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中村孝則「これからの料理人」

RED U-35 2022 応募者応援企画 Supporters column 第2弾|中村孝則

COLUMN 2022.05.16

間も無くRED U-35 2022大会エントリーが始まります。募集するのは「新時代を切り拓く“食のクリエイター”」。
単に調理技術だけを評価するのではない「新しい存在意義を感じさせる人物」「食を通じて社会課題を解決に導くなどこれからを切り開く人物」の発掘を目指します。

そこで、今回は日々食の現場を見つめてご活躍されている9名のジャーナリスト、ライターの方々に“大会の応援団”として「これからの料理人」をテーマにしたコラムをそれぞれの視点で執筆していただきました。大会に応募予定の方も、そうでない方もぜひご覧ください。
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コラムニスト、「世界のベストレストラン50」日本評議委員長
中村孝則

まず前提として、これからの未来で料理に関わる人たちは、大きなチャンスが待っていると感じています。この流行病のパンデミックで、料理人を含め食に関わるすべての業界が何らかの苦境に立たされましたが、これは食べる側の客においても同じことです。外食が思うように出来ない事態は、私たちの日常生活やメンタルにも大きな影響を及ぼしています。そのパンデミックの収束を見据えたいま、外食への内なる渇望は、ふつふつと出口を求めて静かに沸いています。旅行業界では、そうした潜在的な欲求を「リベンジ・トラベル」という言葉で、ビジネス・チャンスと捉え動きはじめています。旅は国内外含め、パンデミック以前よりもましてブームが到来するのではないでしょうか。私はさらに限定して「リベンジ・ガストロノミー」の時代が来ると予想しています。これは私の造語ですが、いま人々が旅に出る動機の上位は、食ならびに食文化の体験です。これは近年、世界各国の旅のアンケートの結果が物語ります。特に日本に来るゲストにおいてはその傾向がより高く、日本の酒や酒文化を加えると、圧倒的なモチベーションになっています。私はこの近未来、日本で食に関わる人たちには、大きなチャンスがあると期待を寄せています。

しかし、パンデミック以前とは求められる価値観に変化があるとも感じています。例えばレストランに限定して考えてみましょう。結論から先に申し上げると、これからのレストランに求められる価値観は、「ジョイフル」「シェア」「チャレンジ」の3つのキーワードが重要だと思います。「歓び」「共有」「挑戦」と訳してもいいのですが、あえて片仮名で示したのは、理由があります。私がチェアマンをしている「世界のベストレストラン50」の2022年度のアワードが、2021年の11月にベルギーのアントワープで開催されましたが、その会場で食の専門家たちの多くが、これから評価するレストランの要素として、具体的にこのキーワードを口にしていたからです。レストランを評価するうえで、美味しさや調理技術の高さ、食の持続性について考えていることは大前提としつつ、さらに期待する要素があるということです。長い期間、緊張を強いられてきた人々は、ダイニング・シーンに楽しさや人生の歓びを以前に増して求めています。仲間や家族と分かち合う場としてレストランを再認識した人もいるでしょう。このアワードで1位になった「noma」のシェフ、レネ・レゼピは、自らのレストランの受賞の理由を「挑戦し続ける結果が評価されたと思う」と語っていました。いずれにせよ、この三つのキーワードの中から、多くの解が導かれるのではないかと思います。

個人的に、これからの料理人が意識するべきキーワードを加えるとすれば「間合いを詰める」ことではないかと考えています。“間合い”とは武道用語で、相手に対しての距離感のことを言いますが、料理に携わる人にとっての間合いとは何かといえば、料理人と客、料理人と生産者、料理人とスタッフ、あるいは客同士が対象になりましょうか。これらの両者の距離感を物理的にも感覚的にも、今まで以上に少し縮めることを意識する必要があると思います。誤解を承知であえて申し上げれば、コニュニケーションも含め、より“密”にするということです。

例えば、私はこの先「ターブル・ドット」のレストランがトレンドの一つになると睨んでいます。「ターブル・ドット」の語源は、フランス語の“賄い食堂”の意味で、主人が大きなテーブルで仲間やゲストに料理を振る舞うスタイルに由来します。今後は、一つのテーブルを囲んでシェフ自ら運んだ大皿で客同士がシェアするようなファイン・ダイニングのレストランが人気になるかもしれません。まさしく、すべてにおいて距離感が近いレストランです。私が言いたいのは、それを目指せということでなく、私たち食に関わる人たちが、“密”回避で引き裂かれ失った大切なものを、今一度見つめ直すところに、あらたな価値が生まれる可能性の余白がある、ということです。

いずれにせよ、これからの料理人やレストランに求められることは、視野を広く持つこと。具体的には、皿の中の完成度を深めることはもちろん、ファッションやアートや建築、チームワークを含めたエンターテイメント性、あるいは地域の食文化の表現など、あらゆる多様性を料理の範疇として共有してみる。同時に間合いを詰めること。レストランが、今まで以上に、ゲストの歓びや幸せや感動をシェアできる場所と認識し、それぞれの距離感を縮めてみる。

そのためには自分が目指すべき料理の源泉をいま一度とことん掘り下げ、それを表現するためにあらゆる可能性を探ってみてはいかがでしょうか。その上で明確にフラッグを掲げることも必要になるでしょう。そういうことに挑戦し続ける姿勢にこそ、私を含めて多くの食べ手は期待しているはずでしょうから。

[RED U-35 2022 挑戦者募集!]
・募集:新時代を切り拓く“食のクリエイター”を目指す「35歳以下の料理人」
・応募期間:6月1日(水)14:00〜6月22日(水)18:00(日本時間)
・応募テーマ:「旅」
→詳細は「RED U-35 2022」大会概要特設ページをご覧ください。
 https://www.redu35.jp/competition/
■ ORGANIZERS 主催:RED U-35実行委員会 株式会社ぐるなび
■ CO-ORGANIZER 共催:株式会社ジェーシービー
■ SUPPORTER:ヤマサ醤油株式会社

プロフィール

中村孝則(なかむらたかのり)

1964年神奈川県葉山町生まれ。ファッションや嗜好品、食文化などをテーマに寄稿。先頃、JR 九州が運行する「ななつ星in九州」の車内誌『SEVEN STARS PRESS』編集長に就任。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)共著に『ザ・シガーライフ』(ヒロミエンタープライズ)がある。「世界のベストレストラン50」ならびに「アジアのベストレストラン50」日本評議委員長。ベスト・オブ・コロンビア大使。大日本茶道学会茶道教授。剣道教士七段。

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