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高度な包丁さばきで示した日本料理の原点

荻野聡士(赤坂 おぎ乃 主人)2019 Finalist インタビュー

INTERVIEW 2020.04.27

30歳の若さで名店「銀座 奥田」の料理長に抜擢され、期待の若手料理人として知られていた荻野聡士氏だったが、「RED U-35」では、過去2度挑戦するも、満足な結果を残せていなかった。33歳を迎えた2019年、3度目の挑戦でようやくたどり着いた決勝の舞台には、見事な包丁さばきで観衆を魅了する荻野氏の姿があった。そのパフォーマンスには、どんな想いが込められていたのだろうか。

「京都 吉兆」「銀座 小十」「銀座 奥田」--荻野聡士氏が腕を磨いてきたのは日本料理を代表する名店ばかり。RED U-35 2019は、3年間料理長を務めた「銀座 奥田」を離れ、独立すると決めてからの出場だっただけに、並々ならぬ覚悟をもって臨んだ大会だった。

「お客さまも予選落ちした料理人の料理を口にしたくはないでしょう。出場するからには優勝しなければと、自分にプレッシャーをかけて挑戦を決意しました」

それだけではない。RED U-35をずっと見続けてきた荻野氏には、ある想いがあった。

「RED U-35は日本で行われている大会なのに、一度も日本料理人がグランプリを獲得していませんでした。そのことがずっと心にひっかかっていたんです。それならば僕が日本料理の料理人で最初のチャンピオンになろう、そう考えていたのですが……」

荻野氏の日本料理に対する熱い想いは、修行時代に形成されたといっていい。最初に修行した「京都 吉兆」では、料理の基礎から、心構えまで、8年間しっかり教わった。

「2年目のある日、お客さまが通られる庭の椿の葉を、一枚一枚“おもてなしの心”で拭く、という仕事を任されました。お客さまが気づかないかもしれない葉の裏まで丁寧に拭くように指導されたんです。そこまで徹底して、お客さまとの一期一会を大事にする日本文化の細やかさに魅了されました」

こうしてますます日本料理の世界にのめり込んでいった荻野氏は、「銀座 小十」の奥田透氏に出会う。ミシュランで三つ星を獲得した、日本料理界を代表する料理人のひとりである。

「『銀座 小十』は、カウンターのお店ですから、料理を魅せるための、所作の美しさまで考えねばなりません。将来、独立するならカウンターのお店で、と思っていましたから、『銀座 小十』で勉強させていただく機会は願ってもないチャンスでした」

荻野氏は、奥田氏の仕事を間近で見ながら、日本料理の魅せ方を吸収していった。修行をはじめて4年目、転機が訪れる。

「大将に『将来うちのお客さん、全部もっていってもいいから、カウンターの仕事を覚えてよ』と言っていただいたんです」

奥田氏の寛大さがわかる、粋な料理長就任の打診だった。こうして荻野氏は30歳で「銀座 奥田」の料理長を任されることに。現実味を帯びてきた独立を意識しながら日々カウンターに立ち、お客との対話を楽しみながら、日本料理の真髄を極めることに心血を注いだ。そのときに何度も思い出したのは、「京都 吉兆」で学んだ日本文化の繊細さだった。

こうして荻野氏の歩みを振り返ってみると、あの、決勝の舞台で見せた包丁パフォーマンスには、修業のすべてが凝縮されていたことがわかる。美しい所作で包丁を操りながら観客に語りかけるその姿は、カウンターに立つ日本料理の料理人そのものだった。

「日本料理に昔から伝わる基本技法をしっかりプレゼンテーションする、という自分なりのテーマをもって大会に臨んだんです。たとえば、切り方ひとつで素材の味が変わる包丁さばきは日本料理の原点。これをアピールして優勝したいという気持ちを、決勝の実演には込めたつもりです」

確かに、最後の舞台で荻野氏は、指先まで神経を研ぎ澄ませ、アオリイカに包丁を入れながら、「日本料理の技術の高さを世界に発信していくひとりになりたい」と聴衆に向けて語りかけていた。惜しくもグランプリには届かなかったが、その言葉に偽りはない。大会終了後にオープンさせた自身の店「赤坂 おぎ乃」では、これまで培った技で、日本料理の素晴らしさを、世界にアピールしていくはずだ。氏のさらなる飛躍に期待したい。

*Author|RED U-35編集部(MOJI COMPANY)

プロフィール

荻野聡士(赤坂 おぎ乃 主人)

1987年、東京都生まれ。寿司屋でのアルバイトをきっかけに料理人を志す。高校卒業後、「京都 吉兆」「銀座 小十」を経て「銀座 奥田」へ。30歳のときに「銀座 奥田」の料理長に就任。3年間の料理長を経験し、2020年3月、満を持して東京・赤坂に「赤坂 おぎ乃」をオープン。

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