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「2023年プレ北陸デスティネーションキャンペーン」 能登の豊かな食材と文化、温かい人情にふれるスペシャルプログラム

レポート 2023.11.02

能登の魅力を体感できるツアー

2024年3月に北陸新幹線が敦賀(つるが)駅まで延伸し、2024年10〜12月には国内最大級の観光キャンペーン「北陸デスティネーションキャンペーン」も開催予定で、今後ますます注目を集める北陸地方。豊かな食文化との出会いを楽しみに訪れる人が多い場所だ。

RED U-35の主催社である株式会社ぐるなびでは、総務省の「地域活性化起業人制度」を活用し、地域活性化企業人を石川県・能登半島七尾市に派遣。食や観光を通じた地域の活性化を自治体と連携しながら実施している。

今回、その一環として「一般社団法人ななお・なかのとDMO」の主催で、七尾市で活躍する“CLUB REDシェフ”3人がタッグを組んで、最高の食材を使った特別ディナーを提供するという、夢のようなモニターツアーが実施された。

舞台は、七尾市内の趣ある一本杉通りにある「一本杉 川嶋」。客前で料理の仕上げをする劇場型のレストランで、8名のみのカウンター席にこだわり、2年先まで予約が埋まっているという超人気店。特徴的な建物は国の登録有形文化財だ。
プレ北陸DC_2

料理を作るのは、「一本杉 川嶋」オーナーで和食の川嶋 亨シェフと、イタリアンの平田 明珠シェフ、洋食の黒川 恭平シェフの3人。
川嶋 亨シェフ(和食)

川嶋 亨シェフ(和食)

平田シェフは、能登の海が見えるオーベルジュのレストラン「Villa della pace(ヴィラ・デラ・パーチェ)」のオーナーシェフ。都内イタリア料理店で修業の後、2016年に七尾市に移住した。
平田 明珠シェフ(イタリアン)

平田 明珠シェフ(イタリアン)

黒川シェフは、和倉温泉で30年以上愛され続けている洋食「レストラン ブロッサム」のシェフ。フランスで修業後、両親が営む「レストラン ブロッサム」を受け継ぐべく七尾市に帰郷した。
黒川 恭平シェフ(洋食)

黒川 恭平シェフ(洋食)

この異ジャンルのシェフ3人が、CLUB REDの名の下に手を取り、地元を盛り上げたいという想いから今回のツアーが実現した。一体、どんな料理のコラボレーションが生まれるのか。期待で胸が高鳴る。

七尾の魅力にふれる街歩き

その土地の料理を楽しむためには、その背景にある歴史や文化を知ることも大切だ。参加者には今回の舞台となる七尾の歴史や一本杉通りの店々の人情に触れてもらうべく、食事の前に七尾市出身のフリーアナウンサー・平見夕紀氏のナビゲートで「ななお街歩き」を体験した。
「七尾が大好き」と言うフリーアナウンサーの平見夕紀氏

「七尾が大好き」と言うフリーアナウンサーの平見夕紀氏

七尾市は能登半島の中心に位置し、古くから海運交易で栄えてきた。約450メートル続く一本杉通りには50軒ほどの店舗が立ち並び、往時をしのばせる寄棟造の町家が多い。いくつかは国の登録有形文化財に登録されている。また一本杉通りでは「語り部処」と名付けられた、語り部マークのある店々では主人や女将、店員の語りを聞く、ふれあい観光が楽しめる。
花嫁のれん館
ツアーは「花嫁のれん館」からスタート。旧加賀藩の領地で幕末から続く、「花嫁のれん」を見学する。花嫁の嫁入りの際、婚家の仏間の前に花嫁のれんが掛けられ、それを花嫁がくぐり、仏前で手を合わせるという婚礼風習は、他にはない珍しいもので、現代にも受け継がれている。

