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特別対談 日本を味わう美味なる旅

高井 湧斗(イル テアトリーノ ダ サローネ)×岡﨑 正明(株式会社ジェーシービー)

INTERVIEW 2022.10.25

RED U-35 2022 特別対談「日本を味わう美味なる旅」
・高井 湧斗(イル テアトリーノ ダ サローネ スーシェフ)
・岡﨑 正明(株式会社ジェーシービー 取締役兼常務執行役員 ブランド事業統括部門長)

世界中に多くの会員をもつ日本生まれの国際カードブランドとして、1961年の設立以来60年以上にわたり、あらゆるシーンをより便利に、快適にしてきた「JCB」。そのブランド事業を統括する岡﨑正明氏の、穏やかな言葉の端々から滲み出る熱い想いに応えたのは、「RED U-35 2021 ONLINE」にてブロンズエッグを獲得した若き料理人、高井湧斗氏。親子ほどにも歳の離れた2人が語ったのは、日本を活性化する旅と食への想いだった。


日本を元気にする若き料理人たちの躍動

岡﨑 以前から協賛しておりました「RED U-35」ですが、コロナ禍の影響により2020年に不開催となりました。大変な思いをされているはずの食業界全体を盛り上げるためにも、この大会を復活させたいという、ぐるなび社の杉原社長の熱意に強く共感し、昨年の「RED U-35 2021 ONLINE」より共催という立場で同大会をサポートしております。そもそも1961年の設立以来、トラベル&エンターテインメントを軸に新たなニーズを生み出し、日本発の国際カードブランドとして成長してきた当社にとって、飲食業界は大切なパートナーであり、お客さまでもあります。日本の未来を担う若き才能をサポートできる「RED U-35」は、そういう意味でも我々にとって貴重な機会。高井さんは「RED U-35 2021 ONLINE」にてブロンズエッグを獲得されました。料理人コンペティションへのチャレンジは初めてだったとか?

高井 はい、何もかもが初めてでした。現時点での実力を知るべく挑み、結果的にブロンズエッグを獲得することができたこの大会における最大の収穫は、目の前にある壁の高さを知れたこと。技術、表現、センスなどすべての点でハイレベルな料理人の存在も大きな刺激になりました。

岡﨑 ブロンズエッグを手にして変わった点は?

高井 これだけ注目される大会で、ある程度の結果を残せたことについては、大きな自信にもなりました。また、「RED U-35に出てたね」と、お客さまから直接お声がけいただくことが多々ありましたので、改めてその影響力の大きさを感じているところです。

岡﨑 昨年に引き続き、2022年大会も参加されているんですか?

高井 今の実力のまま、再び挑んでもその先に進める自信がまだありませんでしたので、今年は不参加を決めました。その代わり、昨年大会の経験を糧に、夢の実現に向けて、視野を広げるべく、さまざまなことにチャレンジしており、そのひとつがソムリエ試験です。ブドウという同じ果実を原料にしているにもかかわらず、生産者によってまったく異なるワインに仕上がる奥深さに、改めて魅せられています。

岡﨑 高井さんのように、夢に向かって邁進する料理人の方々の並々ならぬ熱意は、個人的にも大きな刺激になっています。彼らのような探究心をもって目の前のことに取り組めているか-そんな自問をすることも。日本の食の未来を担うであろう優れた料理人を、この大会を通して応援することが、日本全体の活性化につながるはずだと確信しています。

夢は故郷の魅力をひと皿に

岡﨑 ちなみに、先ほどおっしゃっていた夢の具体的な中身を教えていただけますか?

高井 はい。それは故郷を通して日本の魅力を世界にアピールすることです。茨城県常陸大宮市にある実家は曽祖父の代からの農家。もともとはゆず農家でしたが、今では野菜栽培、狩猟に加え、ニホンミツバチの養蜂など、いろんなことに挑戦しています。私も休みのたびに帰省し手伝いながら、貴重な体験を積んでいるところ。また、近隣には陶芸など伝統工芸を生業としている親戚もいますので、そうした優れた伝統文化や、独自の食材を育む豊かな自然、そして隣に畑があり、裏山には山菜があるという生産と消費の場が密接する環境の素晴らしさを、ひと皿に表現すること。それが私の夢です。

岡﨑 前回大会「RED U-35 2021 ONLINE」のグランプリである堀内浩平さんは現在、故郷である山梨で自店を開業準備中とのことですが、彼も一貫して地元の食材にこだわっておられましたね。

高井 故郷が誇る自慢の食材で、大切な人をもてなしたいという気持ちは、私にもよくわかります。

岡﨑 高井さんも将来的には故郷でレストランを開くおつもりですか?

高井 はい。暮らしていたのは幼少期だけですが、その後も夏休みやゴールデンウィークなど、長期休暇のたびに訪れ、今でも頻繁に足を運ぶ故郷は最も愛着のある、自分が自分らしくいられる土地です。どこで収穫されたものなのか、誰がどのような想いで栽培したものなのかなど、食材一つひとつに込められた豊かなストーリーを熟知する者だからこそ生み出せる、特別なひと皿があるはずだと考えています。

岡﨑 そうした地方独自の魅力は、インバウンド需要の回復においても重要な鍵を握るはず。というのも、東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪を周遊する、いわゆるゴールデンルートと呼ばれるものが外国人観光客の定番でしたが、とくに訪日リピーターに顕著であるように、彼らの興味はより一層地方に向きつつあります。日本発のカードブランドとして、そういった方々にさらに喜んでいただけるような機会を、今後どのような形で提案できるかを思案しているところです。

高井 SNSをうまく活用したとしても、個人での発信力にはやはり限界があります。その点、JCBさんのようにグローバルに事業展開されている企業のサポートをいただければ、旅行者が欲する最適の情報を届けていただけるのではないでしょうか?

