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【日本博×CLUB RED Labo#1】郷土料理を、若手精鋭料理人が学び、創り、発信する!新プロジェクトがスタート

LABO 2020.10.09

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う「日本博×CLUB RED 日本を旅するダイニング in 東北」ダイニングイベント開催中止のお知らせ
▶︎ 詳細はこちらをご覧ください https://www.redu35.jp/nihonhaku-clubred

【日本博×CLUB RED Labo#1】
郷土料理を、若手精鋭料理人が学び、創り、発信する!日本博×CLUB REDの新プロジェクトがスタート

歴代のRED U-35コンペティションにおいて優秀な成績をおさめた若手料理人と歴代の審査員が集うコミュニティであり、食のクリエイティブ・ラボである「CLUB RED」。今回、文化庁と独立行政法人日本芸術文化振興会が主催する展覧会や舞台公演などの体験型プログラム「日本博」の一環として、CLUB REDのメンバーが日本の郷土料理の魅力を発信するプロジェクトを展開していくこととなった。

日本が誇る郷土料理を
精鋭のシェフが再構築

文化庁と独立行政法人日本芸術文化振興会が主催する「日本博」は、「日本人と自然」をテーマとして日本全国を舞台に文化芸術を展開している。縄文時代から現代まで続く「日本の美」を国内外へ発信し、文化継承することでさらなる未来の創生を目指した取り組みだ。

この一環として、若い世代を代表する料理人である「CLUB RED」のメンバーたちが、日本の食文化を未来に繋いでいくプロジェクトがスタートした。

テーマに掲げたのは、「郷土料理」。郷土料理とその周辺文化を学び、次世代の郷土料理へと昇華させる。

自然の恵みを受けてできた各地域の産物を使い、歴史と共に受け継がれてきた地域固有の食文化「郷土料理」。その魅力を次世代へ継承し、単なる料理としてではなく、文化として認識してもらうため、歴史的建造物などと同じ空間で「郷土料理」を「美」として提供していくという。


舞台は東北地方!
東北出身のシェフ6人が集結。

舞台となるのは東北地方。
東日本大震災から10年の節目に、CLUB REDの若手たちが東北の郷土料理に挑む。イベントの会場は、山形県庄内地方。古くから山岳信仰の聖地として全国より多くの修験者、参拝者が詣でてきた出羽三山神社(月山、羽黒山、湯殿山)のうち、羽黒山神社参籠所 斎館に決まった。
この場所で来年2月に一般客に向けて行うダイニングイベントに向けて、学びと創造の会としてのラボを3回実施していく。

そして今回のプロジェクトにCLUB REDからは東北出身の6名の料理人が挑戦することとなった。
メンバーは、
酒井研野氏(青森県黒石市出身/日本料理/京、静華<京都府>)、
菅田幹郎氏(岩手県遠野市出身/イタリア料理/おのひづめ<岩手県>)、
成田陽平氏(青森県弘前市出身/日本料理/菊乃井本店<京都府>)、
早川光氏(秋田県鹿角市出身/イタリア料理/XEX東京 Salvatore Cuomo Bros.<東京都>)、
廣川拓渡氏(新潟県新発田市出身/フランス料理/イーストギャラリー<東京都>)、
福嶋拓氏(山形県米沢市出身/中国料理/Turandot臥龍居<東京都>) だ。

※カッコ内は、出身地、専門ジャンル、現在の所属店(地域)


豊かな自然と独特の自然観が
伝統の食文化を育む

2020年9月23日、まずはキックオフとして「Labo#1 勉強の会」をオンラインで開催。日本人の伝統的な食文化である和食のユネスコ無形文化遺産登録に尽力した国立民族学博物館名誉教授・熊倉功夫氏が登壇し、和食と郷土料理について講義を行った。

熊倉氏は初めに、日本人にとっての”料理の原点“について言及。「自然のものを食べることはどこの国でも尊重しているが、日本人の自然観は、世界のそれとは異なる。八百万(やおよろず)の神という言葉があるけれども、木・川・花など、自然にあるものに霊的なものが存在すると考えるのが、日本人の特徴なんです」と語り始めた。

「春の時期に行う花見は桜以外の木の下では行いませんよね」と熊倉氏。日本人にとってサクラは特殊で、“サ=農耕の神”、“クラ=坐で、います所”の意味があり、山から下りてくる神様を、農耕が始まる時期に食事やお酒でおもてなしするための宴が、花見の起源となったという。「花見をはじめ、正月のおせち料理など、日本の年中行事や食文化には神迎えのもてなしが根付いています。これから皆さんが取り組んでいく郷土料理の再構築にあたって、大切な原点になると思います」と話してくれた。

