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料理の先にあるものを考える

生江 史伸(レフェルヴェソンス シェフ)

INTERVIEW 2017.05.18

今や日本の料理界の顔として、世界に知られる生江史伸氏。氏が考える、料理人にとっての“成功”とは何か。成功を夢見る挑戦者へのメッセージに耳を傾けてみた。

 

——若き料理人たちのどんなところに期待していますか?

 

僕が注目しているのは、若き挑戦者たちが、料理の先に“何”を見ているのかです。美味しい料理を実現し、自分のお店を予約困難な繁盛店にすることが、料理人としての成功なのでしょうか? 今はもう、そういう時代ではなくなっているように感じられるのです。

 

——では、生江さんにとって、料理人としての成功とは?

 

美味しい料理で目の前のお客さまを喜ばせるのはもちろん、お店のスタッフ、さらに我々に食材を提供してくださっている生産者や流通に従事する方々の幸せを考えられるようになること。それを料理を通して実現することこそが、僕にとっての“成功”です。料理の先にあるもの、つまり、己の一つひとつの選択が社会に及ぼす影響を考えながら行動することが重要なのです。よりよい社会の実現において、料理は大きな可能性をもっているのですから。“食”は、人間の本能的な欲求であり、基本的に喜びをともなう行為です。つまり、美味しい料理ならば、無理なく、ポジティブに受け入れられるはずです。そしてよりよい社会実現のための行動を促すこともできるのではないかと思います。

 

——挑戦者にもそうした気構えを求めたいということですね。

 

人材不足や縮小傾向にあるマーケットなど、さまざまな問題を抱える料理業界に目を向けると、料理で自己表現ができればそれでいいという時代ではないことがわかります。ですから、挑戦者にはともに料理業界を盛り上げるプレイヤーの一人としての自覚をもって料理に取り組んでほしいですね。コンペティションですから、もちろん勝利を得ることも重要でしょう。しかし、それはゴールではありません。“Competition is Collaboration(コンペティションはコラボーレーション)”--つまり、挑戦者が互いに切磋琢磨することで、ともにさらに上のステージを目指すイメージを抱いていただきたいですね。

 

——最後に、「RED U-35」にチャレンジする料理人へのメッセージをお願いします。

 

前述のとおり、コンペティションは勝利することがゴールなのではなく、むしろその後が重要です。勝ち負けにかかわらず、克服すべき課題は結果にあらわれるはずですから、それを糧にしてほしい。もちろん自分では気づいていなかった長所を指摘されることもあるでしょう。しかし、褒め言葉には注意が必要です。私も「感動したよ。こんなレストランは世界中どこにもない。シェフは世界一の料理人だよ」と、お客さまからお褒めの言葉をいただくことがあります。もちろん、鵜呑みにはしませんよ。とくに、外国人のお客さまの場合は、表現がオーバーですから(笑)。スタッフにはいつも言っているんです。「褒められたときこそ兜の緒を締め、貶されたときこそ、それを最大の学びのチャンスと捉えよう」と。

プロフィール

生江 史伸(レフェルヴェソンス シェフ)

1973年、神奈川県生まれ。1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、「アクアパッツァ」入社。フュージョン系のレストランなどを経て、2003年、「ミシェル・ブラス トーヤ・ジャポン」に入店し研鑽を積む。スーシェフを経験後、2008年に英国の3つ星「ザ・ファット・ダック」入店、スーシェフ及びペイストリー部門担当に就任。2009年、帰国。2010年に「レフェルヴェソンス」エグゼクティブ・シェフに就任。2017年度「アジアのベスト・レストラン 50」にて、12位にランクイン。

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