2025年3月23日(日)、東京・有楽町にある「YAU CENTER」において、CLUB REDの野田シェフ(nôlディレクター、「RED U-35」2015・2019・2021の準グランプリ&GOLD EGG)が若者向けに講師を務めたGAKUの授業「限界美食論」における発表会「限界美食ピクニック」が開催されました。
(料理サポート:ホテル椿山荘東京 堀中翔太氏)
「GAKU」は、10代の若者たちが、クリエーションの原点に出会うことができる学びの集積地で、音楽、建築、料理、ファッション、デザイン、アート、映像など、さまざまなクリエイターや専門家と10代が向き合い、創作する授業を開催しています。
限界美食論
人が食べるものは、すべてこの地球が生んだものです。畜産やそのための森林破壊による二酸化炭素やメタンの輩出、生物多様性の危機、わたしたちが地球を食べ尽くす前に、これからの時代を拓く「美食」について考えることが必要なのではないでしょうか。
食の悦びを、口の中の現象としてだけで捉えるのではなく、心が、地域や風土が、動物や植物が、地球や未来が悦ぶものへ。そのように、美食の定義を押し広げて、その限界へと拡張する創造性が求められています。食のクラス「限界美食論」では、ミシュラン1つ星レストラン「nôl」が教室となり、「nôl」ディレクターの野田達也さんとこれからの時代を担う若手シェフとともに、美食と美食が引き起こす地球への影響について学び、メニューを考え、調理し、実食し、地球にも人間にも美味しい一皿を考案しました。
開催概要
<日程>
2024年11月24日(日)〜2025年3月2日(日)/全7回
<時間>
10:00〜12:30
<会場>
nôl(東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD Hotel 1F)
<対象>
中学生〜大学生(〜20代前半)
<募集定員>
10名程度
<料金>
無料
<主催>
GAKU
<協賛>
三菱地所株式会社
<メディアパートナー>
CLUB RED、Forbes Japan、WWDJAPAN、新建築
第1回 地球を傷つけない美味しさ
第2回 「食べること」が持つ地球環境や健康への影響
第3回 コンセプトメイク(自分にとっての美味しさ)
第4回 コンセプトメイク(次代を拓く一皿のレシピ)
第5回 一皿づくり(レシピのブラッシュアップ)
第6回 一皿づくり(提案としての一皿)
第7回 プレゼンテーション
限界美食ピクニック
3月23日(日)12:30〜14:30@有楽町YAU CENTER
授業にて生徒たちが開発した「これからの時代を拓く一皿」をフィンガーフードサイズで提供。ピクニックのように車座になり、ディスカッションや質問がしやすい環境で試食を実施。ただ試食するだけではなく、その一皿を通じて生徒たちが伝えたいと考える環境問題へのアプローチや想い、食材へのこだわり等を話し合い、来場者の生活に持ち帰ってもらいました。
当日の流れ
2024年11月から2025年3月まで7回に渡って行われた「限界美食論」の授業を通じて、生徒たちが考案したメニューを発表しました。
料理名:「和の輪」
気候変動で失われつつある「日本本来の季節感」をコンセプトに、四季の移ろいを感じてもらえるよう、春の情景をイメージした料理。日本の各地で作られた食材だけを使用し、輸入で発生する二酸化炭素を削減を目指したり、廃棄される予定だった食材や器を使用し、物の新たな価値の発見を表現。
料理名:「ホノオノニクパフェ」
「火」をテーマとし、人類が火を使い始めた歴史から現代の環境問題までを考察するきっかけを提供することを意図して考案。食材に猪と鹿の肉を選択。その背景は、子供の頃からお肉が大好きで常に主な食事はお肉がメインという参加者が直面した「食肉生産が多大な環境問題を引き起こす」というジレンマ。大好きな牛肉を食べたいけれど、食べるべきではないという複雑な心境に、環境保全や生態系のバランス維持にも貢献するジビエ肉を採用するという形で立ち向かった。牛肉も、「肉が硬い」「脂が黄色い」と敬遠され廃棄されてきた「経産牛」を使用。まさに、お肉好きな人のために考案された一品。どの層を食べても美味しくなるようパフェの考えをベースに調理。提供時には野菜チップスを燃やすという視覚的な演出と香りで、テーマを際立たせている。
料理名:「昼/海と山のラビオリ」「夜/星のムース」
「山と海と空」をテーマに、失われつつある風景のかけらを食を通じて体験し、その価値を再認識することを目的に考案。「昼/海と山のラビオリ」は島をイメージして作られており、中には海を綺麗にする効果のある海藻類が使われている。中には土の香りを表す椎茸や、爽やかさを出す行者ニンニクやレモングラスなどが詰められている。希望者には、昆虫食を体験する機会として地球を味わい、地球を冒険するレストラン「ANTCICADA」より提供されたイナゴを中に入れたものが提供された。「夜/星のムース」は、夜道をテーマにしたデザートで、夜道を歩く際に感じる五感の変化を表現している。
参加者のコメント
試食した感想
どれも品のある料理で、様々な素材の組み合わせが非常に巧みである。
全体の考え方に感動した。大人の固定観念を覆すような発想があった。
生徒たちの想いをシェフが具現化し、それを一般の人々が体験できることが素晴らしい。このような取り組みを是非継続させて欲しい。
試食を通して体がデトックスされたような感覚があり、未来への希望が見えた。
持続可能な食事というテーマについて深く考えさせられ、これからは代替肉やジビエといった今まで食べてこなかった食材も美味しく食べられる可能性がある。