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野田達也|最後まで貫いた挑戦者の姿勢

野田達也(nôl ディレクター)2021 Finalist インタビュー

INTERVIEW 2022.02.21

4名のファイナリストのうち、2名が過去大会の決勝経験者だったRED U-35 2021 ONLINE。そのひとりが野田達也氏だ。悲願の優勝こそならなかったが、4度目の出場で3度目の準グランプリを獲得した野田氏の驚異的なアベレージは、RED U-35の歴史に大きな足跡を残したはずだ。最後となる戦いを終えた今、野田氏の胸中にあるのは、意外にも初出場当時からの変わらぬ想いだった。

RED U-35 2019の表彰式において、自身2度目の準グランプリが決まったとき、野田達也氏は悔しさを抑えきれず、ガックリとうなだれた。それは優勝にかけた想いの強さが顕となった瞬間だった。あの日から2年。その後の日々を野田氏はこう振り返る。

「絶対に優勝するという決意で臨んだ2019年は、グランプリ該当者なしという結末だったこともあり、正直、自分に何が足りなかったのかを推し量ることすらできず……。悔しさを消化するのにずいぶん時間がかかりました」

そんななかで、コロナ禍に。「フリーランスの料理人」としてレストランのコンサルティングやメニュー開発を手がけていた野田氏の仕事にはキャンセルが相次いだ。

「もちろん大変な日々でしたが、誤解を恐れずにいえば、コロナ禍で強制的に一度立ち止まらずを得なくなったおかげでみながかえって平静を取り戻し、さまざまなことを見つめ直すきっかけになったと思っています」

そんなころ、届いたのが、RED U-35 2021 ONLINE開催の知らせ。2020年大会が中止になったことによる特例措置として、36歳になる野田氏にも出場資格が与えられることになったのだ。

「ないと思っていたチャンスをいただけた。しかも、オンライン審査は、誰もが初めての経験。ですから、もう一度、ゼロからチャレンジしようという気持ちになれたのです。実は、2015年の初出場のときから、自分に課し続けてきたテーマがあります。それは“挑戦”です。今回の出場を決めたのは、挑戦者の気持ちになれたから」

その姿勢は、決勝戦(40分以内に、オンラインで調理師専門学校生に指示を出して「家庭でできる未来のための一皿」を完成させる「リモートクッキング審査」)の戦い方に表れていたといえるだろう。ほかの選手が一皿に集中するなか、野田氏は「大豆ミートのラグートマトパスタ」と「蕪とお米の食べるスープ」の二皿を用意した。しかも、裏ごしやパイ包み焼きなど、手間のかかる工程を入れ、制限時間ギリギリまで攻めた。その意図を聞くと、明確な答えが返ってきた。

「40分という時間では、二皿が限界。三皿に挑む選手はいないはず。ならば、二皿で最高の完成度を目指そうと考えました。手間のかかる工程をあえて入れたのは、手軽にできる料理だけが家庭料理ではない、という考えから。昨今、レンジを活用する時短レシピが人気ですが、僕は手間をかけるのも家庭料理ですよと伝えたかった。時短レシピがお袋の味になってしまったらさみしいですし、ひいてはそうした流れがおいしさの価値を下げてしまうのではないかという危惧がありました」

工程を増やした結果、時間内にパイが焼き上がらないハプニングに見舞われたが、最後まで攻めの姿勢を崩すことはなかった。大会終了後は、悔しさよりも、もてるすべてを出し切った満足感のほうが大きかったという。

「今回は、レストラン営業や食材視察などで忙しい日々でも、一切手を抜かず、全身全霊で挑むことができました。だからこそ、準グランプリという結果が今の僕の立ち位置なのだと納得できたんです」

では、野田氏にとって、RED U-35とはどんな大会だったのか。初出場の2015年から2021年までを振り返り、まっさきに思い浮かぶ場面を聞くと、「いろいろなことがありすぎて……」と笑ってから、しばし考え込み、そして言葉を噛み締めるように語った。

「思い出されるのは、初挑戦時(2015年)に面談審査をしてくださった龍吟の山本征治さんの言葉に込められた熱い想いに、涙が出そうになったこと。自分の体温が上がっていくのがわかったんです。なぜ、料理をするのか、という根本について、目の前で熱く語る山本さんの目も潤んでいるように見えて、その熱量に僕は圧倒されました」

RED U-35への挑戦を繰り返すうちに、自分の行動の意味をひとつひとつ問うようになったという野田氏。おかげで頭を駆け巡るさまざまな考えも、よりシンプルに整理されていった。

「すべてにおいて、これをやることで喜ぶ人がいるかどうか、逆に誰かを不幸にしてしまうことはないかを、考えるようになりました。お客さまはもちろん、スタッフや生産者のために、今自分ができることを追求していけば、自ずと時代が求める料理人像に近づいていくのではないか。そんな確信がありました。何も考えずに、目の前にある仕事をただこなし、現状維持を心がけるだけでは、刻々と変わりゆく時代に取り残されてしまうはず。常に向上心をもって進化し続けることで、やっと時代にキャッチアップできる、それくらいの感覚ですね。だからこそ、これからもチャレンジし続けるつもりです。おそらく、たくさんの失敗をすることになるとは思いますが(笑)」

かねてより、故郷の福岡にケータリングを軸にしたラボを構えると宣言してきた野田氏は、夢の実現に向けて、これからも挑戦者であり続けるだろう。その進む道は、料理界の新たな道しるべになるだろう。

【料理】徳島県産の山ゴボウをパスタに見立てた「ゴボウのカルボナーラ」。茹でたゴボウと揚げたゴボウの2種を合わせ、食感と風味のコントラストを演出。ゴボウに潜むのは、卵黄を使ったサバイヨン仕立てのソース。泡立てた白いソースは、乾燥させたゴボウを焙じて香りを立たせてから煮出したもの。最上段に添えられるのは、イベリコ豚のチョリソー。全体を混ぜ合わせていただくと、中心素材であるゴボウの味わいに卵黄のコクとチョリソーの動物性の旨味が加えられることで、奥行きのある味わいが完成する。

text by Moji Company / photos by Kenichi Sasaki

プロフィール

野田 達也(nôl ディレクター)

1985年、福岡県生まれ。福岡の中村調理製菓専門学校卒業後、都内フレンチレストランを経て「Passage53」(パリ)などで、フランス料理をベースにした多彩な経験を積む。ケータリングやパーティなどで、世界各国のシェフやアーティストとのコラボレーションに参加。現在は、フリーランスの料理人として各地で活動する傍ら、日本橋馬喰町「nôl(ノル)」のディレクターも務め、同店は『ミシュランガイド東京 2022』で一つ星(イノベーティブ)に輝く。RED U-35 2015、2019、2021準グランプリ、同2016シルバーエッグを受賞。

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