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薬師神陸|想いを“伝える”ことを武器に新たな道を切り拓く異色の料理人

薬師神 陸(SUGALABO シェフ)

INTERVIEW 2018.04.27

フランス料理界の巨匠ジョエル・ロブションの片腕として活躍してきた須賀洋介氏が満を持して東京にオープンさせた注目の会員制レストラン「SUGALABO」。同店のシェフを任されているのが、薬師神陸氏だ。辻調理師専門学校の教師出身という異色のキャリアで見事ゴールドエッグに輝いた薬師神氏は、これまで自分の率直な気持ちを公にすることを心がけてきたという。この姿勢は、多くの若き料理人にとって、大きなヒントとなるだろう。

 

 

薬師神陸氏は専門学生だったころから、授業だけでは飽き足らず、いろいろな料理コンクールに出場してきたという。

 

「教わるだけでは、自分の実力をはかることはできません。その点、コンクールにおいては、自分の知識と感性で一から料理をつくるので、自分に何が足りないのかを考えます。コンクールは、貴重な実践の場でした」。

 

そうした経験を踏まえ、もう少し料理の基礎を勉強したいと思った薬師神氏は、卒業を目前にそのまま教師として辻調理師専門学校に残る道を選んだ。

 

「プロの現場を知らずに先生になるのは、珍しいケースです。まだ20歳でしたから、生徒との年の差もわずか。だからこそ、生徒からの質問に答えられない事態だけは避けたかったので、あらゆる質問を想定しながら万全の準備をして授業に臨んでいました。しかし、5年目を迎えたころから焦りのようなものを感じはじめたんです。決められたカリキュラムがあるので、教師の仕事はどうしてもルーティーンワークになりがち。教師として伝え方の質は向上しますが、料理の実力はどうなんだろう、と。30代でシェフになることが目標でしたから、そろそろプロの現場に出ようと思ったんです」。

 

 

辻調理師専門学校を退職する決意をした薬師神氏は、それを迷わずSNSで発信した。その行動が新たな出会いを生んだ。薬師神氏の書き込みを見た須賀洋介氏から「新しい店を一緒につくりませんか」とのメッセージが送られてきたのだという。

 

「須賀との面識はありませんでした。でも、ゼロから一緒に店をつくろうという言葉に興味を抱き、誘いに乗ることにしました」。

 

こうして薬師神氏は「SUGALABO」のコンセプトづくりから携わり、オープン後にはシェフに就任した。会員制で食通が集う有名店だけに、忙しい毎日を送っている。それでも、料理コンペティションに出場し続ける薬師神氏は、その理由をこう説明する。

 

「僕と同世代あるいはそれより若い世代は、料理に対する考え方やモチベーションの維持で悩む人がとても多いと思います。そんな人たちに僕から言えることが2つあります。まずはRED U-35に出場しようと決意すること。そしてそれを周りの先輩、知人に決意表明すること。周囲の期待が支えにもなります。それにRED U-35では、さまざまな料理人との出会いもある。そのつながりが刺激となって、大会後のさらなるモチベーションにもつながるんです。僕はこれまで、自分の現状や興味があることについて周囲に発信してきました。ときには、助け舟を出してくれる人もいます。だから、率直な気持ちを隠さずに表明する。これが一番大事なことかなと思います」。

 

 

大会を経た薬師神氏は今、さらなる未来を見据えている。

 

「僕は教師出身という異色のキャリアをポジティブにとらえています。人に伝えることを生業としてきた僕だからこそ実現できる、新しい料理人像を模索していきたいんです。そのために、食にまつわるプロダクトデザインや、生産者の思いを伝える商品企画などに携わり経験を積み、再びキッチンに戻って、新しい食文化をデザインし“伝える”仕事をしていきたいと思っています」。

 

自身の未来図のイメージを描き、それを表明することで照らし出される新たな道を、薬師神氏はこれからも走り続ける。

 

*Author|RED U-35編集部(MOJI COMPANY)

プロフィール

薬師神 陸(SUGALABO シェフ)

1988年、愛媛県生まれ。辻調理師専門学校卒業後、教員として辻調グループに入職。須賀洋介氏の誘いにより、2015年4月の「SUGALABO」(東京)オープンより現職。

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