「日本のフランス料理」を提供するレストランを目指していきたいですね。
僕がこのユカワタンをオープンする前にフランスへ視察に行った2009年頃、その頃というのはミシュランの三ツ星のお店の数で東京がパリを抜いたと日本では騒がれていた頃だったのですが、フランスで仲良くなった若手の料理人たちに「日本のお店をどう思う?」と聞いたところ、「全く興味が無い」と言われ驚きました。理由を聞いてみると、「日本にあるフランス料理はフランスにあるお店と同じだからこちらで食べることができる。わざわざ日本に行きたくなるような日本らしいフランス料理がない」と言われ、ものすごいショックを受けました。

 

——日本に行きたくなるような日本独自のフランス料理がないと?

 

はい。僕もそれまではフランスにずっと憧れていましたし、その時までユカワタンでも同じようなフランス料理を出そうと考えていました。ですが、その言葉を受けて、だったら自分はフランスで修行をした経験はないけれど、その分日本のことはよく知っているし、料理で日本らしさを表現できるのではないか、と考えるようになり、それ以来、日本人の感性で日本発のフランス料理を発信していこうと、日本を学び、食材はもちろん器も日本のものにこだわるようになりました。

 

——それはコンクールでも同じですか?

 

はい。先日のボキューズ・ドールでもそうでした。魚料理は1位をいただき、肉料理は5位だったのですが、これはおそらく肉料理の食材に、審査員が食べ慣れたトリュフやフォアグラを使えばもっと良い点数を頂けたのではないかと思っています。しかし、それを使ってしまっては日本の僕が目指す料理にはならない。結果は5位となりましたが、それによって僕自身が得るものは大きかったです。

 

動かなければ何も始まらない

 

——最後に、若手料理人へのメッセージをお願いします。

 

大切なのは動くこと、チャレンジすることです。動かなければ何も始まりません。僕は最初のコンクールは、実は先輩に勝手に応募されたところから始まっています。絶対に無理だと思っていましたが、先輩から「興味があるんだろ、出てみろよ」と。結局それがきっかけになり、先日のボキューズ・ドール世界第3位、その後の「国際料理写真フェスティバル」の優勝につながっています。
まずはどういう形であれ、一度はやってみるべきです。その結果がどうであっても、そこで得るものはたくさんあります。僕は今でもいろいろなことに挑戦し続けています。今回のRED U-35のようにこれからもいろいろなチャンスがあると思います。どんどん飛び込んできてほしいですね。

プロフィール

浜田統之(「星野リゾート ブレストンコート ユカワタン」シェフ)

1975年鳥取生まれ。18歳からイタリア料理の世界で腕を磨き、24歳でフランス料理へ転身。埼玉のホテルで修行中、ボキューズ・ドール国際料理コンクール日本大会において史上最年少で優勝を果たす。食材の宝庫である信州に魅かれ、2007年軽井沢 ホテルブレストンコート総料理長に就任。2011年メインダイニング「ブレストンコート ユカワタン」オープン 2013年ボキューズ・ドール国際料理コンクール世界大会第3位 銅メダルを獲得。同年「国際料理写真フェスティバル」優勝。日本人としての繊細な感性で、軽井沢から世界へ発信する日本のフランス料理を目指している。

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