RED U-35RED U-35

メニュー

町田亮治|自分だけの物語を紡ぐために

町田亮治(赤坂 菊乃井)2022 Finalist インタビュー

INTERVIEW 2023.02.15

「菊乃井 赤坂」一筋15年。副料理長として一流店の厨房を仕切り、数多の客人をもてなしてきた町田亮治氏。そんな自負を胸に挑んだ「RED U-35 2021 ONLINE」では、シルバーエッグに残ることすら叶わなかった。ある程度仕事にも手応えを感じ、独立を視野に入れ、満を辞して臨んだ大会で、そんな自信を打ち砕かれたのだ。

「RED U-35 2022」でグランプリRED EGGに輝いた酒井研野氏(「日本料理 研野」オーナーシェフ)をはじめ、「RED U-35 2016、2019」にて準グランプリを獲得した成田陽平氏(「陽」オーナーシェフ)など、すぐれた成績を収めてきた同門である彼らの姿には大きな刺激を受けていた。

しかし、自らを「危ない橋を叩いても渡らない慎重な性格」と分析する町田氏は、「自分にはまだ、ほかにやるべきことがあるはずだ」と、調理技術の向上はもちろん、フグ調理師免許の取得や、ソムリエ資格の取得など、自己鍛錬に集中してきた。

そんな町田氏に転機が訪れたのは2019年。菊乃井社長である村田吉弘氏に相談のうえ、2020年には同店を辞し、自店をオープンさせることを決意した。しかし、程なく折からのパンデミックに見舞われることに。

「社長に“世間が落ち着くまで、しばらくはうちにいろ”、と言っていただいたこともあり、将来のビジョンについて改めてじっくり考えるゆとりができました。そのタイミングでエントリーしたのが『RED U-35 2021 ONLINE』だったのですが……。菊乃井の看板を背負って独立したら、下手なことはできませんし、かといって、自分の色を出さなければ、場所を変えて菊乃井の料理をお出しするだけになってしまう。自分の料理で勝負しなければならないことを思い知らされた大会でした」。

料理そのものに関しては自信があったものの、それを視覚的にもアピールする、時代に合わせた表現力には課題を感じていた。それをバネに、町田氏は次なる挑戦に向けて、すぐさまアクションを起こした。他ジャンルの料理人とのコラボレーションイベントや、地方の生産者や焼き物の産地を訪れ作家との交流を深め、賛同者を増やしながら、「町田亮治という料理人のあるべき姿」を模索。自分のめざすべき日本料理を見据えながら、ひたむきに視野を広げることに注力した。

そうして迎えた「RED U-35 2022」の一次審査で披露した「繋ぐ ー愛ー」と題された料理-鱧をメインに、京都の玉露と抹茶を出汁と合わせてうまみを引き出し、金山寺味噌のたまりで風味を加えたもの-は、試行錯誤の末に辿り着いたひとつの答えだった。

「茶道の先生でもある祖母を想うことでひらめいたこの料理には、確かな手応えを感じていました。“どうだ!これが僕の料理だ!”と言わんばかりの強烈な個性を放つものよりも、身体に優しく、人の想いに寄り添うような料理が自分にふさわしいのではないか。そう思い至ったのです」

「地元の愛知に戻るべきか、あるいは東京で出店すべきか……」-自身の今後について「絶賛模索中」と語る町田氏ではあるが、全力で立ち向かった「RED U-35 2022」での経験、師の教えの意味を考える日々を過ごすうちに、料理人としてのあるべき姿を見出していた。

「お客さまはもちろん、生産者や器の作家、スタッフなど、かかわる人すべてが幸せになることが何よりも大事。自分一人だけが潤っても意味がないんです。その理念を利益に反映させる仕事をすること。そしてそれを少しでも長く続けることが理想です」

そんな夢を叶えるためにも、日本の料理界における自身のプレゼンスをさらに高めていくことが目下の目標。もちろん、「RED U-35」でのグランプリ獲得は至上命題である。

「独立に向けて、クリアすべき課題はたくさんあります。さまざまなイベントや『RED U-35』への参加をとおして、さらに注目していただけるよう活動の幅を広げていくつもりです」

町田氏は今、自らの世界を確立させるべく、果敢に、そして着実にその歩みを進めている。

【料理】 「RED U-35 2022では、日本料理の料理人らしい包丁技術を十分にアピールできなかったことも反省している点のひとつ」と語る町田氏の想いのこもったひと皿。ただ“切る”だけで素材の魅力を引き出す日本料理の真髄ともいえる技は、その所作も美しい。

text by Moji Company / photos by Kenichi Sasaki

プロフィール

町田 亮治

「赤坂 菊乃井」副料理長
1990年、愛知県生まれ。高校生の頃にテレビ番組で見た「菊乃井」に憧れ日本料理の道へ。名古屋調理師専門学校卒業後、2008年「菊乃井」入社。その後「赤坂 菊乃井」一筋で研鑽を積み、現在は副料理長として活躍。

SHARE

TEAM OF RED PROJECT

RED U-35 2023

ORGANIZERS主催
CO-ORGANIZER共催
PARTNER
SUPPORTERS
CHEF SUPPORTERS
後援
WE SUPPORT