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君島佐和子|オリジナルの思考ができる料理人の登場に期待

君島佐和子(フードジャーナリスト)2022審査員Interview

INTERVIEW 2022.06.02

長年にわたり緻密な取材で料理人と読者を繋いできた君島佐和子氏が「RED U-35」の審査員に就任した。料理人がひと皿に込めた想いを正確に読み取り、的確な言葉で表現してきた君島氏の鋭い感性は、どんな料理人の原石を見つけるのか。レストランの現場を熟知するフードジャーナリストの眼差しの先にあるものを聞いた。

——「RED U-35」の審査員として今どんなことを考えていますか?

四半世紀にわたり料理の取材をしてきた私のなかには、「料理の時代感覚」のようなものがあります。無意識的に「この人は今の時代の料理人だ」と捉える感覚です。ただ、「RED U-35」の審査員を引き受けてから、そのキーワードのひとつである「これからの料理人」という言葉がずっと頭の中を駆け巡っています。それについて考え、言語化しようとすると、何をどう語ればいいのか、悩んでしまうのです。

ただ、ひとつ言えることがあるとすれば、これからの料理人の表現の場は、レストランだけではないということ。個人のお宅やイベント会場など、場所を選ばず腕をふるう料理人が増えていますから。

——「RED U-35」がスタートして10年が経とうとしています。料理界におけるこの10年の変化をどう考えていらっしゃいますか?

料理人の活躍の場が広がったとはいえ、厨房の外に出ることの少ない従来型の料理人のほうが、依然として多いとは思います。ただ、多彩な場で活躍する料理人が目立つようになったのが大きな変化。今はネットのおかげで、通常営業以外の活動が一般の人の目にも触れる機会が増えたので、SNSの活用スタイルひとつとっても料理人の意識の変化を感じます。

もうひとつは「サステナブル」というワード。昨今、取材現場でその言葉を聞かない日はないほどです。同時に作り手と食べる側との意識のギャップが広がっているようにも感じます。レストランに足を運ぶゲスト側にサステナブルの意識が根付いていないという点に、大きな問題がある気がしています。

※君島氏が最近記憶に残った写真/調布「maruta」での取材中に撮ったもの。「maruta」では庭の草花や果実を乾燥させてお茶に。野草を摘みに、近隣の川べりにも行くそうです。

——料理人が社会とどう関わっていくべきか、という視点がさらに重要になりますね。

そのとおりです。料理人のあり方が多様化しているので、端的に表現することはとても難しいのですが、彼らが通常の仕事の範囲を超え、どれだけ活動の幅を広げられるかという視点は、料理人と社会の関わり方を考える上で重要です。

ただ、前述のサステナブルの話と同様に、料理人が社会的機能を拡張すべく奮闘しても、まだまだ広く一般には認識されていないという現状があります。その意味でも、「RED U-35」というコンペティションは、「これからの料理人」の指し示す方向を一般の方々に認識してもらう絶好の機会ではないでしょうか。

——料理人がこのコンペティションに挑戦する意義はどんなところにあるとお考えですか?

過去の大会でブロンズエッグ以上の評価を得た方々は、その後もさまざまなチャレンジを続けている印象があります。ですから、料理人として、自分が社会でどう位置づけられるか、同世代の料理人がどこを見ているのか、自分がどこに向かおうとしているのかを知るためにも「RED U-35」への挑戦は、とても意味があることだと思います。

——どんな料理人の登場に期待しますか?

情報過多の時代ゆえでしょうか。料理人と話をしていると、それは本当にあなたが自分で考えたことですか?と問いたくなることがあります。知らず知らずのうちに、いろいろなところで得た情報をあたかも自分の考えのように語ってしまうという経験は誰にでもあるでしょう。それは仕方のないことかもしれないけれど、だからこそ、考え抜いた末に真にオリジナルなアイデアを導き出すことができる人物なのかという点を重視したいですね。

※君島氏提供の写真/昭和19年に出版された『かてもの』という本の前書き。戦時中の食糧難への対処術として、江戸時代の野草の食べ方の指南書を現代語訳したもの。これからの時代、野草はもっと身近な食材と捉える必要があると考えています。

*text by Moji Company

プロフィール

君島佐和子

フードジャーナリスト
『料理王国』編集長を務めた後、2005年に料理通信社を立ち上げ、2006年『料理通信』を創刊。編集長を経て編集主幹を務めた(2020年末で休刊)。辻静雄食文化賞専門技術者賞選考委員。立命館大学食マネジメント学部で「食とジャーナリズム」の講義を担当。

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