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海外組CLUB REDたちへのインタビュー[Part 2]

小川苗 Hawaii/山本拓明 Rotterdam/川野將光 Singapore/市原沙織 Stockholm

INTERVIEW 2020.08.19

【海外組CLUB REDたちへのインタビュー】Part 2

異国で暮らす料理人に訊く。
「料理人として」&「一人の人間として」いまどう生き抜いていますか?
~若手料理人たちがコロナウイルスの影響でリアルに感じていること、これからのこと~


CLUB REDの強みのひとつは、海外在住の日本人料理人が多数いることです。世界各国で働くシェフたちがいまどう生きているのか、そのリアルな声と視点を集め、共有することにによって、コロナ時代を生き抜くためのヒントを提供できればと思っています。

料理関係の方も、それ以外の方々も、若手料理人たちがそれぞれの環境下で感じた声に、ぜひ耳を傾けてみてください。

 
■ 小川 苗|Nae Ogawa(Hawaii)

名前:小川 苗
在住:アメリカ ハワイ
所属:Paris.Hawaii.
役職:スーシェフ
年齢:28歳
回答日:2020年8月12日

――アナタの暮らす国・地域はどこですか? 最近はどんな日々を送っていますか?

アメリカ、ハワイ州オアフ島に住んでいます。ハワイがロックダウンした3月半ばから3ヶ月間日本に一時帰国していました。この数ヶ月ハワイでのロックダウン、日本での緊急時代宣言、ハワイへの復路便の欠航、2週間隔離、PCR検査、、様々な経験をしました。7月に経由便を使いハワイへ戻り、レストランの営業を再開したものの8月現在感染者数は増加しており、営業的には厳しい状況ですが、そんな中でも来てくださるお客様を大事に、そして私自身健康に今日を過ごせていること、ハワイの自然に感謝しながら1日1日を大切に過ごしています。

――いまのアナタの仕事とは? それはどのような打撃を受けていますか?

ホノルル、ワイキキにあるレストランでスーシェフをさせていただいています。3月中旬、ハワイはロックダウンし、スーパー等の生活に必要不可欠な店を除く全ての店舗の閉鎖命令、外出禁止というアメリカの厳しい法令が出ました。私の働くレストランも3ヶ月以上ののクローズを余儀なくされ、7月から営業を再開をすることができたものの、他国からの便はまだなく、他の州からのフライトには2週間の隔離要請、つまり観光客の来なくなったワイキキはゴーストタウンと化し、孤立した島は異例の光景が今でも続いています。島の80%の人が観光業(間接部門を含む)に関わっているといわれるハワイ経済は危機的状況に直面しています。

――「料理人として」どうやって生き抜いていますか?

料理人であることの根本に、人を喜ばせたいという想いがあると思います。外食が難しくなった今、まずは、自分の周りの人たちを喜ばせることを大切にしたい。帰国中は普段会えない家族や友達に沢山料理を振る舞いました。そして、学校に行けない子供達に毎日3食作らなければいけない主婦の方達の為の簡単で時短な料理、逆に自宅で時間があるからこそ挑戦してみたい凝った料理、運動不足や免疫力低下を心配されている人への健康で栄養のある料理を提供するなど、私もまだ試行錯誤中ですが、今回コロナで状勢が変わったことで、より個々の、人に寄り添う料理を意識するようになりました。

――「一人の人間として」どうやって生き抜いていますか?

今回の世界的パンデミックで感染し、命を落とされたたくさんの方達にご冥福をお祈りします。RED U-35 2019ファイナルのスピーチでも話させていただきましたが、この社会を私たちは日々のタスクをこなすように生きているような、生命感が薄れてきているように感じていました。命をもっと意識したい。そして生かされているこの世界はどうあるべきか、どんな世界にしていきたいか。考える機会すら与えないほど、現代社会はめまぐるしく過ぎて行ってはいなかったでしょうか。

