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「やられたな!」と思わせる。そんな才能に出会いたい

山根大助 (「ポンテベッキオ」オーナーシェフ)

INTERVIEW 2015.10.13

「君たちは今、ものすごく面白い位置にいる」――。今回より新たに審査員として参加する「ポンテベッキオ」オーナーシェフ、山根大助氏から若い料理人へのメッセージである。はたして、その真意とは?

 

——「RED U-35」の対象は「35歳未満」です。その年代のころは、ご自身にとってはどのような時期でしたか?

 

まず35歳という年齢は、料理人としても店を運営するうえでも、分岐点となる年齢。コンペティションに出て何がしたいのか。どんな評価を得たいのか。自分のポジションはどこで、どう変化していきたいのか。「RED U-35」はそんなことを確認し、自分の料理を見直し、練り直すいい機会になると思います。僕自身は、20代前半でオーナーシェフを務める最初の店をオープンして、店を移転したのがちょうど35歳ごろ。まだまだ未熟でしたが、僕は理想主義的なところがあるから、自分の考える料理人像、あるいは店づくりの完成形をつねに追い求め続けていたころ。でも、なかなかそこに辿りつけなくてね。「こんなものでいいはずがない。もっとちゃんとしなきゃ」といつも思っていました。「イタリア料理とは何か」という問いにも答えが出なくて悩みました。人を指導する料理理論を確立していなかったから、人が使えないし……。だから辛かったですよ。でも、そんな試行錯誤の時期を経て、今につながる「最適調理」「料理はデザイン」という考え方が見えてきたんです。素材の特性を最も生かせる調理方法、温度、加熱時間、切り方とは何か、緻密に、ロジカルに考え、化学的、物理学的に素材を見て、タンパク質の凝固温度などいろんなことを学んで実験しました。「セオリー」とされるものを疑ったり、日本の素材に挑戦したり。店づくりという点でも、調理器具や店のデザインを追求していた時期です。そんな僕らのやっていることを世界の人に見てほしかったし、彼らがどう評価するかを知りたかったから、もしこの大会があったら絶対に参加していたでしょうね。

 

——現在の日本の料理界に必要なこととは?

 

“発信力”と“探求心”でしょうね。世界の料理界が目指す方向は、“クリアでピュア”な料理。それは素材を生かした、シンプルな料理ということ。日本ではそれを「キレがいい」と表現しますが、他の国ではこのニュアンがなかなか伝わらない。でも、日本人なら「キレがいい」というだけで、それがどういうことか感覚的にわかっちゃう。ということは、有利でしょう? また、食のグローバル化が進み、食材や調味料だけでなく、焼く、揚げるといった調理方法そのものもグローバル化しています。日本ほど、さまざまな国の料理に日常的に触れている国はありません。すでに先人たちはあらゆる国の料理を探求し、解明し、理解する作業を積み重ねてきました。それらの遺産を受け継ぐ次世代の人たちは、スタートラインの時点で相当先に立てるんです。つまり僕たちは今、世界がつくりたいと思っている料理に近いところにいる。だから若い人には「君たちは今、ものすごく面白い位置にいるよ」と言いたいですね。

 

——若き料理人に求めるものとは? どんな人に会いたいですか?

 

話したいことがいっぱいある人がいいですね。それは、自分のクリエイティビティーを追求しているということですし、他人のマネをしないということでしょう。クリエイティビティを最大限に発揮して、世界で通用する「これは」というものを見せつけて、僕らに「ああ、やられたな!」と思わせてほしいですね。料理人は、自分ができないことをする人をすごく尊敬するもの。そんな才能を見つけたら、僕は乗り越えるべき壁みたいな存在でありたい。簡単に越えられないよう、僕も頑張りますよ!

プロフィール

山根大助 (「ポンテベッキオ」オーナーシェフ)

1961年生。大阪府出身。大阪あべの辻調理師専門学校卒業後、81年「ドンナロイヤ」へ。84年に渡伊。「グアルティエロ・マルケージ」などで研修の後帰国後、86年、自店をオープン。「モード・ディ・ポンテベッキオ」、「ドルチェ・ポンテベッキオ」、「エキ・ポンテベッキオ」、「ウ・ポンテベッキオ」等、多ジャンルを展開。04年には、イタリア政府よりカヴァリエーレ章を受勲。

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