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第1回「食のサステナブルAWARD」開催 〜私たちの未来を創るアイデアを求めて〜 [総括篇]

RED U-35 spinoff 2021.04.08

審査員たちの心を揺さぶった料理人たちの熱意

貧困による飢餓が絶えない一方で、フードロス問題がクローズアップされるなど、食にまつわるさまざまな課題に対して、料理人たちはどのように向き合い、解決に導こうとしているのか-- 「RED U-35」のスピンオフ大会として開催された「食のサステナブルAWARD」は、そんな情熱ある料理人=食のイノベーターにスポットを当て、食のサステナビリティ(持続可能性)をテーマに、斬新なアイデアによって社会を動かすきっかけづくりを目指すコンペティションである。

記念すべき第1回大会の応募企画総数は113。企画書とプレゼンテーション映像によって提示されたアイデアは、いずれも甲乙つけがたく、審査員の頭を悩ませることになった。

審査員を務めたのは、小山薫堂氏(RED U-35総合プロデューサー、放送作家)、狐野扶実子氏(RED U-35審査員、食プロデューサー)、生江史伸氏(RED U-35審査員、L'Effervescenceシェフ)の3氏。2021年2月26日(金)、一同が集い選考会が行われた。

「みなさん一生懸命取り組んでいるのが伝わってきて、落とす理由が見つからない」(生江氏)、「今回は、企画が悪いから落とすというのではなく、みんなで話し合ったらもっとよくなりそうな取り組みを選んではどうか」(小山氏)、「他の料理人にいい影響を与えそうなプロジェクトを評価しては」(狐野氏)など、審査員からはポジティブな発言が相次ぐことに。参加者の熱量に応えるような真剣な議論の末、以下の10組が「“SEEDS 10” サステナブル金賞」に選ばれ、金賞認定証と1組10万円の支援金が贈呈された。

“SEEDS 10” サステナブル金賞
1. 北新地朝ごはんプロジェクト/菅沼 恒
2. オード/生井 祐介、安藤 崇明、木村 琢朗、藤原 ヴァネッサ カオリ、池田 久美子、スカランティーノ マルコ、井口 裕二、小林 理恵
3. サスティナ鶴岡/齋藤 翔太、小野 愛美、佐藤 公一
4. 京都里山プロジェクト/神田 風太、酒井 研野、木藪 愛、宮下 司、角谷 香織
5. 都市のみらいレストラン/山口 智也、熊原 充志、豊永 翔平、田中 克、大出 雅夫
6. 土とシェフ/五十嵐 創、土屋 拓人
7. hamadayaLABO+ハタケノミライ プロジェクトチーム/濱多 雄太、寺田 晴美、浜浦 一輝
8. ITADAKIMASU/高山 仁志、石田 雅芳、野中 朋美
9. Otto e Sette Oita/梯 哲哉、衛藤 祐輔、松田 真太郎、佐藤 沙織、森山 美加
10. RISTORANTE SIVA/加藤 正寛、古瀬 遥

ディスカッションで見えてきた光

2021年3月18日(木)には、上記10組と審査員による「オンライン発表会~プレゼンテーション&アクセラレーション~」が実施された。プレゼンテーション後に行われた審査員とのディスカッションは、食の変革を期待させる充実したものとなった。

たとえば、最先端農業を展開する農家、レストラン、ファンドが協働することで都市部で地産地消を実現するプロジェクト「都市のみらいレストラン」では、「都市部で就農者を集めるのか、地方から農家をつれてくるのか」という小山氏の質問に対し、発案者のひとりで生産者兼技術開発者の豊永翔平氏は「数カ月で技術習得できる農法なので、都市部の人に農業の門戸を開ける。都市部で農業を学んでから地方の広大な土地に移って大規模化する選択肢もある」と回答。後継者不足や低迷する食糧自給率の問題に対する解決の糸口が見られた。