全世界が同じタイミングで同じ問題に直面している今、私たちは一度足を止め、世界全体を見渡すことが必要なのではないかと思います。そうしたら、この地球が抱えている問題もおのずと見えてくるのではないでしょうか。感染が蜘蛛の巣状に広がっていくのを見て世界が繋がっていることもわかったはずです。より良い世界にしていこうという想いも、同じように感染していけばと思います。

――アナタの暮らす国・地域の対応や人々の行動を見て、感じたことを教えてください

私は今までに4つの国と地域に住み、住む場所によって自分の生活が全く変わることを身をもって痛感してきました。それはその国の政治的にも、そこに住む人々によってもです。

今回、3月から3ヶ月間日本に一時帰国していたため、ハワイの状況、日本の状況、その両方をこの目で見て、国ごとの対応、流れるニュース、人々の温度差がこんなにも違うのかと衝撃を受けました。

厳しい措置をとったアメリカの中でもハワイは孤立した島。観光業を主な職とするこの島は物凄い失業率。それでも島の住民たちで「support local」と手を取り合って、応援し合う前向きな姿が見受けられました。閉鎖されて真っ暗なリゾートホテルの窓に「ALOHA」と点灯されたり、「STRONG HAWAII」などのメッセージを街で見かけたり、ハワイの人の優しさと力強さを感じ、改めてこの島が好きになりました。

――料理人は、今後どう変わっていくべきだと思いますか?

今回、沢山の店舗を構える飲食店が打撃を受けました。しかしレストランだけが料理人の活躍場所ではないということにも気づかされたのではないでしょうか。

コロナ前にもそのような傾向はありましたが、今回を機に更に、色んな方向へ料理人が動きやすくなったように感じます。レストランのキッチンだけに留まらず、もっと身軽に動くというのも一つの形としてあって良いのではないかと思います。更に、自粛中SNS等でレシピを公開してくださったシェフの方達がいらっしゃいましたが、そんなふうに、料理人たちが知識をどんどんシェアし合ったら、他の地域と、あるいは他の国々とぐっと距離を縮めることもできるのではないかと思います。「家から出られないからあのお店の味を自宅で」の延長線で、遠くの国で今人気の料理が、次の日、地球の裏側で食べれるかも知れないのです。

生きることと切り離せない”食”に携わっている限り、料理人という職業がなくなることはないので、形を変えてその時代の人々に寄り添った料理を作って行きたいです。美味しいものを食べたいと思っている人に美味しいものを作りたい。結局はただそれだけなので。

――コロナが落ち着いたらやりたいこと、挑戦してみたいことは?

ステイホームでリモート飲みが流行り、私も何度か参加させてもらい楽しい時間を過ごしましたが、その一方で、どこか人間としての寂しさを感じました。やはり相手を見れて話せればいいだけではなく、人々が同じ空間に集まることで生まれるエネルギーのようなものがあると思います。好きな人たちと食卓を囲み、同じ料理をシェアして「これ美味しいね」と会話が弾む。そんな日が早く帰ってくることを祈っています。
そして大好きな旅行に行きまくりたいです!

 
■ 山本 拓明|Hiroaki Yamamoto(Rotterdam)

名前:山本拓明
在住:オランダ王国 ロッテルダム市
所属:Japanese Cuisine Yama 日本料理やま
役職:オーナーシェフ
年齢:36歳
回答日:2020年8月15日

――アナタの暮らす国・地域はどこですか? 最近はどんな日々を送っていますか?

オランダには約17年住んでいます。アムステルダムに約8年、現在は私の店のあるロッテルダムに9年目となります。今年3月半ばにロックダウンとなり、すべての飲食業が閉鎖されましたが、6月からは少しずつ緩和され多くの飲食店がソーシャルディスタンスや人数制限などの規制に沿ってオープンしています。

当店の場合、ロックダウン前にすでに8月末まで予約がすべて埋まっていたのですが、カウンターのみの店のため安全なソーシャルディスタンスを保つことは不可能であると判断し、すべての予約を断わりテイクアウトのみで営業をしてきました。しかし、9月からは16席を半分の8席に変更し営業を再開する予定です。

――いまのアナタの仕事とは? それはどのような打撃を受けていますか?

