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野田達也|“ガストロノミー”にとらわれない料理人を目指して

野田 達也(コレクティブ メゾン nôl シェフ)2019 Finalist インタビュー

INTERVIEW 2020.04.16

大会史上初、グランプリの該当者なし、という驚きの結果で幕を閉じたRED U-35 2019。準グランプリに輝いた野田達也氏は、2015年大会でも準グランプリを獲得した実力者であり、グランプリ候補として注目されていた料理人でもある。それゆえに優勝をつかみとることができなかった悔しさを噛みしめながら語り始めた野田氏だったが、晴れやかに自身の未来像を提示してくれた。

準グランプリとして自分の名前が呼ばれた瞬間、悔しさを隠すことなくうなだれた野田達也氏。その姿はグランプリの該当者なしというRED U-35 2019の幕切れを象徴するかのようなシーンだった。そのときの心境を、氏はこう振り返る。

「グランプリだけを目指して挑んだ大会だっただけに、あの瞬間は落胆のあまり崩れ落ちそうだったんです。しばらく経った今、冷静になって振り返ってみると、あの態度は褒められたものではなかったなと反省しています(苦笑)」

それだけ強い決意で臨んだということだろう。3度目の挑戦となった今回、さまざまな心境の変化を経た野田氏は、満を辞して挑んだのだった。

「初出場の2015年大会で準グランプリを獲得し、グランプリ獲得を目指してエントリーした翌2016年大会はシルバーエッグ止まり。それからは、自分に足りていなかったものを考えながら日々の仕事に邁進しました」

忘れられないのは、2016年大会三次審査における審査員とのやりとりだ。

「『将来、何をやりたいの?』という質問に『ケータリング事業』をやりたいと答えたのですが、『では、そのために今、何をしているの?』と追及されて、自分では考えをまとめていたつもりでも、うまく答えられなかったんです。やりたいことの輪郭だけで、中身を詰めていなかったんですね。それがとても悔しくて、自分の言葉に説得力をもたせるために、何をすべきかをずっと考えながら過ごしていました」

2016年の大会後、夢に向かってさまざまな経験を積んだ野田氏は、自身2度目となるフランスへ。ヨーロッパで初となる和牛をコンセプトにしたレストラン「ÔYA Paris」(パリ)のシェフに就任し、得意とするフランス料理をベースにしつつも、ジャンルの枠組みに固執することなくゲストを喜ばせる料理を追求。2019年に帰国すると、「コレクティブ メゾン nôl」を拠点に、ケータリングや出張料理人、食空間プロデュースなどを手がけるフリーの料理人としての活動を開始した。そのスタイルは、新しい料理人像として注目を集めるようになっていった。

「意図してフリーになったというよりは、悩みながら右往左往した結果。さまざまなご縁を大切にするうちに、今のスタイルになったというのが正直なところ。子どもが生まれて、夢への挑戦と生活を守るための選択の難しさに直面し、働き方を変える必要性を感じて、漠然とではありますが現在のようなスタイルを想い描いていたことは確かです」

ケータリングを軸にした料理人のあり方を模索しながらも、レストランというスタイルにも捨てがたい魅力を感じていた野田氏にとって、自身の大きな転換点になったのは、「ピルエット」(東京)のスーシェフ時代に調理スタッフとして参加したフェラン・アドリアとドン ペリニヨンとのコラボレーションイベントだった。

「フェラン・アドリア氏率いるチームの仕事はすべて、その世界観を余すことなく伝えるために完璧にコントロールされていて、衝撃的でした。世界一流の仕事を肌で感じました。そして何より、料理人はもちろん、照明や音響スタッフなど、さまざまなクリエイターたちとの協働によって生まれる至福の時間と空間の素晴らしさに感動すると同時に、深い充足感を味わうことができたのです」

ゲストが喜び、ともに仕事をする仲間も充実感を味わえて、みんながハッピーになれるのであれば、料理のジャンルや提供スタイルにこだわる必要はない。思考と実践の繰り返しの末に見出したこの道を、野田氏は今改めて力強く進みはじめたところである。

RED U-35 2019の決勝の舞台にて、これまでの歩みに確かな手応えを感じつつあった野田氏が熱く語ったのは、料理人が実現しうる、さまざまな幸福のカタチについてだった。大会での結果は望むものではなかったが、氏はすでに前を向いている。

「2年後には、地元福岡に、ケータリングを軸としたラボを構える予定です。そのラボは時としてレストランになることもあるかもしれません。成功の確信はありませんが、今なら理想を形にする自信があります!」

そう力強く語る野田氏は、必ずや料理人の新たな可能性を切り拓いていくだろう。

*Author|RED U-35編集部(MOJI COMPANY)

プロフィール

野田達也(コレクティブ メゾン nôl シェフ)

1985年、福岡県生まれ。福岡調理師専門学校卒業後、都内フレンチレストランを経て「Passage53」(パリ)などのレストランで、フランス料理をベースにした多彩な経験を積む。ケータリングやパーティなどで、世界各国のシェフやアーティストとのコラボレーションに参加。現在は、「コレクティブ メゾン nôl」(東京)に所属しながらフリーランスの料理人として活動。RED U-35 2015、2019準グランプリ、同2016シルバーエッグを受賞。

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