岡﨑 もちろん、高井さんが将来実現させようとしているような、土地の魅力を表現する地方レストランも、今後ますます重要コンテンツのひとつになるでしょう。日本に強い興味を抱き、いつか訪れてみたいという方々が、相変わらず本当に多いんですよ。海外を訪れるたびにその想いを強くしています。


写真には映らない感動を求めて

岡﨑 「RED U-35 2022」のテーマは「旅」。料理人のみなさんがどのような表現を見せてくれるのか、旅好きの私にとっても今から楽しみです。高井さんにとって旅とはどんなものですか?

高井 私が旅に出かけるのは、未知なる食材や郷土料理の背後にある歴史、文化、風土を肌で感じるため。その感動を糧に料理を構築することが多いので、料理人として旅は欠くことのできない重要な要素のひとつです。もともと旅好きでしたので、学生時代には未知なる風景を求め、本当にいろんなところに出かけました。当時の実家である神奈川から岩手まで車での日帰り旅行を強行したことも……。

岡﨑 それは無謀ですね(笑)。確かに、現地を訪れて初めて理解できるものは多々あります。国内外さまざまな場所に赴き、その土地ならではの魅力に触れてきました。先日は沖縄にて、かつての琉球王朝を思わせる空間で、沖縄の伝統的な郷土料理をいただいたばかり。10品以上あった料理はいずれも塩味がしっかりときいており、やはりこうした高温多湿の気候風土も関係しているのだろうか、など、現地で体感することで、文化的な背景をより深く理解できるケースもありますよね。

高井 その土地に生まれ育った方々と、その風景によって醸成される雰囲気、あるいはそこで暮らす人びととの交流から伝わる生活感といったものは、現地に訪れてはじめて体感できるものです。

岡﨑 出張で訪れた地方の取引先の方には、土地の味覚を堪能させてくれる自慢のお店にご案内いただくことが多く、なぜそこにお連れいただいたのか、と考えるだけでも興味深いものがあります。おそらく、その料理には、相手先と我々との関係性や、その方のおもてなしの心、あるいは郷土への愛着といったものが、込められているのでしょう。そういった食を媒介にしたコミュニケーションも、旅の醍醐味のひとつですね。


大切なのは足元から見つめなおすこと

高井 なるほど、食と旅は切っても切れない関係にありますね。「RED U-35 2022」の審査員である谷口英司氏のオーベルジュ「Cuisine régionale L’évo」のように、どんなに山奥にあっても、そこでしか味わえない特別な料理のためなら、移動の距離や時間を厭わない人が増えているように感じています。

岡﨑 岐阜にある郷土料理店で食事をするためだけに都内から車を5時間走らせ、日帰り旅行を楽しんできた、という知人の話を思い出しました。新たな趣味として昨年オートバイの中型免許を取得したこともあり、つい見てしまうツーリング関連の動画には、地方の料理店を目的に仲間とツーリングに出かけ、食事をして帰ってくる、ただそれだけを映したものもあります。バイクに乗る楽しさや道中の風光明媚な景色を含め、移動自体もエンターテインメントになり得ますね。

高井 せっかく訪れたのであれば、食事のみならず、その周辺の環境も含めじっくりと味わいたいもの。日本には、自分の知らない風景がまだまだ山のようにありますから。海外の方に、その魅力を自分の言葉で伝えるためにも、今一度自分の足元から見つめ直したい。旅をするたびにそんなことを感じます。

岡﨑 まさに、灯台下暗し。私は岐阜市の出身ですが、長良川の鵜飼の観覧船に乗ったのは、妻の家族を招待した際の1度だけ。地元の人はあまり、乗りませんよ(笑)。地元にいては気がつかないこともありますから、視野を広げつつ、足元を見つめなおす。まずはそこからですね。

株式会社ジェーシービー 取締役兼常務執行役員 ブランド事業統括部門長
岡﨑 正明
1989年、株式会社ジェーシービーに入社。取締役兼上級執行役員兼加盟店事業統括部門長を経て、2020年4月より現職。国内外のJCBブランド運営事業(インフラ基盤整備、ブランド会員拡販、ブランドマーケティング統括 等)を統括している。
https://www.global.jcb/ja/

イル テアトリーノ ダ サローネ
東京都港区南青山7丁目11−5 HOUSE7115 B1F
無休
http://www.ilteatrino.jp/
Instagram:@ilteatrinodasalone

※本記事は、新型コロナウイルス感染拡大防止の対策を講じた上で取材を行いました。撮影時のみマスクを外して撮影を実施しています。

■ RED U-35 2022 特別対談「日本を味わう美味なる旅」

プロフィール

高井 湧斗(イルテアトリーノ ダ サローネ / スーシェフ)

辻調理師専門学校(大阪)卒業後、南麻布casavinitaliaで経験を積み、その後イルテアトリーノ ダ サローネへ(現職)。
現在スーシェフを務める。
受賞歴:RED U-35 2021 BRONZE EGG

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