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人と環境に寄り添う、今の“普通”を適えるレストラン〈 kitchen space nôl 〉

kitchen space nôl

COLUMN 2022.10.19

日本橋馬喰町にある「kitchen space nôl(ノル)」。新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティションRED U-35で数多くの賞を獲得している野田達也氏がディレクターを務める、人と環境に寄り添う、今の“普通”を適えるサステナブルレストランの魅力をご紹介する。

これからの生活、文化を未来に紡ぐ食のあり方

話題の店が増えている東京イーストエリア、日本橋馬喰町のデザインホテル DDD HOTELの1階にある「kitchen space nôl」。
パリで日本人初の二つ星を獲得した「Passage 53」シェフ(現「Restaurant Blanc」シェフ)佐藤伸一氏に師事し、日本最大級の料理人コンペティションRED U-35で、準グランプリを3度も獲得した野田達也氏がディレクターを務めるレストラン。

自ら生産者のもとへ足を運び、食材・生産者に共感した食材だけを丁寧に本来の味を楽しんでもらえる調理で提供する。人と環境に寄り添うことにとことんこだわった、これからの“普通”を追求する店だ。

「DDD HOTEL」全体の設計を行なった、ケース・リアル 二俣公一氏の設計・デザインによるお店はシックで、キッチンスペースというだけに、キッチンの中にいるような感化に浸れる造りになっている。広くて驚くほどきれいなキッチン。お店に入ったとたんに、ピンとした空気に静かな心地よい神聖な刺激を感じる。

地球環境、人間社会、生活、に寄り添っているこの店は、料理とそこにいるスタッフ一人一人の人柄に溢れ出ている。

本物の新進気鋭の料理人「野田達也」

野田達也氏とはどういう人物か。
意外にも社会人のスタートはコンピューター関連の会社のサラリーマンだった。人と直接関わる仕事で人に喜ばれ、恩返しができる人間になりたいと考え、料理の世界へ転身した。フランス修行や様々なレストランで経験を積んでいくなかで、レストランの哲学や料理人の情熱などに触れて感銘を受けるとともに、共通言語のように人や場所、文化によっていかようにでも形を変えていく料理に、大きな可能性を感じたという。

野田氏が大事にしていることに、料理とは「心の栄養」「心の食事」という考え方がある。誰と、どのように、何を食べるのか。それによって心が豊かになる。自分で作る料理も、家庭で人に作ってもらう料理も、レストランで料理人に作ってもらう料理もそれにつながっている。彼は、彼が思う優しさを料理に詰込み、お客様へ提供する。


人と環境に寄り添う料理

メニューは季節の食材のおまかせコース。ジャンルにとらわれず、食材とそれを育てる人・土地・料理をする人の想いが詰まっている。ディレクター野田氏と共に、フリーランスの若手料理人が集まりこのキッチンスペースで料理を考案、提供する。

シグニチャーメニュー「産土(うぶすな)」は、RED U-35に初挑戦した7年前、美味しさとは?何のために料理をしているのか?自身を深く掘り下げ幼少期の記憶にあった祖母の糠漬けを軸に、父の畑で育った野菜を使い創作した料理。今も作り続けており自身を確認する指標にもなっているという。

漬けると栄養価を上げ乳酸菌豊富な食材へと変化させる妙法。原料は玄米、水、塩のみ。糠漬けに限らず、日本独自の四季と各地の風土が生み出した多様な漬物文化とそこに紐づく素晴らしい知恵に学ぶべきことが数多くある。未発展の時代に育まれた知恵だからこそ、これからの時代に向けたヒントや豊かさの本質がある。その土地や人を知り、寄り添い、感謝することで足るを知る。美味しさや幸せの捉え方で人生の価値は、大きく変わる。料理人として、そんな気付きのきっかけとなるような心の食事を作らなければと思う。とこの料理について野田氏は言う。

まさに野田氏の料理哲学を象徴する一皿だ。メイン食材の茄子には細かな格子模様をあしらい、正確にさいの目切りにされたぬか漬けの野菜、美しいの一言である。動物性食材は使わず野菜メインの料理なのにきりっと塩味が効いていて大満足の一皿である。

