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小石原はるか「これからの料理人」

RED U-35 2022 応募者応援企画 Supporters column 第9弾|小石原はるか

COLUMN 2022.05.31

間も無くRED U-35 2022大会エントリーが始まります。募集するのは「時代を切り開く食のクリエイター」。
単に調理技術だけを評価するのではない「新しい存在意義を感じさせる人物」「食を通じて社会課題を解決に導くなどこれからを切り開く人物」の発掘を目指します。

そこで、今回は様々なジャンルのライター/コラムニストの方々に“大会の応援団”として「これからの料理人」をテーマにしたコラムをそれぞれの視点で執筆していただきました。大会に応募予定の方も、そうでない方もぜひご覧ください。

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フードライター
小石原はるか

 新型コロナウイルス感染拡大による2020年の開催中止、続く2021年のオンライン開催というイレギュラーな2年間を乗り越えて、今年の「RED U-35 2022」はいよいよ本来のスタイルで開催されるという。ほんとうに、喜ばしいことと思う。

 応募条件の「35歳以下の料理人」の前に書かれている2022年のキャッチフレーズは「新時代を切り拓く“食のクリエイター”を目指す」。まだまだ収束したとは言い難い未曾有の事態と対峙しつつ、自身の目標や夢、野望を見失うことなく、この大会に挑もうとしている若き皆さんには、心から敬意を評したい。

 マスクに消毒、3密回避、クラスター、ソーシャルディスタンス。そして自粛要請、まん延防止等重点措置、緊急事態宣言、etc.。この2年ですっかりおなじみになってしまった単語は、とりわけ飲食業に従事する人々にとって重くのしかかるものばかりだ。
人が楽しく集い、料理と会話とを楽しむことが眉を顰められるような社会情勢になるだなんて! 歴史の教科書で見聞きした「禁酒法」時代に近しい状況を自分たちが体験するとは! 苦しみ、傷ついた人が数多くいることは間違いないし、そのような期間が長く続いたが故に、飲食の世界の行く末に不安を抱いて去った人も少なくないと聞く。熱意を持ってこの世界に入ってきたはずの人が、志半ばで不本意な選択をせざるを得ないケースがあることは、とても切ない。

 対照的に、抗いようのないこの大きなパラダイムシフトを受けて、攻勢に転じた人もいる。店を構え、お客様を迎えてその場で料理を提供するだけが料理人の在り方ではない。テイクアウト、お取り寄せ、ケータリング、動画配信など、これまでとは違う形で「食」の喜びを提供し、自分の料理を表現しようとする料理人がほんとうに増えた。「ピンチはチャンス」とばかり、これを契機に飛躍した人が少なくないという事実は、食の世界にとって確かな光明だと思う。「RED U-35 2022」への出場を決心した人、また出場を検討している人は、おそらくそうした面々に続くことになるのだろう。

 発信や表現の仕方も変われば、食に携わる人々に求められる素養も、確実に変化してきている。「SDGs」という世界共通の重要課題に心を寄せることがスタンダードとなった今、これまで以上にサスティナブルな視点を持つことが必須となった。
環境への負荷を減らす。限りある食材を余すことなく使う。そして、そうした「食」を取り巻く世界の動向に目を配りながら、自らの料理を構築する。課題は多く、複雑に絡み合っている面もあるけれど、この大会を通じて新鮮な視点を持ち、行動するパイオニアが増えると信じたい。と同時に、食べ手もまた「食」への認識をアップデートしていかねばと思う。

 それにしても。21世紀に入って20年以上経った今なお、料理業界は縦社会の風習と男性優位の傾向が、他の業界以上に強いと言われている。前者に関しては、修業の階梯でそういう環境に身を置くことが鍛錬となる面もあると思うので必ずしも“否”ではないのだが、後者に関してはいち女性として、やはりもどかしい。今年は、狐野扶実子さんが史上初の女性審査委員長を務められるという。これまで以上に、女性のチャレンジャーが増えたなら、さらにこの大会の意義が深まるはずだ。

 若く、新鮮なビジョンを持った挑戦者の皆さんに姿に、既成概念を覆され、度肝を抜かれ、魂を揺さぶられたい。切に楽しみにしています。

プロフィール

小石原はるか(こいしはら・はるか)

1972年生まれのフードライター。エンゲル係数高めの環境で育ち、レストラン通いをこよなく愛するように。マニアックな気質と比較的丈夫な胃袋で、これまで様々な食の世界に没入してきた。著書に『レストランをめぐる冒険』(小学館)、『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)、『東京最高のレストラン』(共著・ぴあ刊)など。

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