「一生に一度しか使わないもので、絵柄にはさまざまな想いが込められています。婿入りには『花婿のれん』があり、こちらは絵柄が凛々しくなります」(平見さん)
花婿のれん
次に訪れたのは、能登産の厳選素材を使い木樽で醤油を仕込む「鳥居醤油店」。シックな建物は国の登録有形文化財だ。女将の鳥居正子さんによれば、全て手作業で醤油を造るところは全国でも珍しいそうで、仕込みからもろみを搾るまで、2年もの歳月がかかる。
鳥居醤油店
大豆も小麦も作り手の顔が見えるものを使うことを大事にしているという。大豆を蒸し煮する燃料は薪を使っているそうだ。
鳥居醤油店
続いて訪れたのは、和ろうそくを製造販売している「高澤ろうそく店」。歴史を感じさせる土蔵造りの店舗で、ここも国の登録有形文化財だ。
高澤ろうそく店
手作りの和ろうそくは、材料はすべて植物由来で、出る煤が少なく、安らぎを感じさせる揺らぎと温かみのある炎が特徴で、食事空間にも最適。高澤ろうそく店では「暮らしの中に、和ろうそくの灯りを取り入れて欲しい」と願い、伝統を守りながら、今のライフスタイルにも合う様々な和ろうそくも作っている。
店内
街歩きの締めくくりは、さまざまな昆布を販売する「昆布海産物處 しら井」へ。七尾は北海道で採れた昆布などを運んだ北前船の寄港地として栄え、古くから昆布が暮らしに根ざしている地域でもある。昆布は真昆布や羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布など、採れる場所によって形も味も値段も違い、使う目的によって使い分けるものだという。川嶋シェフはここの利尻昆布を愛用しているそうだ。
昆布海産物處 しら井
一本杉通りを盛り立てていきたいと考えている語り部たちの語りは面白く、平見さんとの絶妙なやり取りとともに、参加者の心をしっかりと掴んでいた。

お待ちかねの料理体験

街歩きの後、買い物などの自由時間を経て、今回のツアーのクライマックスの舞台「一本杉 川嶋」へ。カウンターに高澤ろうそく店の和ろうそくが灯る中、参加者がカウンター席につき、いよいよ食体験がスタート。今回4組8人がモニターとして参加した。
中央に和ろうそくが灯る

中央に和ろうそくが灯る

異なるジャンルの3人のシェフの合作で1つのコースを作り上げるという特別なメニュー。そのメニューに合わせて、ソムリエエクセレンスの塩士 卓也氏がワインを中心に能登の日本酒も含めて、全部で8種類の酒を用意した。
塩士 卓也氏(ソムリエ)

塩士 卓也氏(ソムリエ)

最初にアミューズの和ろうそくをモチーフにしたお菓子が運ばれてくる。街歩きからのシンクロに、脳内シナプスが刺激される。
アミューズの和ろうそくを模したお菓子

アミューズの和ろうそくを模したお菓子

ほどなくして1品目の「サンマルツァーノ 胡麻」が登場した。これは平田シェフ(イタリアン)と川嶋シェフ(和食)の合作。国産の小麦粉を使ったスパゲッティに、能登産のサンマルツァーノというイタリア品種のトマトを使ったソースと、粉チーズの代わりに、煎りたて擦りたてのゴマをかけ、和食の技法によってトマトの酸味とうま味を引き上げている。
「サンマルツァーノ 胡麻」

「サンマルツァーノ 胡麻」

「なるほど、異ジャンルの料理人のコラボとはこういうことか!」と驚かされ、この先の展開への期待が膨らむ。

2品目の「蛸 金糸瓜 パプリカ 空心菜」は和の器に盛り付けられ、一見和食に見えるが、平田シェフのイタリアンのテイストが冴えた一品。日本料理が大切にする五味五感を一皿に盛り込んでいる。
目の前でシェフたちが料理を仕上げていく劇場型スタイルでお客さんを魅了

目の前でシェフたちが料理を仕上げていく劇場型スタイルでお客さんを魅了

3品目は「藻屑蟹(もくずがに)トリュフ」。良いモクズガニが手に入ったということで、モクズガニの真薯(しんじょ)を入れたお椀だ。汁は利尻昆布を使用した一番出汁に、黒川シェフ(洋食)のコンソメスープをブレンドしている。アクセントにブラックペッパーを少々、スペシャルということで豪快にトリュフをたっぷりとトッピング。
「藻屑蟹 トリュフ」

「藻屑蟹 トリュフ」

料理の概念を覆しつつも、その完成度の高さにはため息が出る。紙のように薄い木地の輪島塗のお椀にも注目で、職人が意地で作った大変貴重なものだそうだ。

4品目「造り クエ アオリイカ」を経て、登場したのが「マンキ鰹藁焼き 春菊蕾」。鰹を目の前で藁焼きするのは「一本杉 川嶋」の名物だ。川嶋シェフと黒川シェフが刈ってきた自然栽培のコシヒカリの藁を使い、「藁焼きの煙から能登の田舎の香りも感じていただければ」と川嶋シェフ。
「マンキ鰹藁焼き 春菊蕾」

「マンキ鰹藁焼き 春菊蕾」

ポン酢には「鳥居醤油」の醤油や「昆布海産物處 しら井」の昆布を使用し、街歩きで見聞きした醤油造りや昆布の知識が、まるで「隠し味」のようになって、味わいに深みを与えてくれる。
3人の息はぴったり

