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松浦達也「これからの料理人」

RED U-35 2022 応募者応援企画 Supporters column 第8弾|松浦達也

COLUMN 2022.05.27

間も無くRED U-35 2022大会エントリーが始まります。募集するのは「時代を切り開く食のクリエイター」。単に調理技術だけを評価するのではない「新しい存在意義を感じさせる人物」「食を通じて社会課題を解決に導くなどこれからを切り開く人物」の発掘を目指します。

そこで、今回は様々なジャンルのライター/コラムニストの方々に“大会の応援団”として「これからの料理人」をテーマにしたコラムをそれぞれの視点で執筆していただきました。大会に応募予定の方も、そうでない方もぜひご覧ください。

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フードアクティビスト
松浦達也


「昨日の成果を疑うこと、明日の自分を信じること」

料理の世界は大きく変わろうとしています。一昔前までは”ブラック”とも言える環境が当然で、ジェンダーの障壁も分厚く、高いものでした。しかしいまやすべては開かれています。

スマホで情報を獲得し、動画で技術を習得する。調理にまつわる機器やテクノロジーも爆速で進化していて、一昔前には考えられなかったショートカットによって、U-35世代の成長曲線のカーブはどこまでも垂直に近づけられます。

テクノロジーの進化(フードテック)により、世界中のどんな料理も再現できる未来はすぐそこまで来ています。皿の上にエラーが起きない世界はなんて素晴らしいのでしょう。大規模に店舗展開をしたいシェフはもちろんのこと、一部の工程を預けられるというだけでも、テクノロジーはシェフにとって強力な味方になるはずです。

一方で、知識や技術が開かれるということは、プロのシェフや飲食店だけが持っていたアドバンテージが少なくなることをも意味します。

技術を代替するアイテムや先端情報には、アマチュアでもアクセスできます。すでにフードテックは特定分野のプロアマの技術差を埋めるほど強力なツールですし、すでにプロ以上の知識を備えたアマチュア料理人もいます。使い方次第では、ある意味プロもアマも横一線という世界観もあるのです。

では、誰もが横一線となったときに、プロのシェフとアマチュアの間に一線を引くものはなんでしょうか。

明確な違いを生み出すポイントは3つ。言語化能力、タフネス、心、です。すべての職業に通底しますが、特に皿を通して、ときには直接お客様とコミュニケーションを取る飲食業にはより欠かせない素養です。

もっとも簡単に強化できるのは「言語化能力」でしょう。自己啓発書などでは「編集力」「デザイン力」「論理力」とも言われたりしますが、まずは、目の前で起きている事象やぼんやりしたイメージ含め「すべてを言葉にして思考する」ことから始まります。まずは正確に物事を理解するための言葉を自分のなかに持つこと。そして理解した事実を咀しゃくしてかみ砕き、言葉を再構築するのです。

このとき、気をつけたいのは自分に都合よく意訳しないこと。徹底的に事実を見つめて、それに即した言葉を選ぶのです。

そして次の段階では、その言葉をどう翻訳すれば相手に伝わるのかを考える。お客様、スタッフ、取引先など、違う立場の人たちに自分はどう言葉をつむぐのか考えましょう。正しいと信じることをそのまま訴えても、相手が聞いてくれるとは限りません。自分が望むアクションにつながらないときは、100%伝える側が悪いと心得て、何度でも伝え方を練り直したいところです。伝え方にベターはあっても、ベストはありません。思考して、試して、改善する、を繰り返すほどに言語化能力は向上します。

そのためにも「タフネス」は身につけておきましょう。この場合は「健康」とも言い換えられますが、心身両面の体力をつけておくに越したことはありません。身体の状態が良ければ、技術の反復練習もできますし、集中するほどに技術の定着も早くなるはずです。

”マッチョ”になる必要はありません。しなやかで健やかな心身を作りあげましょう。技術や情報の「吸収→展開→出力」を繰り返すことのできる、心身になるよう普段から備えておくのです。もちろん適度な休息と栄養も必要です。

そしてもっとも大切なのが、3番目の「心」です。おいしいものを提供するには、お客様が何を望んでいるかを汲み取るやわらかな心が必要ですし、レストランというチームを率いるにもスタッフの心情を汲み取り、必要なアクションを起こしてもらう必要があります。

さらには取引先や同業のシェフとの人間関係の構築など、心を軸にした関係性は思いのほか広く、多いのです。店を牽引するシェフは「心」について考え抜くことが必要です。

心は”姿勢”にも直結しています。食材や調理法について、常に新しい情報をインプットしつつ、自分にとって大切なものを考える。ただただ新しいものに飛びつくだけでなく、そのとき必要なものをすくい取る。思索を重ね、決断することも含めて、自分の心をどう調えるか。それによって得られるものは変わってくるはずです。

「RED U-35」のようなコンテストは、小手先の技術や情報だけでは勝ち抜くことはできません。今年の応募テーマの本質を抽出し、考え抜き、形にする。そして技術や発想などの手持ちのカードからメニューを絞り出す。アイデアが出てこないときだってあるでしょう。そんな時、課題を明らかにするための言語化能力、仕事のかたわらで試作を繰り返す心身のタフネス、そしてときには昨日の成果を疑い、明日の自分を信じて、ゼロからメニューを練り直す心のやわらかさが救いになるのです。

食べた人の心に、何かの火が灯るような一皿を楽しみにしています。

 

プロフィール

松浦達也(まつうら・たつや)

東京都武蔵野市生まれ。調理の仕組みや科学、食文化史などを踏まえ、料理誌・一般誌・新聞・書籍・Webまで幅広く執筆・編集を手がけ、テレビ等で食トレンドやニュース解説も行う。著書に『大人の肉ドリル』、『新しい卵ドリル』(以上マガジンハウス)『ハイボールとつまみ』(主婦の友社)ほか。共著に自らも審査員をつとめる、レストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)なども。現在、”焼肉”についての新刊を執筆中。

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