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食の新たな魅力発見を目的とした「西ノ島町×CLUB REDシェフツアー」

LABO 2023.03.14

RED U-35の主催社である株式会社ぐるなびでは総務省の「地域活性化起業人制度」を活用し、⾷や観光を通じた地域の活性化を⽇本全国の⾃治体と連携しながら実施している。

※「地域活性化起業人制度」とは・・地方公共団体が、三大都市圏に所在する民間企業等の社員(地域活性化起業人)を一定期間受け入れ、そのノウハウや知見を活かしながら地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事する制度

西ノ島町に地域活性化起業人が派遣されていることから、西ノ島町×CLUB REDシェフツアーを開催した。

「西ノ島町×CLUB REDシェフツアー」開催の背景
西ノ島町は、ジオパークに認定されている隠岐諸島の中の2番目に人口の多い島である。
摩天崖や国賀海岸というダイナミックな景勝地が人気スポットで観光客が多く訪れるが、
その一方で、「地元の食材を楽しめるお店が無い」という声も多く聞かれる。
西ノ島の主な産業は漁業だが、漁獲高の減少、魚価の低迷などの課題があり西ノ島町内では殆ど流通がない。
また、古くから西ノ島町では「魚は買うものではなく、貰うもの」という意識が根付いていることも、町内で魚が流通しない一つの原因かもしれない。
西ノ島町の食材を地元の方が購入し、消費することにより海産物を町内で流通させ、漁業を活性化、更には町を活性化させることができると考える。
また、古くから伝わる西ノ島町の郷土食が、人口減少と共に継承されづらくなっているという課題がある。
Iターン者が増えている西ノ島で、若い人でも楽しめる、海産物と郷土食を組み合わせた新たな食の魅力を見出したいという想いで、今回のツアーは企画された。

「西ノ島町×CLUB REDシェフツアー」の目的
町民自らが、町で獲れた海産物やなめみそを使った料理を楽しみ、消費し、情報発信をすることで、海産物の流通となめみその継承を図りたい。
そのために、昔からある郷土料理だけでなく、新たな、今の若い人も楽しんでもらえるような海産物×なめみその活用法をCLUB REDの皆様に見出して頂きたい。
そして、それを2024年度にイベントという形で町民に発信していく予定だが、そのイベントについて協議をするというのが、今回のシェフツアーの目的である。

「西ノ島町×CLUB REDシェフツアー」の流れ
1日目は景観地の視察や西ノ島町が継承していきたい万能調味料の「なめみそ」について知るため、西ノ島町食生活改善推進協議会の皆様との交流会及び、なめみその試食会を行った。
2日目は漁港や水産加工施設などを周り西ノ島町の海産物や産品を知り、その後再度西ノ島町食生活改善推進協議会の皆様との交流会を行った。内容としては、西ノ島町食生活改善推進協議会の皆様が作ってくださった郷土料理で昼食をとり、西ノ島町の新たな食の魅力について料理人と西ノ島町食生活改善推進協議会の皆様と町役場の職員で協議し、それをR5年度にどのような形で町民に披露するのか意見を出し合った。

西ノ島町の魅力の一つである素晴らしい景観地を視察

隠岐諸島はジオパークに認定されており、西ノ島町では主に「摩天崖」や「通天橋」、「赤尾展望所」などが人気スポットである。
馬や牛が放牧されており、大自然と動物の掛け合いがさらなる景色の美しさを創出している。

町が継承していきたい郷土食である「なめみそ」について学ぶ

景観地の視察後、西ノ島町で食育や食改善に関わる活動をされている、西ノ島町食生活改善推進協議会の皆様との交流会を開催した。
古くから伝わる郷土食の「なめみそ」について、町民にとってどのようなものなのか、家庭による味の違いや、作り方について実演して頂きながら、学んだ。
「離島であることから、フェリーが運航する前は納豆などの既製品が流通せず、その代わりに発酵食品であるなめみそを昔から食べていた」と、西ノ島町食生活改善推進協議会の松浦さんは話す。

また、町内の保育園や各家庭で作られている6種類のなめみそが用意され、レシピによっての味の違いなどについて説明を受けながら試食を行った。
昔から伝わる郷土料理のレシピだけでなく、料理人の知見を生かしたなめみその新しい食べ方について協議が行われた。

料理人からは、なめみそを知らない人にも知ってもらうためには、乾燥させグラノーラのような形にして提供すれば受けいれやすいのではという意見が上がっていた。
また、身近な家庭料理での活用方法としてひき肉替わりとしてコロッケに入れてはどうかという意見があり、西ノ島町食生活改善推進協議会のみなさまは「さっそく明日作ってみる」と意気込まれていた。

西ノ島町の漁港で水揚げの視察

2日目は西ノ島町の漁港の視察からスタートした。
定置網漁業で上がった魚などが水揚げされる風景や、入札の様子を見学した。
西ノ島町で獲れた魚は殆どが本土の境港で水揚げされる為、西ノ島町で水揚げされる魚は少ないが、西ノ島町内の宿泊施設の料理長や鮮魚店などが鮮度の良い魚を求めて入札に訪れる。