現在は臨時的にテイクアウト(弁当・寿司)販売のみを行っています。外食をまだ好まない人たちも多く、また日本人料理人はロッテルダムでは私しかいないためテイクアウトは順調です。当店の予約は席数も少なく、予約がなかなか取れない店で有名で、常に数か月のウェイティングであったため、気軽に注文できるテイクアウトは人気となり、多くの注文をいただいています。

――「料理人として」どうやって生き抜いていますか?

テイクアウトではなかなか料理人としてチャレンジできる内容は難しいため、地元の他の店とのコラボレーションをしてこちらのシェフたちと互いに刺激を受けあっています。また、他店とのコラボによって全く新しい客層に日本料理の紹介をしています。

――「一人の人間として」どうやって生き抜いていますか?

「利他の心」に近づけるように精進しています。 

――アナタの暮らす国・地域の対応や人々の行動を見て、感じたことを教えてください

コロナ禍によって経済的な打撃をうけている人々はオランダにもたくさんいます。しかし、政府は明確な規制を打ち出すと同時にきちんとした補償もセットで提供し、数日でその補償を受けられる体制をとっているため、今のところ経済的な不安はあまり感じることなくきています。日本の九州ほどしかない小さな国オランダですが、弱者を守ってくれる素晴らしい国で、心より感謝しています。

――料理人は、今後どう変わっていくべきだと思いますか?

どんな環境にいても何事にも対応できる柔軟性、広い視野を高めていく必要があると感じます。

――コロナが落ち着いたらやりたいこと、挑戦してみたいことは?

まずは、一時帰国をして、日本の家族に元気な姿を見せることです。そして、共同経営者でもあるパートナーとともにまだ訪れていない世界の国々を旅し、その経験を通して料理以外のことも学び、視野を広げていきたいです。40歳になるまでにミシュランの星をとるため日夜挑戦しています!

 
■ 川野 將光|Masahiko Kawano(Singapore)

名前:川野將光
在住:シンガポール
所属:béni
役職:シェフ
年齢:36歳
回答日:2020年8月14日

――アナタの暮らす国・地域はどこですか? 最近はどんな日々を送っていますか?

シンガポールで暮らしています。6月20日まで約2ヶ月間のサーキットブレーカーでした。サーキットブレーカー期間中のレストランの営業はテイクアウトのみの営業でした。今はレストランの営業はできていますが、お店やショッピングモールに入る際はパスまたはスマートフォンのアプリを使ったチェックイン・チェックアウトが義務付けられています。いつどこで誰が施設に出入りしたかをしっかり管理し、コロナウイルスの蔓延を防ぐ対策を政府が指揮をとり、おこなわれています。もちろん外出の際はマスク着用が必須になっています。違反した際には罰金がありますので、マスクを着用していない人は街では見かけません。

――いまのアナタの仕事とは? それはどのような打撃を受けていますか?

今まで以上にお客様に対する衛生管理を徹底し、スタッフの体調管理を今まで以上に行って、お客様が安心・安全で楽しく食事をしていただく空間をつくる義務があります。
打撃としては、世界中から仕入れている食材のコストが今までより上がっています。飛行機の減便で輸送コストが上がっているためです。

そのほかにもレストランを営業していくルールがいくつかあります。「1グループ5名以上にならない/お客様の使用する物をシェアしない(メニュー、塩、胡椒など)/レストランに入る際は検温をする/テーブルセッティングはしておかない」などです。

――「料理人として」どうやって生き抜いていますか?

レストランに来ていただいているお客様にしっかり満足感を持っていただけるように考えています。また自分の体調管理には今まで以上に気を使い、しっかりとお客様をお迎えできるように心がけています。

――「一人の人間として」どうやって生き抜いていますか?

