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「RED U-35」から生まれる料理人の新たなムーブメント

門上武司(フードコラムニスト 雑誌「あまから手帖」編集顧問)

INTERVIEW 2015.07.16

ただ料理をつくるだけではなく、料理を通じて何を発信し、いかにして社会とつながるのか――。それが今、料理人が考えるべきことだと言う門上武司氏。稀代のフードコラムニストが語る「RED U-35」の魅力とは。

 

——過去2大会を振り返っていただいて、改めて感じた「RED U-35」の魅力とはどんなところでしょうか?

 

新たな才能を発掘するだけではなく、コンテスト後も審査員やプロジェクトにかかわる人たちがサポートをするというシステムが素晴らしいですね。国内だけでなく海外で活躍している人も含めている点もいい。みんな勝ちたくて、負けたら悔しいんだけど、思っていた以上に、若い料理人の間に“同志”としての連帯感が生まれました。審査員やスタッフとの交流も濃密でね。若い人を核にして、料理の世界を盛り上げて行こうという気運が広がって、料理人の新たなムーブメントが生まれつつあると感じています。今、料理人に対する評価は、単に料理をつくるだけではなく、料理を通じて社会とどうつながり、何を発信するのか。そのために周囲の人を動かせるかということも含めたものになっています。その部分をフォローした、非常に意義のあるコンテストだと思います。

 

——そんな「RED U-35」において、門上さんはこれまで、どのような視点で審査なさっていましたか?

 

料理人は、料理を通じて食材の知識を得たり、生産、流通、サービスをする人たち、そして食べる人たちと、コミュニケーションするわけですよね。ということは、料理人にとってコミュニケーション能力はとても重要な要素でしょう。それと、どれだけ自分の哲学や志をもっているか。周囲の人がそれに応えて協力体制をつくってくれているか、という点を見ていました。それはつまり、自分はコンテストで何をアピールし、そこで勝ち得たら次にどういう風に周りとコミュニケーションをして、どのように社会とかかわりをもっていきたいかということを、どこまで本人が明確に考えているのかということです。

 

——たとえば、過去2大会のグランプリである杉本敬三シェフや、吉武広樹シェフについて、どんなところを評価されたのでしょうか?

 

杉本さんは、フランス料理の古典をすごく勉強していて、それを今の時代に受け入れられるように再解釈し、最新の技術で世界に発信するということを考えていました。グランプリを獲得するまで、その名は一部でしか知られていませんでいたが、このコンテストを機に知名度は上がり、いろんな人との出会いやイベントに参加するなど、着実にその世界を広げています。彼の活躍は、今孤独を感じている料理人に対しても意味のあるものでしょう。一方、吉武さんはすでにパリのレストランで一つ星をもっていたし、JALの機内食のプロデュースもしていた。それだけ知名度が高くても、彼は「世界の中心に立ちたい。ザ・ワールド50ベスト・レストランのトップになりたい」と明言したんですね。「僕がその立場に立てば、ほかのシェフに勇気を与えられると思う」とも。その視野はとても広いし、自分の舞台は地球だというぐらいに考えているのが伝わりました。

 

——吉武さんのように、海外で活躍する日本人料理人の話題が尽きません。そんななかこれからの日本の料理界に必要なこととは何でしょうか?

 

たとえば和食は今、世界の無形文化財として注目されていますよね。しかし「和食とは何か」という問いに、明確に答えられる日本人がどれだけいるでしょうか。日本料理に限らず、料理についてかなり勉強しないといけないと思います。自分がつくる料理のルーツや、おいしさの根拠、料理のテクニックの裏付けを学ぶことも必要でしょう。また、異ジャンルの料理人や生産者、流通にかかわる人びととの交流も欠かせません。たとえば塩の打ち方ひとつにしても、日本料理とフランス料理とではまったくちがいます。自分のジャンルだけでなく、ほかの分野に目を向けることで、料理の奥深さがわかってくるはずです。そのためには、志を高く、大局を見て、でも行動は目の前から地道にこつこつと。着眼大局、着手小局と言いますか。それやと思いますね。

プロフィール

門上武司(フードコラムニスト 雑誌「あまから手帖」編集顧問)

1952年大阪府出身。フードコラムニスト。料理雑誌「あまから手帖」の編集顧問を務めるかたわら、食関係の執筆、編集業務を中心に、プロデューサーとして活動。「関西の食ならこの男に聞け」と評判高く、テレビ、雑誌、新聞等のメディアにて発言も多い。食に携わる生産者・流通・料理人・サービス・消費者をつなぐ役割を果たす存在。2013年から一般社団法人 全日本・食学会の理事長を務める。

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