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丸山祥広 | 自分だけの物語を紡ぐ場所を求めて

丸山祥広(瑠璃庵 Ruri-AN)2024 Finalist インタビュー

INTERVIEW 2025.03.18

多彩な才能が集う同大会において、ユニークな存在感を示した丸山祥広氏のモットーは、「RED U-35 2024」ファイナルの舞台でもアピールしていたとおり「自然との共存」である。そんな自然への畏怖の念はどのような環境で育まれたものなのだろうか。

丸山氏が生まれたのは、海と山が近くにある福岡県大牟田市。幼いころから、タケノコ掘りや自然薯掘りなどにも親しんでいたという。

「自分の背丈よりも高く伸びている稲やトウモロコシを見て、『なぜこんなに大きく育つのだろう?』と感じたことを覚えています。これが、自然の尊さを意識した最初の記憶かもしれません」

高校卒業後に、福岡の人気割烹店、居酒屋などで料理人としてのキャリアをスタートさせ、「懐食みちば」で改めて日本料理の基礎を学ぶと、その後福岡の「馳走処 手いっぽん」の久保直樹氏、「藁焼き みかん」の末安拓郎氏に師事するなど、人気店で研鑽を積み熊本の和食居酒屋「瑠璃庵 Ruri-AN」へ。同店では料理長として腕を振るい、2025年6月には同じ熊本の地にて自らの店「馳走 丸」をオープンさせる予定だ。

福岡生まれの丸山氏はなぜ、地元に近いとはいえ縁のない熊本を拠点とするのだろうか。その答えは自然との距離感にあった。

「近くには天草があり、そして阿蘇もあります。欲しいものがあったら、すぐに採りに行ける! そんな場所なら自分らしく、面白いことができるかもしれないと。今後はさらに、いろんなことに挑戦していくつもり。それができる環境ですから」

丸山氏がこだわるのは、調味料を含めほとんどの食材を熊本県産でそろえること。とにかくこの土地でしか味わえないものを、胸を張って提供するためにも、足繁く生産者のもとに通い絆を深めつつ、自らも畑を耕し、米づくりをしてきた。

「素材のすべてを熊本産にこだわることには賛否両論もあるでしょう。もちろん、天草のブリよりも北海道のブリのほうが脂は乗っています。しかし、僕が天草のブリを選ぶのは、その魅力を生かした料理を作りたいから。すべては、お越しいただくお客さま、地域の生産者、次世代の料理人のため。自分が料理人として少しでも貢献できることはないかと常に考えています」

そんな丸山氏が「RED U-35」に挑戦したのは、そうした理想や想いを共有できる仲間との繋がり求めてのことだった。

「志を同じくする料理人仲間との出会いが一番の収穫。『RED U-35』という大会にチャレンジするのは、本気で料理と向き合う料理人ばかりですから。営業中は当然お客さまファーストですが、大会中は料理に没頭できる。そんな時間もまた僕には必要だったのかもしれません」

「RED U-35 2024」最終審査のトップバッターとして登場した丸山氏は、緊迫した空気が漂うなか、熊本県の郷土料理である辛子蓮根をモチーフにした「クマモトドッグ」で、審査員たちを魅了した。

大会を終えた直後の心境を「選考を通過するたびに追い込まれていきましたが、今はとても晴れやかです」と語るとおり、店舗の通常営業と並行させながらの大会への参加は、まさに怒涛の日々だったはず。しかしそれは同時に、氏にとっては料理人である自分と向き合う貴重な時間でもあった。

「動画編集の際に改めて自分の料理を客観的に見てみると、いかに独創的な自然から想を得ているのかを実感できました。そんな過程を経るうちに自分が料理を生業とする意味や目的がさらに明確になった気がします。また、今の環境を選んだ自分は間違えていないんだという確信にも繋がりました」

そんな自分だけの物語を表現するべく丸山氏は、前述のとおり2025年6月に自らの店をオープンさせる。

「日本料理をわかりやすく、素材を引き立てながら本来の素材の“相性”と調味料のバランスを考え、料理と“同調”させることに注力していきたい。さらに、伝統野菜の栽培を手がけるなど、伝統を掘り起こし、次の世代に繋げていく取り組みも本格化させるつもり。ただし、すべては今から」

自然とともに生きる料理人らしい、土地への想いを表現したひと皿は、ここでしか味わえない料理を求めて国内外より訪れる多くの人を魅了するだろう。


【料理】 新鮮な七草(撮影時期が無病息災を願う七草だった)を生かした「七草と蕪の擂り流し」。蕪と水と塩のみの蕪本来の甘みが引き立つポタージュに、おひたしや揚げ物、醤油漬けなどにした七草のほろ苦さを合わせたもの。あられにしたお米と季節の七草で作られた七草粥には、丸山氏の「寒い季節にはほっこりと温かく、滋味深いものを味わっていただきたい」という想いが込められている。

text by Moji Company / photos by Jun Tamura(One octave)

プロフィール

丸山祥広

「瑠璃庵 Ruri-AN」シェフ
1991年、福岡県生まれ。高校卒業後、「馳走処 手いっぽん」(福岡)を皮切りに、「懐食みちば」(東京)、「藁焼みかん」(福岡)、「赤坂こみかん」(福岡)などで研鑽を積み、「瑠璃庵 Ruri-AN」(熊本)役員として活躍。2025年6月に「馳走 丸」をオープン予定。

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