また、地域に住む貧困世帯の子供たちに無料で朝食を提供する「北新地朝ごはんプロジェクト」では、狐野氏から「全国に広げていける取り組みではないか」という意見が出され、小山氏が「日本には、米騒動が起こったときに、政府が公衆食堂を作って広まった歴史がある。朝食に限らずに公衆食堂を作っては」と続くと、発案者である菅沼恒氏も「最終目標は、まさに公衆食堂のような仕組みをつくること」と答えるなど、両者のディスカッションによりプロジェクトのさらなる可能性に言及される場面も多々見られた。

発表会終了後、各審査員がとくに期待するチームには「審査員特別賞」が贈られた。ここでは、この3組を含む選ばれし10組のアイデアと、審査員とのディスカッションで見えてきた新たな展望を紹介する。

[小山薫堂賞]
料理人が里山で実践する地産地消
京都里山プロジェクト



京都の料理人が共同で、府北部の山を借り、そこで育てた野菜を中心街のレストランで提供する地産地消の取り組み。また、凍って使い物にならない野菜やレストランで出る端材を一流料理人の調理技術で商品として再生させ、京都の八百屋を通して流通させる仕組みの構築も目指している。小山氏は「料理人が山を借りるというストーリーには、サステナブルな取り組みの継続・発展に欠かせない“ワクワク感”がある」と高く評価。「ネット・メディアを立ち上げるなどして、一般の方が取り組みを疑似体験できるようにすればさらに期待は高まるはず。応援してもらえるよう、山の名前を決めてはどうか」との提案に代表の神田風太氏は「名前は公募したい。発信方法は今後の課題。共感してくれる料理人や消費者が増えることを願っている」と応じた。

[狐野扶実子賞]
知恵と笑顔、そして喜びを次世代へ
ITADAKIMASU



食の知恵をおばあちゃんに学びながら、話をしてくれたおばあちゃんの写真を撮りためて発信していくというプロジェクト。「現代では、食べたい料理を思い浮かべて、食材を買いにいくことが多い。しかし料理とは、その日ある食材を最良のかたちで生かすのが本来のあるべき姿ではないか。その方法をおばあちゃんに学ぶための取り組み」と代表の高山仁志氏。狐野氏は「本当に心が温まるプロジェクト。おばあちゃんの話は広く共感を得られて、私たちのウェルビーング(幸福感)につながるはず。10組のなかで、唯一、過去に学ぶ姿勢を明確に打ち出し、独自性があった」と評価した。高山氏は「いずれは世界中のおばあちゃんの話を聞いてみたい。その知恵を全世界で共有できたら素晴らしいこと」と未来を語った。

[生江史伸賞]
温泉資源の調理への活用
Otto e Sette Oita



別府の鉄輪温泉にあるイタリアン・レストラン「Otto e Sette Oita」は、パスタを茹でたり、素材を蒸したりするのに温泉を有効活用している。その取り組みを生江氏は「地元では当たり前にある資源の素晴らしさに気づき、有効活用し、発信してく姿勢はとても重要なこと」と評価。「温泉のようにミネラル分が多い硬水は、パンを焼くのに適している。温泉で生地を練ってフォカッチャを作ってみたことは?」との質問にシェフの梯哲哉氏は「試したことはあるが、今ひとつうまくいっていない」と回答。生江氏は「普通の水と温泉をいろいろな配合で混ぜて試してみるといいかもしれない」とアドバイスを送り、温泉のさらなる可能性が見えたディスカッションとなった。


北新地朝ごはんプロジェクト
菅沼 恒

大阪市北区梅田の歓楽街である北新地の飲食関係者が協力して、地域に住む貧困世帯の子供たちに無料で朝食を提供する取り組み。狐野氏から「全国に広げていける取り組みではないか」と意見が出ると、小山氏も「日本には、米騒動が起こったときに、政府が公衆食堂を作って広まった歴史がある。朝食に限らずに公衆食堂を作っては」と続いた。これを聞いて、発案した菅沼恒氏も「今回はプロジェクトの実現可能性を考えて、まずは朝食から始めてみようと思い立ったが、最終目標は、まさに公衆食堂のような仕組みを作ること。ぜひその方向でも考えていきたい」と目を輝かせた。