3人の息はぴったり

3人のシェフが腕を振るった一皿

和食とイタリアンの技法が合わさった箸休めの「白酢和え シャインマスカット バジル」の次に登場したのが、焼き物の「ハンバーグ 本州鹿 猪」。今までの一皿は2人のシェフの合作だったが、これは3人で作った一皿だ。
「ハンバーグ 本州鹿 猪」

「ハンバーグ 本州鹿 猪」

平田シェフ(イタリアン)が作ったマッシュポテトの上に、黒川シェフ(洋食)が作ったハンバーグがのせられる。ハンバーグの肉はジビエにこだわる平田シェフが提供した猪肉や鹿肉を使用。ジビエ特有の獣臭さは全く感じない。ハンバーグの上にかけられた山椒ソースは川嶋シェフ(和食)が手がけ、山椒の香りが能登の里山を思い浮かべさせてくれる。

その後も、輪島でとれた毛蟹をたっぷりと使った「クリームコロッケ 毛蟹」、伝助穴子の揚げ出しと能登の伝統野菜の沢野ごぼうを使った煮物代りの「穴子揚出し 天然茸 沢野ごぼう」と、テンポよくコースが進み、最後に、自然栽培の新米コシヒカリと、黒川シェフ(洋食)がピクルスをベースに新米に合うように醤油などで味を整えた漬物、川嶋シェフ(和食)が作った赤だしの汁が並んだ。
炊き立てのご飯が食欲を誘う
炊き立てのご飯が食欲を誘う

汁には平田シェフ(イタリアン)が作ったトルテリーニ(パスタ)が入っているのに驚く。トルテリーニには豆腐とチーズのクリームが詰めてあり、意外な組み合わせだが、赤だしとの相性は抜群だった。

最後に提供されたのが、平田シェフ(イタリアン)が作ったアイスの上に能登の木の実を散らした「無花果パフェ」と、黒川シェフ(洋食)による能登大納言の餡がたっぷり入った「マドレーヌ」のデザート。全てが特別で驚きの連続だったこの料理体験を、やさしく締めくくってくれた。
「無花果パフェ」

「無花果パフェ」

一皿一皿饗するたび、シェフがその料理に込めた想いや苦労談などを説明してくれ、その話が面白くて笑い声が絶えない。シェフらと客の距離がとても近い、アットホームな食事会となった。
食事会
作り終えてのシェフたちのコメント

「コラボというのは尊敬できる人とでないとうまくできません。自分の使わない食材だとか、組み合わせも多く、自分の料理の中にも取り入れたいと思う新たな発見がたくさんありました」(川嶋シェフ)

「この距離感で料理を作れたこと、そして皆さんの喜んだ顔が見られたということが、自分にとってもいい経験になりました」(黒川シェフ)

というように、シェフたちにとってもバージョンアップしていく良い機会になったようだ。苦労したことを聞くと、「3人とも忙しくて仕事が終わってから打ち合わせをして帰るのは夜中の4時になったこともあった」(黒川シェフ)と話す。
シェフ
「茶懐石の流れをベースに、料理の大まかな構成は事前に作っておいて、その流れの中で、何ができるか、どこの部分で自分の特色が出せるかということを、3人で話し合って決めていきました。具体的に使う食材を決めたのは直前になってからです」(平田シェフ)

「お客様ファーストで考えた時、その時に1番ベストな食材で最善を尽くすというのが、おもてなしとかご馳走という意味なのかなと思いますので、直前にバタバタするのは苦になりませんでした。ソムリエさんは大変だったと思いますが・・・」(川嶋シェフ)
店舗
スペシャルな七尾が旅のいい思い出に

参加者のアンケートでは、料理内容には全ての人が「大変満足」と評価し、中には「これまでシェフのイベントには、いくつか参加したことはあるが、その中で一番良かった」という感想も聞くことができた。
一本杉通りを歩き、平見さんや女将さんたちの話から、七尾の魅力も大いに感じられたようで、記憶に残る旅になったに違いない。

今まで経験したことがない、衝撃的な味の出合いが連続したこのコース。能登や七尾を愛し、その魅力を料理から伝えたいという同じ思いを持つ3人だからこそ、創り出すことができたコースだった。また、それが出来上がるまでのストーリーを聞きながら食す料理や酒は、「美味しい」以上に心まで響く。

能登の食材は四季折々に豊かであり、別の季節にこの3人が創り出す、「能登」が楽しみだ。
シェフ

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