常に前を見て歩く事を心がけています。今は色々な事が制限されていますが、その先の未来を見据えしっかり準備する時間だと思い、今後のために今できることを少しずつ進めています。

――アナタの暮らす国・地域の対応や人々の行動を見て、感じたことを教えてください

シンガポール政府がわかりやすく指示を出し、国民1人1人がそれを順守し、今できる対策をしっかりおこなっているという印象を受けました。

――料理人は、今後どう変わっていくべきだと思いますか?

今回のコロナの経験で、時代に合わせ柔軟な発想を持てるようになっていかないといけないと思いました。お客様が求めている物を鋭く見抜き、更にお客様の期待値を超えていくために自分自身にできる事を瞬時に考え行動に移せる力がないと今後の料理人としては生きていけないのかと、感じました。

――コロナが落ち着いたらやりたいこと、挑戦してみたいことは?

コロナ前までは当たり前にできていた、他の国に訪れたり、いろいろな文化、料理、食材に触れて、もっとたくさんの経験を積み、その経験をいかし、今までは思いつかなかったような食材の組み合わせ挑戦し、より一層お客様の心に響く料理を作れるようになっていきたいです。

 
■ 市原 沙織|Saori Ichihara(Stockholm)

名前:市原沙織
在住:スウェーデン ストックホルム
所属:ICHI
役職:クリエイティブ・エグゼクティブ シェフ
年齢:31歳
回答日:2020年8月16日

――アナタの暮らす国・地域はどこですか? 最近はどんな日々を送っていますか?

スウェーデンのストックホルムです。近隣諸国の中で唯一ロックダウンをしない方針をとったスウェーデンですが、ここ最近は短い夏を楽しむべく外出する人が多いです。街中ではまるで何ごともないかのような雰囲気です。

――いまのアナタの仕事とは? それはどのような打撃を受けていますか?

レストランの営業は続けつつ、自己責任でお客様も外での飲食を控えておられる方々がおおかったので、先月まではテイクアウトや夏休み期間はカジュアルなテーマを設けてそれに応じたメニュー作りをしていましたが、売り上げはずいぶん下がりました。

――「料理人として」どうやって生き抜いていますか?

人件費を含めたコスト削減のため最小限の人数と限られた時間の中でレストランの経営に挑まなければなりませんが、プロとして効率性や生産性を改めて考えながらも今までのクオリティーを落とさないこと、来てくださるお客様の期待に答えることに集中し、安全を考えながら何よりチームで団結して楽しんで仕事することを心がけています。

――「一人の人間として」どうやって生き抜いていますか?

コロナが広がり始めて大騒動になった時はいつ、何が起こるか分からない世界なんだと衝撃を受けましたが、それを念頭において1日1日を大切に過ごすように心がけています。また、自分自身がどう生きていきたいかを改めて考えながら過ごしています。

――アナタの暮らす国・地域の対応や人々の行動を見て、感じたことを教えてください

冷静だな!というのが第一印象です。また、自分達の選んだ政府がとる決断を信頼している人が多いのだと感じました。日本の決断や指針を批判的に見てしまいますが、私自身もそうですし、若い世代が特に選挙に関心を持ったり自分たちを代表する政府を選ぶことの大切さに目を背けて来たという事実を考えるととても恥ずかしく思いました。

――料理人は、今後どう変わっていくべきだと思いますか?

今回のコロナのような病疫や、自然災害、なにが起こるか分からない世の中ですが、料理だけではなく経営においても臨機応変に対応していける頭の柔らかさを持っていなければならないし、また時にはライバルともなり得る他店とでも力を合わせて助け合いながら業界を動かせるネットワークと器の広さを備えていかなければならないと思います。

また、一生懸命に働くことは大事だけれど料理に埋もれるだけではなく社会に目を向けることを若い世代にも伝えていかなければならない。視野を広げることで人としても料理人としても作るものが変わってくると思います。

――コロナが落ち着いたらやりたいこと、挑戦してみたいことは?

今回のコロナで色々考え、日本で何か全く新しい発想のお店を出してみたいと漠然ですが考えています。

 
▶︎ 海外組CLUB REDたちへのインタビュー[Part 1]はこちら

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