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「ポップ・アップ・レストラン」旋風

中村孝則 (コラムニスト)

COLUMN 2014.07.09

近ごろ期間限定のお店を指して、「ポップ・アップ・レストラン」という言葉が使われはじめました。突然現れて、風のように去っていく。この言葉のニュアンスには、そんなイベント的な勢いも含まれていると思います。そして、ガストロノミー最前線では、世界規模のポップ・アップ・レストランが美食のトレンドの一つになりつつあります。さて、一口にポップ・アップと言っても、様々なパターンを見いだせます。

 

◯シェフが店や土地を移動して料理をつくる。
◯レストランそのものが一時移転する。
◯シェフ同士やレストラン同士が協同して新しいダイニングをつくる。
◯異業種との連携で新体験をつくる。

 

と形態はさまざま。どんなものが注目されているか、最近の具体例をみてみましょう。

 

 

シャンパンのモエ・エ・シャンドンの本社では、2014年6月9日から7月9日までの期間限定で「Le&(ル・アンド)」というタイトルの体感型レストランがオープンしています。シャンパーニュ地方のエペルネにある、同社の由緒ある迎賓館がこの「Le&」のために大改装が施されました。驚くのは、この試みが世界的なスターたちのクリエーションの融合で結実していることです。オープンに先立って開催されたレセプションでは、現在モエ・エ・シャンドンのブランド・アンバサダーも務める世界的なテニス選手ロジャー・フェデラー氏、ミシュランで3年連続3つ星を獲得したシェフ、ヤニック・アレノ氏、そしてモエ・エ・シャンドン醸造最高責任者、ブノワ・ゴエズ氏がそろい、華やかな雰囲気で会場を盛り上げてくれました。館内は異なる4つのシーンで構成され、ゲストはそれぞれの仕掛けを通じて新たな五感に目覚める趣向。例えば、「7 Salt Bar」では塩を使わずに塩味を表現したアペリティフが供されたり、「Blind Shot Room」では、暗闇での味覚の鋭敏さを高めるユニークな試みで私たちを刺激します。それぞれのシーンにモエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ コレクションの異なったヴィンテージを合わせるのも耽美な体験です。僕も現地で体験しましたが「Le&」は、単なる美食レストランではなく、この華麗な3人のスターの供宴による、まったく新しいダイニング・エクスペリエンスでした。

 

 

ダイニング・エクスペリエンスといえば、日本でも2012年から始まった「DINING OUT(ダイニングアウト)」という、期間限定のプレミアムな野外レストランが話題です。

実は、さる5月31日、6月1日に大分の竹田で開催された第5回「DINING OUT TAKETA with LEXUS」のホストとして参加しました。今回のシェフは「銀座エスキス」のリオネル・べカ氏。2日間で80人のお客様をお迎えしました。リオネル氏とともに、何度も竹田に通い、地元の食材や食文化を見て回りました。地元をリスペクトした料理は、竹田の魅力を再発見するとともに、リオネル氏自身も進化の機会になったと言います。チケットは発売後数日で完売するほどで、イベント自体も盛況でした。

 

 

完売必至で注目といえば、世界ベストレストラン50の2014年のランキングで見事に一位に輝いたデンマークの「ノーマ(NOMA)」が、期間限定で東京に移転するポップ・アップ・レストランでしょうか。2015年1月9日~1月31日まで「マンダリン オリエンタル東京」37階が「ノーマ」になります。

 

聞くところによると、デンマークの店を閉めてシェフのレネ・レゼピ氏を含むスタッフ全員でやってくるそうです。これも噂レベルですが、将来的には日本での本格展開も視野にいれているそうです。
また、英国・ロンドン郊外の「ザ・ファット・ダック(THE FAT DUCK)」は、2015年2月から、オーストラリア・メルボルンのホテルに移転するそうです。英テレグラフ紙によると、シェフのヘストン・ブルメンタール氏が、バークシャーのレストランが改装する6カ月間の期間限定で、メルボルンの5つ星ホテル「クラウン・タワーズ・ホテル」内に移転すると発表しました。この期間中はすべてのスタッフを引き連れて移転し、改装後は英国に戻るそうです。

 

 

「ノーマ」の東京・ポップ・アップ・レストランについて、「様々な課題を抱え不安はあるけれど、ともかく日本でチャレンジしたかった」と言うシェフのレネ・レゼピ氏。ほんどの食材は、あえて日本のものを使うそうです。「日本は食材の豊かさや、食文化を支える悠久の歴史において、抜きん出ています。それに向き合って新たなフェイズに行きたいのです」。
レネ氏がいうように、いま世界の美食の最先端で繰り広げられるポップ・アップ・レストランの醍醐味とは、単なるコラボレーションでも移動型レストランでもなく、シェフや店が移動し異なる土地や食材や人とが向き合うことで、新たな切り口や価値を再構築することでしょう。それは、お客自身やシェフ自身においても同じこと。料理やクリエーションを通して、内面における未知なる五感の気づきの、絶好の機会でもあるからです。

プロフィール

中村孝則 (コラムニスト)

ファッションやカルチャーやグルメ、旅やホテルなどラグジュアリー・ライフをテーマに、雑誌や新聞、TVにて活躍中。2007年にシャンパーニュ騎士団のシュバリエ(騎士爵位)を受勲。2010年からは『Hr.StyleNorway』として、ノルウェーの親善大使の役割も担う。現在、世界ベストレストラン50の日本評議員代表。剣道錬士7段。大日本茶道学会茶道教授。近著に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社刊)がある。

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