この日は西ノ島町を代表する海産物のひとつであるイカが少量獲れた為、プロトン凍結する下処理として神経締めをする様子を見学できた。

離島のハンディキャップをカバーする為、導入された「プロトン凍結機」
西ノ島町は離島の為、西ノ島町で水揚げされた海産物を島外の市場でセリに出す場合、保管期間や輸送期間が発生し、水揚げの2日後にセリに出すことになる。
そこで、西ノ島町では町で水揚げされた海産物を直接消費者に届ける為に、プロトン凍結機を導入している。
㈱日本海隠岐活魚倶楽部が施設の指定管理事業者として町と協定を締結し、主にイカや岩ガキをプロトン凍結して全国に発送している。
水揚げされたイカを下処理し、プロトン凍結する様子を見学させて頂いた。
料理人からは、現状イカや岩ガキしかプロトン凍結機が活用されていないことに対してもったいないという意見が出ていた。
「精肉やお惣菜などに関してもプロトン凍結機を活用すれば、町民の生活が変わるのではないか」と桂シェフは話す。

日本で初めて岩ガキの養殖に成功した「なかがみ養殖場」を視察
次に訪れたのは、岩ガキの養殖場。
西ノ島町は日本で初めて岩ガキの養殖に成功した町であり、その養殖に成功された中上光さんの養殖場を訪問した。
岩ガキの磨きやばらしの作業を見学し、その後養殖筏のある場所まで舟で移動し見学した。
コロナの影響でここ2~3年出荷予定だったものが出荷できなかったことなどもあり、今年は6年ものの大ぶりの岩ガキが多いとのこと。
「雨が降ると山の栄養素を吸った水が筏付近の入り江に流れ込み、ミネラル豊富な美味しい岩ガキができる」と生産者の中上氏は話す。

西ノ島町を代表するお土産品である「サザエ缶」の製造工程を見学
一同は㈱日本海隠岐活魚倶楽部の工場へ移動した。
ここでは、西ノ島町の人気土産品である「サザエ缶」が製造されている。
戦後から長年に渡り様々な町内の事業者がこのサザエ缶の製造を継承し、現在は㈱日本海隠岐活魚倶楽部が製造している。

このサザエ缶だが、製造の過程で肝の部分が廃棄されている。
肝の部分も何かほかに活用できる方法が無いかと、肝を試食したりサザエ缶を試食したりしながら料理人が意見を出し合った。
鮑の肝はよく肝バターとして使われている為、サザエの肝も肝バターにして使えるのではという意見が上がっていた。

また、こちらの工場はサザエ缶製造でしか稼働しておらず、使われていない機械等も多く存在する。「設備投資されて本格的に取り組んでいるが、サザエ缶しか作ってないのはもったいない。いい素材と知識があるので色々できると思う。」と梅津シェフは話す。

西ノ島町の郷土料理で昼食会
この日の昼食は、西ノ島町食生活改善推進協議会の皆様により西ノ島町の郷土料理が振舞われた。
前日の交流会で料理人が提案した「なめみそコロッケ」や「なめみそポテサラ」も急遽メニューに加わり、全8品の料理が提供された。

なめみそコロッケは、料理人のアイディアから生まれたものだが、西ノ島町食生活改善推進協議会の皆様も美味しいと大絶賛であった。
こういったものをプロトン凍結し、飲食店や弁当の店で販売できるようになれば更に住民や観光客に浸透していくという案も上がった。


サザエの肝の活用法、なめみその新たな楽しみ方についての協議
昼食後は、前日のなめみそ試食会や水産施設の見学を踏まえた上で、なめみそやサザエの肝についてどのような活用法、楽しみ方があるかについて協議を行った。
サザエの肝をなめみそに漬け込み珍味にするのはどうかというアイディアや、サザエの肝をペースト状にして肝チョコを作ったらどうかというアイディア等、3名の料理人それぞれの知見を活かしたアイディアが多数生まれた。

R5年度は、ここで生まれたアイディアを町民に周知して新たな食の魅力を知ってもらう活動を行っていく予定である。
魅力を知ってもらうためには動画として告知することも大切であり、ツアーの最初に視察した景観地でレシピ動画を撮影してはどうかという案が出た。
「訴求したい食べ物と絶景を掛け合わせることができれば、他では出来ないことが出来る」と梅津シェフは話す。

協議を終え、西ノ島町食生活改善推進協議会の方は「シェフの方々のアドバイスは違うなと思った。自分たちでも色々考えていたつもりが、新しいアドバイスが新鮮で、挙がったアイディアをかえってすぐ作りたくてうずうずしています。」と話した。

また、今回のツアーに終日同行していた西ノ島町役場産業振興課 課長の村上氏は「いいものがあるお話をいただいて、我々ここにいると当たり前でその価値や可能性に気づけないのを、今回の会で自信が持てるようになって、4月以降は西ノ島町のいいものがあるということを発掘して、食と観光の発展につなげていきたい。」と話した。

「CLUB RED×西ノ島町シェフツアー」参加者の感想

福嶋 拓
一番感じたことは、とてもいい場所であること、食に対して興味やパワーもあるというのが大きな印象でした。今後の活動にそこを外部からきた目線を入れて盛り上げていけたらいいと思いました。

桂 有紀乃
もっと色々食材に触れたり、みんなと一緒にお料理したいと思いました。料理人として作って食べてもらうところまでを実践したいです。

梅津 信吾
自然や岩ガキ、なめみそ、さざえ、天気も恵まれて、いい映像もとれて、知らないことを知ることができて勉強になりました。10月に向けても関わっていきたいです。

R4年度のシェフツアーを踏まえ、R5年度も引き続き西ノ島町×CLUB REDの活動は続く。R4年度に出た新しい西ノ島町の食の楽しみ方が、R5年度にどのような形で西ノ島町民に披露されるのかが、今から楽しみである。

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