お任せコースに使用した野菜の端材に着目
オード

東京都渋谷区広尾にあるフレンチ・レストラン「ODE」では、シェフと若手スタッフが一丸となり、調理の際に発生する野菜の端材をソースや、乾燥させてお茶にしたり、あるいは発酵させてカレーのベースとして活用するなどのチャレンジを続けている。コンポストの導入によって排水処理している生ゴミを、今後は堆肥にして畑で使うことを検討している。シェフの生井祐介氏が「今回の参加をきっかけに、これまで以上に若手スタッフのサステナビリティに対する意識が高まっている」と語ると、小山氏は「若い世代のパッションを感じた。他のレストランとも協力しながら若手の勉強会を開催して広げていくのがよいのでは」とアドバイスしていた。


豊食をひらくフードハブ・キッチン
サスティナ鶴岡

山形県鶴岡市の料理人と生産者が協力して、地元の食材を使った食事を提供するプロジェクト「フードハブ・キッチン」を主催。鶴岡の食文化を通して命をいただくことの大切さを子どもたちに伝えると同時に、農作業や海辺のゴミ拾いを体験させ、食のサステナビリティについて考える力を養っていく。狐野氏が「鶴岡はSDGs未来都市に認定されているので、この取り組みを国連などの国際的な機関にアピールすべきでは」とアドバイスすると、代表の齋藤翔太氏は「まさにそうしたいと思っていたところ。世界に発信してみなで想いを共有できる取り組みに育てていきたい」と意気込みを語った。


業界の垣根を超えた協働が目指す新たな循環
都市のみらいレストラン

最先端農業を展開する農家、レストラン、ファンドが協力することで、都市部で農家を育てながら地産地消を実現するプロジェクト。「都市部で就農者を集めるのか、地方から農家をつれてくるのか」という小山氏の質問に対し、発案者のひとりで生産者兼技術開発者の豊永翔平氏は「数カ月で技術習得できる農法なので、都市部の人に農業の門戸を開ける。都市部で農業を学び、地方の広大な土地に移って大規模化する選択肢もある」と回答。後継者不足や低迷する食糧自給率の問題に対する解決の糸口を提示した。


料理人参加型農業による食のサステナブル
土とシェフ

神奈川県相模原市の藤野地区で食を通した地域経済構築の取り組み。地元料理人が就農し、有機野菜を育て、レストランで提供したり、ファーマーズマーケットで販売したり、6次産業化して雇用を生み出したりしている。また、地元の“仕掛け人”として知られる土屋拓人氏が地域通貨「萬(よろづ)」を考案。「萬」は約600人の住民が使用するまでに浸透し、食材・食品をはじめ、地域のさまざまなモノ・サービスに使える経済コミュニティーが生まれている。就農した料理人の五十嵐創氏は「地域で人と人が助け合う形が広がりつつある。料理人として、農家として、食を通したコミュニケーションのあり方を考え続けたい」と展望を語った。生江氏は「社会の分業化が進むなかで、失われた連帯を再構築する取り組みとして感心した」と評価した。


旬を余さない発酵調味料
hamadayaLABO+ハタケノミライ プロジェクトチーム

富山県内の料理人と農場が協力して、野菜の未利用部分を発酵させることで「野菜調味料」にする取り組み。野菜の先端部分や外皮部を、麹で発酵させ、ソースやドレッシングにして活用する。生江氏は「野菜の端材を有効活用するために機械で乾燥させようとすると、どうしてもエネルギーを使ってしまう。その点、麹の発酵は自然の力なので環境にやさしいかもしれない」と評価しつつ、「サステナブルな取り組みでは、失敗をみなで共有していくことも大切なのであえて聞くが、失敗例は?」と質問。代表者である料理人の濱多雄太氏は、「甘みのある野菜は発酵との相性はよいが、酸味のある食材はなかなかうまくいかない」と回答。こうした課題が広く共有されることで、新たな解決策が見つかることにも期待が集まる。


