RED U-35RED U-35

メニュー

「アジアベストレストラン50」のルール改正で、虎視眈々と狙うアジアの美食新興国

中村孝則 (コラムニスト)

COLUMN 2014.10.30

過去2回のアジア50のランキングは、毎年4月に発表されている世界50の投票の中から、アジア地域のレストランの票を抽出して順位がつけられていた。この世界50の投票の仕組みについては、オフィシャルサイトのマニフェストでも説明されているので、詳しくはそちらをご覧頂きたい。つまり、世界の900あまりの食の専門家たちの投票によって、世界50と同時にアジア50の順位も決められていたのだ。

 

ところが、2015年のランキングからは、“世界”とは別に、アジアに住む審査員を新たに任命して順位を決めることになった。このルール変更によって、ランキングにどのような影響が出るかは未知数だが、主催者側の意図の中には「アジアに埋もれている魅力ある未知なるレストランの発掘」という狙いもあるだろう。それは、このアワードそのものの理念とも合致するからだ。

 

その文脈にそって想像力を膨らませば、来年以降に発表される2015年以降のランキングでは、初登場となる国が出る可能性は充分にある。現在のランキングでは日本のほか、中国やインド、シンガポールや台湾、韓国、スリランカなど、ランクインしている国は限られているが、アジア50の対象となる国と地域は25以上にも及ぶのだ。では、そのポテンシャルをもつ国はどこだろうか?

 

 

僕が個人的に注目している国の筆頭のひとつは、マレーシアである。ご存知の通り、他民族国家のマレーシアは、料理のバリエーションや食材も豊富であり、経済的な発展も著しい。案の定というべきか、マレーシアは現在、国を挙げて“食”をテーマに掲げ、グローバルなプロモーションを展開しはじめた。日本でも先ごろ、料理研究家のコウケンテツさんが「マレーシア“食”の親善大使」に任命され、この10月からホテルやレストランと提携したキャンペーンを展開している。9月25日には、マレーシア政府観光局の主催でプレスイベントが開催され、そのコウケンテツさんと僕が、マレーシアの食をテーマにトークショー&料理デモンストレーションを行なったばかり。メディアの関心度も高かったというのが実感だ。

 

ファインダイニングという側面においては、発展著しいクアラルンプールのホテルのダイニングには注目しておきたい。僕も先ごろ訪れたザ・マジェスティック・クアラルンプールは2012年に大リニューアルが施され、トータルとしての完成度が高いホテルだ。また、2015年にはセントレジス・クアラルンプールがオープン予定で、メインダイニングには、3つ星の超有名店の名前も浮上している。

 

ところで、多くの専門家たちもノーマークだろうが、僕が密かに注目している国はミャンマーだ。この国は日本の1.6倍の国土を持ち、他民族という点ではマレーシア以上。料理も食材も百花繚乱。ヤンゴンには、レベルの高いレストランも多数ある。視察をかねてこの9月にヤンゴンを食べ歩いたなかから、注目店を2つ紹介しておこう。

 

 

ひとつは、恐らくミャンマーのベストレストランといってもいいだろう、ラ・プラントゥール(LE PLANTEUR)だ。同店はフレンチ・インドネシア料理を提供するガストロノミー・レストランで、フランス系スイス人シェフのボリス・グランジェさんが1998年に立ち上げたレストランである。フレンチを軸にしながらも、地元ミャンマーの食材や料理法を取り入れた、ユニークな料理を提供してくれる。コロニアル風の店舗はガーデンも広く雰囲気もいい。サービスの質も高いうえ、予約すればヴィンテージカーでの送迎も無料で行なってくれる。初めて訪れる人は、ここがミャンマーかと驚かれるだろう。

 

 

僕のもう一つのおすすめは、ガバナースレジデンス(GOVERNOR’S RESIDENCE)。
ここは、僕のヤンゴンステイの常宿であり、極めて居心地のいいホテルである。英国に本部を置くベルモンド(旧 オリエント エクスプレス社)が経営する同ホテルのメインダイニング「マンダレー・レストラン」の本格的なマンダレー料理は抜群だ。ミャンマー中央部に位置する同国第2の都市、マンダレーは、料理の美味しさでも知られている。このレストランでは、そのオリジナル・レシピが味わえると地元でも評判。豊富な食材や多彩なレシピには舌を巻く筈だ。

 

 

ミャンマーでの驚きは料理ばかりではない。ミャンマーは、民主化にともない経済だけでなく観光にも力を入れ始めている。今回驚いたのは、以前は使えなかったクレジットカードが使えるようになったことと、インターネットが解禁になっていたことだ。このホテルは勿論だが、なんと街中にある寺院、シェーダゴン・シェーダゴンパゴダの境内でも無料Wi-Fiが使えたのである。
情報開示にともない、まだ知られていないミャンマーのレストランが、アジア50にランクインする日も遠くないと想像が広がるのであった。

プロフィール

中村孝則 (コラムニスト)

ファッションやカルチャーやグルメ、旅やホテルなどラグジュアリー・ライフをテーマに、雑誌や新聞、TVにて活躍中。2007年にシャンパーニュ騎士団のシュバリエ(騎士爵位)を受勲。2010年からは『Hr.StyleNorway』として、ノルウェーの親善大使の役割も担う。現在、世界ベストレストラン50の日本評議員代表。剣道錬士7段。大日本茶道学会茶道教授。近著に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社刊)がある。

SHARE

TEAM OF RED PROJECT

RED U-35

ORGANIZERS主催
WE SUPPORT