季節ごとにメニューは変わるが、魚も肉も環境に寄り添ったものを厳選する。キャビアを目的で養殖され、身は廃棄されてしまうことが多いチョウザメの身を使った料理、日本では淡白すぎておいしくないと思われている食材を調理法で見事に生まれ変わらせる。害獣として社会問題になる蝦夷鹿も通年メニューに加えフードロスや温暖化問題について向き合いおいしさの価値と命の大切さを伝える。

ドリンクペアリングも驚きに満ちている。ビバレッジディレクターを務める大井充氏は、以前の職場で野田氏と一緒だった時から信頼の絆を深めていた人物である。試作の段階から料理とのマリアージュを話し合いメニューを構築していく。そこに少量生産で入手困難なワインや日本酒などを少ずつ多種多様なペアリングで提供してくれる。

そしてコースをすべて食べ終わった後でも、まったく体に負担を感じない。それこそが「nôl」なのだ。乳製品や脂肪分などをなるべく控えてお客様の健康に寄り添う。デザートも地球環境や労働環境に配慮した生産者からダイレクトトレードで輸入されたカカオを使用し、“チョコレート”ではなくカカオ本来の香りや味わいを愉しめる仕立てで提供している。また、これらのデザートは、乳製品を使わずに作られているのも驚きだ。

最後に出てくるお飲み物はお店で使用して料理には使われなかった野菜の葉や根部分などの端材を乾燥させ、それを丁寧に抽出した出汁茶が提供される。ディナータイムの最後の飲み物として、遅い時間にコーヒーなどのカフェインを取るよりも体に負担が少ないのではと心遣い、そして食材に対する感謝だ。


新しい“普通”

昨今トレンドワードのように使われ始めた「サステナブル」。このような概念は実は日本人の生活には古くから浸透していた「いただきます」という言葉。調理人が「さぁお食べ」というような食事開始の挨拶は他国に多いが、日本では食べ手が、調理人や食材、そして食材を大事に作っている生産者への感謝を表す言葉である。他の国には少ない文化の象徴ともいえるこの言葉を使う日本人。それを体感できる店である。

ゲストとの会話から、「どんな風にお料理作ってるの?」「この食材はどれ?」などと聞かれると、ためらうことなくキッチンの中に招き入れ、丁寧に教えてくれる。調理場にゲストを入れてくれるお店は聞いたことがない。それだけ自信をもって愛情込めて仕事をしている証であり、食べ手に寄り添った店である。

丁寧に生産された旬の食材を、本来の味を引き立てる調理で。美しく心地よいしつらえの中、適切な量を、適切な価格で。人と環境に寄り添う、今の"普通"とは。これからの生活、文化を未来に紡ぐ食のあり方とは。調和のとれた新しい"普通"を適えていく『nôl』。

今後も現状にとどまらず、人と地球と社会に寄り添い進化を続けるであろうこの店に注目したい。

kitchen space nôl
2019年秋、日本橋馬喰町に37年続くビジネスホテルをフルリノベーションして生まれ変わったデザインホテル【DDD HOTEL】の1階に、2021年5月にオープン。
住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD HOTEL 1F
営業時間:Course 18:00〜
定休日:火、水
WEB:https://nol.jp/

プロフィール

野田達也(nôl ディレクター)

1985年、福岡県生まれ。調理師専門学校卒業後、都内フレンチレストランを経て「Passage53」(パリ)などで、フランス料理をベースにした多彩な経験を積む。ケータリングやパーティなどで、世界各国のシェフやアーティストとのコラボレーションに参加。現在は、フリーランスの料理人として各地で活動する傍ら、日本橋馬喰町「nôl(ノル)」のディレクターも務め、同店は『ミシュランガイド東京 2022』で一つ星(イノベーティブ)に輝く。RED U-35 2015、2019、2021準グランプリ、同2016シルバーエッグを受賞。

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