さっと、サステナブルなチョイス「さっちょ」
RISTORANTE SIVA

サステナブルな取り組みをしているレストランを検索できるグルメサイト「さっちょ(=さっと、サステナブルなチョイス)」を提案したのは、神奈川県鎌倉市にあるRISTORANTE SIVAの料理人、加藤正寛氏と、今回、唯一の大学生メンバーである古瀬遥氏。このサービスを浸透させることで、社会全体のサステナビリティに対する意識を向上させるのが狙いだ。小山氏は「航空会社や宿を選ぶサイトにも応用できるアイデア。グルメサイトのライバルになってもいいし、協力してやってもいいので、ぜひ若い力で実現させてほしい」とエールを送った。加藤氏は「専門的な知識のあるぐるなびさんの意見もぜひ聞いてみたい。僕たちのアイデアをブラッシュアップできたら」と顔をほころばせた。


課題と対策をみんなで共有することの大切さ

それぞれユニークな視点で“食”をキーワードに、未来を描いてみせた10組のプレゼンテーションを受け、審査員はいずれも感銘を受けた様子。その確かな手応えは各審査員の総評にも表れている。

小山氏
「今回のアワードは、サステナブルな活動をする料理人たちが出会うことで、他の人たちの取り組みを知り、刺激し合うことに意味があったと思います。審査は本当に迷いました。それくらいみなさんのアイデアは素晴らしいものばかりでした」

狐野氏
「サステナブルな活動は、人のアイディアに耳を傾け、それを自分の問題に置き換えて考えることが大切で、その点で今日のディスカッションはとても意義があったと思います。私たちみんなが幸せになるために、楽しみながら活動を続けてほしいです」

生江氏
「自分のものを自分だけの宝にせず、誰かのために使っていくことの大切さを知るよい機会になりました。考えをみんなで共有することは素晴らしいなと、あらためて思いました。みなさんには、常にグローバルな視点を持って活動を続けて行ってほしいと思います」

こうして「オンライン発表会」は無事終幕を迎えたが、集まったアイデアをさらに飛躍させるべく、主催した「RED U-35」実行委員会は今後も彼らの取り組みを積極的にサポートしてく。知られざるアイデア、取り組みにスポットライトを当てることで、よりよい食の未来に貢献すべく、引き続き「食のサステナビリティ」をテーマにした活動を続けていく考えだ。

[ご報告]
「食のサステナブルAWARD」に合わせて実施した「教えて #食のサステナビリティ」キャンペーン(2020年12月23日~2021年3月31日)において、合計273投稿いただいたことからWFP国連世界食糧計画へ33,000円の寄付を実施しました。

「教えて食のサステナビリティキャンペーン」はみなさんが考えた&取り組んでいる「食のサステナビリティ」をハッシュタグを付けてSNSに投稿する取り組みで、投稿条件を満たした1投稿につき120円を、今日食べるものがない人たちに食糧を届け、命を繋ぐWFP国連世界食糧計画に寄付。寄付金は支援先の子どもたちに学校給食を届けるために使われます。120円で4人の子どもたちに給食を届けることができます。

今回のキャンペーンでは、SNSに合計273投稿(Instagram 224、Facebook 31、Twitter 8)いただきました。ご協力いただいたみなさまに感謝いたします。RED U-35実行委員会では、これからも子どもたちを支援する活動を継続していく予定です。

▶︎オンライン発表会~プレゼンテーション&アクセラレーション~のアーカイブ動画はこちらから視聴できます

▶︎食のサステナブルAWARD 大会概要はこちら

RED U-35 spinoff 食のサステナブルAWARD
主催:RED U-35(RYORININ's EMERGING DREAM U-35)実行委員会
共催:株式会社ぐるなび
サポーター:株式会社J-オイルミルズヤマサ醤油株式会社日本サニパック株式会社SAKE HUNDRED(株式会社Clear)国分グループ本社株式会社大和リース株式会社

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