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衝突を恐れずに、相手に向き合うことが大切

三澤彩奈 (「中央葡萄酒株式会社」取締役・栽培醸造部長・ワインメーカー)

INTERVIEW 2016.05.19

英国のワイン雑誌「デキャンタ」が主催する「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワーズ(ロンドン)」は、ワイン最高峰の資格であるマスターオブワインの有資格者や世界のトップソムリエ等による厳しい審査が行われる世界最大級のワインコンクールと知られ、ワイン関係者だけでなく、消費者の目線も大切にしていることから、ワイン愛好家がワインをセレクトする際の指標ともなっているコンクール。そのコンクールで、全体の1%未満のワインにしか与えられない金賞・地域最高賞を日本で初めて受賞したワイナリーが、山梨県の中央葡萄酒だ。そのワインを造りあげたのが、醸造責任者の三澤彩奈さん。フランス・ボルドーで醸造学を学び、世界各地のワイナリーで修行した後、帰国。実家の中央葡萄酒で、10年近く試行錯誤を重ねた末の快挙だった。そんな三澤さんに、日本ワインと料理とのマリアージュ、「RED U-35」に対して感じたことなどについて伺った。

 

——ワインコンクールで金賞を受賞し、世界から脚光を浴びた三澤さんの目に、「RED U-35」はどのように映っていますか?

 

私は「RED U-35」の挑戦者の方々と同世代なんです。その意味では、とても刺激になる大会だなと思いました。職種は違っていても、同世代の方たちが活躍するのは嬉しいし、頑張ってほしい。フレンチなどは、外国の文化を自分のものとして昇華していくもので、ワインとよく似ています。その点でも料理人の方々には共感する部分も多いですね。

 

——ご自身のワインが金賞・地域最高賞を受賞されたときの感想は?

 

受賞したワインは日本独自のブドウの品種である甲州で醸造した「キュヴェ 三澤 明野甲州2013 」です。この甲州種は、ワイン用の品種としては糖度が上がりにくいんです。その糖度を上げるためのブドウの栽培は、試行錯誤の連続でした。結果の出ない日々が続き、正直いって苦しいばかりでした。そんななか、2012年にはじめて目標の糖度の甲州ができたんです。そして、2013年はさらに糖度が上がりました。その2013年の甲州を使って造ったのが、金賞・地域最高賞を受賞したワインです。審査員の方からは「かわいらしい白い花の香り」、「酸味がいい」、「余韻が長い」という評価をいただきました。もちろん嬉しかったですが、ほっとしたという気持ちのほうが強かったですね。やっとスタートラインに立てたと思いました。

 

——今後、どのようなワインを造り、どのようなワイナリーにしていきたいとお考えですか?

 

フランスでワインを学んだ後に、南アフリカ、チリ、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチンとワインの新世界と呼ばれる国々のワイナリーでも学ばせていただきました。そこで感じたのは、気候のハンデを負っていたとしても、日本のワイン造りは恵まれているということです。それは、甲州という日本独自の品種があるからです。ある著名な料理人は、「料理は素材50%、技術40%、才能が10%だ」と言っていました。ワインの場合は、ブドウが80%、造りなどのほかの要素が20%だと思っています。ワインの品質は、ブドウ畑の質でほとんどが決まります。ですので、もっと甲州種をはじめとしたブドウづくりのクオリティを上げていきたいと考えています。

 

——日本ワインと料理との相性はいかがでしょうか?

 

ワインとは食中に飲まれることが多いお酒だと思います。パートナーや家族と一緒に楽しむものなのではないでしょうか。やはりワインは料理あってのものですよね。私はワインが料理に負けることはかまわないと思っているんです。でも、料理に対してワインが主張しすぎていたり、料理と合わないものはダメ。やはり、ワインは料理あってのものですね。日本のワインは素材の味を邪魔しない良さがあるものが多く、素材そのものの味を大切にする日本の料理との相性がいい。余韻と余韻が重なりあって、嫌味のない上品なマリアージュが生まれます。近年、私たちのワインとのコラボレーションをしていただく機会も増えていて、たとえば、昆布出汁と甲州のペアリングは忘れられません。他にも、最近では、神戸牛とのワイン会を開いていただきました。もちろん赤ワインも合うのですが、さしの多い神戸牛を私たちの白ワインで、油を流すような合わせ方をご提案いただいて、新鮮でした。料理人の方々とのこうした交流から、多くのことを学ばせていただいています。

 

——ワインの醸造家から見て、日本の料理がさらに進化し、世界へアピールしていくためには、何が必要だと思われますか?

 

自分の国と文化に誇りを持ち、自分を信じることだと思います。海外の人、とくに海外の醸造家との交流を通して感じるのは、彼らが自分たちの文化に誇りを持っていて、ワイン造りにはその文化や、それぞれの国の知恵が反映されているということです。お互いを認め合いつつも、自分たちが、「この料理やワインが素晴らしい」と思うものについては、頑なに主張をします。そんなときに、相手を尊重するだけでなく、「あなたはそう言うけれど、私はこう思う。日本のワインはこんな個性があるから可能性があるんだ」とはっきりと意見を言うことが必要だと思います。

 

——「RED U-35」に参加している若手料理人へのエールをお願いします。

 

ワイン醸造もそうですが、料理の世界も競争の激しい厳しい世界。そんななかで、料理を極めようという志のある同世代の料理人の方々のご活躍を、心から楽しみにしています。お料理もワインも、美味しいものは溢れていますが、本当に心に響く、またどうしても食べたいという一品には、なかなか出会えない気がします。だからこそ、「RED U-35」の一期一会に期待しております。

プロフィール

三澤彩奈 (「中央葡萄酒株式会社」取締役・栽培醸造部長・ワインメーカー)

山梨県生まれ。中央葡萄酒株式会社4代目経営者の長女として生まれる。ボルドー大学ワイン醸造学部DUADを卒業し、フランス栽培醸造上級技術者の資格を取得。その後、南アフリカ、ニュージーランドなど各地で修行を重ねる。2007年より実家のワイナリーで、ワインメーカーとして勤務。

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