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澤井隆太|出逢いが紡ぐ新たな物語

澤井隆太(Blanc)2022 Finalist インタビュー

INTERVIEW 2023.02.14

「RED U-35 2022」決勝の舞台において挑戦者はみな自身の野望や料理哲学など、さまざまな想いを込めたパフォーマンスで見る者を魅了した。ゲストに剪定バサミを持たせ、みかんの擬似収穫体験をさせるなど、オリジナリティあふれるひとときを提供した澤井隆太氏もそのひとり。それは多彩な出会いをクリエーションに昇華させる澤井氏らしいものだった。

和歌山の「オテル・ド・ヨシノ」で料理人人生をスタートさせた澤井氏は、東京の「ル・マンジュ・トゥー」にてさらなる研鑽を積み、やがて同店でスーシェフを務めるまでに。2020年の暮れに同店を辞した氏は、佐藤伸一氏がシェフを務めるフランス・パリの「Blanc(ブラン)」(2023年春オープン予定)への移籍が決まっていた。「Blanc」のオープンまで、故郷である奈良を拠点に、日本に一時帰国していた佐藤氏のフェアをサポートしながら国内各地を巡り知見を深めていた澤井氏が「RED U-35 2022」にチャレンジしたのは、そんな雌伏のときを過ごしていたタイミングだった。

「旅」をテーマにした「RED U-35 2022」のエントリーが開始された6月初旬。澤井氏はフランスやスペインなどヨーロッパ周遊の途上にあった。帰国後は和歌山の梅農家に1カ月ほど滞在する予定になっていたこともあり、「この経験を“RED U-35”という舞台で表現したい」という想いが膨らんだと言う。

「お世話になった農家さんでは、梅の収穫に参加しながら、キッチンをお借りして料理をしたことも。提供いただいたトマトや、害獣駆除として捕獲されたシカやイノシシなどを調理したトマトのミートソースを、生産者さんや猟師さんが僕の目の前で喜んで食べてくださったことなど、とにかく印象深いシーンの連続。害獣被害の状況を肌で感じ、こうした社会課題との向き合い方を再考するきっかけにもなりました。和歌山のように海の幸、山の幸に恵まれた場所で、人と人とのつながりを大事にしながら、土地の魅力を世界に発信するレストランを開きたい。そんな将来のヴィジョンがより明確になった貴重な体験でした」

澤井氏の物心ついたころ、父は奈良でビストロを営んでいた。生産者はじめ、他業種の人びととの絆を大切に、互いを尊重しながら充実の日々を過ごす父の姿に憧れを抱く澤井氏は、いつしか父と同じ道へ。そんな氏の目下の夢は、フランスの地方で、世界中からゲストが訪れるレストランをオープンさせること、である。

「どんなに辺境の地であっても、注目を集めるレストランを中心にホテルなどが集積し、世界中からゲストが訪れる魅力あふれるエリアが形成される-そんな理想的な経済循環を生むコミュニティの中心として社会に貢献できるようなレストランを開くことが夢。そのためにも、料理人としての幅を広げるべく、これまで学んできたクラシカルなフランス料理のみならず、佐藤氏のもとでは、イノベーティブなスタイルの料理も吸収したいと考えています」

そんな想いを胸に、万全の準備をして挑んだ「RED U-35 2022」において、常に笑顔でポジティブなオーラを放つ澤井氏の存在は、決勝の舞台でも場の空気を和やかにしていた。納得のいくパフォーマンスができなかったという後悔がある一方で、旅をテーマに自身の体験を反映させた料理には手応えも感じていた。

「19歳で離れた地元の魅力を今回改めて知ることができましたし、佐藤氏とともに赴いた地方の未知なる食材の数々や、生産者の方々との交流など、僕だけの物語を反映させた料理を創出できたことは大きな自信になりました」

土地の文化と歴史、豊かな食材を育む風土を体感し、その魅力を余すところなく美食として披露するーその経験は近い将来、フランスという新たな舞台で実を結ぶことになるだろう。

【料理】 奈良伝統野菜の今市蕪を、水、塩、青い四季橘(未完熟の四季橘)のシロップを入れたピュレに、熟れた橘の香りと酸味、そして日本最古のみかんとされる大和橘の甘みを最大限に生かした果肉と果汁ジュレを合わせ、四季橘のスライスを乗せて。最終審査の際に創り上げたメニュー「命を紡ぐ、収穫。」を、奈良で出会った食材(大和橘、四季橘、今市蕪)にて再現したひと皿。

text by Moji Company / photos by Yukiyo Daido

プロフィール

澤井 隆太

「Blanc」(2023年春開業予定)料理人
1992年、奈良県生まれ。辻調理師専門学校卒業後に、和歌山の「オテル・ド・ヨシノ」に入社。その後、「ル・マンジュ・トゥー」(東京・神楽坂)にてスーシェフとして活躍。現在はフランス・パリ「Blanc」。

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