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水を巡る最新トレンドと今年のエッカート賞の速報

中村孝則 (コラムニスト)

COLUMN 2014.11.17

イタリアを代表するナチュラル・ミネラル・ウオーターとして知られる、サンペレグリノとアクアパンナの水源を訪ねてきました。ナチュラル・ミネラル・ウオーターとは、特徴的地質条件に由来する水のこと。つまり、その土地の天然の水であることが大前提になります。特に、ECでは厳しい条件が科せられていて、衛生上も含めて、何かを加えたり引いたりできないように、徹底的な管理がなされているのです。自然の多様性こそが魅力の文字通り“ナチュラル”な水だからこそ、ワインのテロワールと同様、銘柄ごとに異なる個性ある味わいが愉しめるのです。

 

 

両者の違いは、発泡水とスティル(無発砲)の区分けだけではありません。産地やその環境も違えば、その味わいも異なります。サンペレグリノの水源は、イタリアンアルプスの麓、ベルガモ県の標高1300mのブレンバーナ渓谷の深山にあります。このあたりは、約2億年前の三畳紀にできた緻密なドロマイト地層が広がり、雨はその地層によって約30年をかけて濾過されます。サンペレグリノが豊富なミネラルを含有しているのはそのためなのです。実際に現地で飲んだ湧き立ての水の味が、考えてみれば当然のことですが、馴染みのある“あの味”だったことに、あらためて感動を覚えました。

 

 

一方、アクアパンナの水源は、トスカーナ州スカルペリア近郊のアペニン山脈地帯にあります。その風景は、長野県にある菅平高原の雰囲気に近いかもしれません。この水源一体の720haは完全保護されており、いわば“手つかずの自然状態”です。第四紀層の地層は風化沈泥や粘土質で構成され、地下深くの水は450年前にトスカーナ大公に発見されてからも、守り続けられてきたものです。こちらの水は、サンペレグリノとは対照的に、軟水でまろやか。非常にデリケートで、“甘露”とはまさにこの水のことかと思わせるほどでした。ガストロノミー・ウオーターとしてレストランでもお馴染みのこの2つの水のように、客側もサービス側も、それぞれの個性を理解したうえで、料理やワインとペアリングするのが、ガストロノミーにおける今後の新たな愉しみ方になりつつあるようです。

 

 

そんな流行を象徴するようなラボ・イベントが、先ごろ銀座のエスキスで開催されました。テーマは“水”。スペシャル・パネリストに、2007年世界最優秀ソムリエのアンドレアス・ラーソンさんを迎え、エスキスの支配人兼シェフ・ソムリエの若林英司さんとともに、“水”を軸に、ワインと料理のマリアージュの妙を体感しました。料理とワインの相性を模索する、いわゆる “マリアージュ”に、に水が加わるのです。アンドレアスさんの手ほどきによって、まずはワインと水の相性から。1種類のワインに対して、サンペレグリノとアクアパンナと水道水の3種類の水で飲み比べをしてみると、ワインの味すら損ねる水道水は論外ですが、ミネラル・ウオーターの銘柄の違いによって、相性の良し悪しがあるのは発見でした。今回の体験でいえば、シャンパンにスティルのアクアパンナ、赤ワインのジュヴレ・シャンベルタンにはサンペレグリノがマッチしていました。ちなみに、若林さんによれば、この赤ワインに合わせたのが蝦夷鹿の料理だったので、発泡のサンペレグリノの方が、料理との相性もいいとのことでした。水とワインと料理。これを三角関係のもつれにするか、味覚の“三銃士”にするか。それは、料理をより一層美味しくいただく上で、そして食事を幸せなものにする上でも大きな違いになるでしょう。少なくとも、今後のガストロノミーはこの“三角形”で構築される時代になるはずです。

 

 

さて、最後はドイツからの嬉しいニュースで締めくくりましょう。去る10月22日、ドイツ・ミュンヘン(Munich)のBMWミュージアムで、国際的なアワード、「エッカート・ヴィツヒマン賞」(INTERNATIONAL ECKART WITZIGMANN PRIZE)の2014年度の受賞式とガラディナーが行なわれ、日本のレストラン「カンテサンス」(東京)の岸田周三シェフが見事に受賞しました。食文化の功労者に贈られる国際賞として、2004年に設立されたこの賞は、3年前からはBMWがスポンサーとなり、より盛大なものになっています。過去にはチャールズ皇太子、アラン・フェドリア、ジョエル・ロブションなどが受賞するなど、欧米では権威ある賞として知られています。とくに10周年を迎えた今回は、世界中から多くのメディアが駆けつけていました。岸田シェフの受賞は、フランス料理を日本で進化させ続ける、そのイノベイティブな活動が評価されてのこと。岸田シェフ、あらためておめでとうございます。

 

プロフィール

中村孝則 (コラムニスト)

ファッションやグルメ、旅やホテルなど、ラグジュアリー・ライフをテーマに、新聞・雑誌、TVなどで幅広く活躍するコラムニストの中村孝則氏がレポートする世界の美食最前線。
第5回目のテーマは「水」。普段何気なく飲んでいるテーブルウォーターにも“マリアージュ”の愉しみがあった?! ガストロノミーの新潮流をレポート。そして最後に、ドイツから届いた嬉しいニュースをご紹介。

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