続いて「郷土料理」については、日本各地で郷土料理を食べる文化が希薄になっていると分析。また食べられていても観光化されていて、地元の人はほとんど食べていないのではと熊倉氏は言う。「情報と物流の発展により、手軽さ、便利さ、安価さが重宝されて、郷土料理というものが成立しにくい時代。また“個食”という言葉が一般化されているように、時間や場所など家族みんなが同じ食卓を囲むことも少なくなったことも関係しているのではないかと思います」(熊倉氏)。

在来作物や加工品を見直し、
現代の感性を添えてほしい

そんな日本の郷土料理に、今回新たに挑戦するにあたって、まず注目すべきは地域固有の食材だという。「山、里、海、川の検証をしていくこと。また在来の加工品についても、東北ならではの文化があるのでぜひご確認ください」と例にあげたのは、「すまし」と言われる液体調味料だ。味噌と水を布袋に入れて濾した液体で、醤油のように野菜の汁ものやうどん、煮物などの味付けなどに使われていたものだ。このすましの文化も現在失われつつあるという。

また「自分の出身地の料理だけではなく、広い目で見て地域的な広がりを確認することも大切」とも語る熊倉氏。同じ県でも、内陸部と海岸沿いで食べられているものは全然違う。その一方で、粥の汁・けの汁など呼び方は違うものの中身は同じで、青森、秋田、岩手で広く親しまれている料理もあるという。

さらには多くの人に美味しいと思わせるには「物語性」も忘れてはならない。料理を美味しいと感じさせるには、味だけではなく、おもてなし、器、雰囲気など、人間の感性に触れるような要素が必要だ。「郷土料理にどうして結びついたのかを深堀りすると必ず物語があります。その物語が縦糸になり、料理法が横糸となって、多くの人を感動させる説得力のある料理が生まれるのではないでしょうか」(熊倉氏)。

「『名物にうまいものなし』という言葉がありますが、郷土料理=おいしくないというイメージがあるのも事実。今回のプロジェクトではみなさんが郷土料理を再発掘しながら、今のセンスを付け加える、そして物語を添えることで、新たな郷土料理ができるのではと期待しています」と熊倉氏は締めくくってくれた。

熊倉氏の講義を熱心に聞き入っていた料理人からは、「非常にためになる話を聞けた」「郷土料理は家族やコミュニティの絆に結びついているということを実感した。ぜひその一助になれる料理を作りたい」などの感想が次々とあがった。また「すまし調味料以外になくなってしまった調味料も他にあるのでしょうか?」という問いかけには、熊倉氏からは、味噌の表面からとる「たまり」や、魚介類を原料にしたしょっつるなどの「魚醤」を例にあげて答えてくれた。


タラの文化、発酵や保存技術など
東北固有の食文化をプレゼンテーション

次のターンでは、料理人6人が自身の地元の郷土料理を順番にプレゼンテーションを行った。トップバッターの酒井研野氏は、青森県の「じゃっぱ汁」をピックアップ。

青森の冬を代表する魚・タラのじゃっぱ(アラ)と野菜などを煮込み、塩や味噌で味付けした、厳しい青森の冬に欠かせない料理だという。

岩手県遠野市の菅田幹郎氏は、農作物が育ちにくい厳しい環境から生まれた、塩を使った保存法や吊るす技術について語った。

青森県弘前市出身の成田陽平氏は、雪が降る前に収穫した魚や野菜を保存することでできた、マダラや山菜の加工品を使った郷土料理を紹介した。

秋田県鹿角市出身の早川光氏が取り上げたのは「きりたんぽ」。その昔マタギの保存食であったという由来に始まり、隣の大館市が取り入れた比内地鶏の投入により、一気に全国的に知名度が広がったことなどを語ってくれた。

新潟県新発田市出身の廣川拓渡氏は、お盆や正月といったハレの日に食べられる家庭料理「のっぺ」と、自身のソウルフードである「南蛮味噌の焼きおにぎり」を紹介。

山形県米沢市出身の福嶋拓氏は、名物の「鯉のうま煮」を、鯉の養殖が導入された背景など歴史的な観点から説明した。

熊倉氏は「保存する技術、タラを食す文化、添え物ではなくおかずとして食べる汁の文化は、東北固有のもの。これらが現在も生きていることに大変興味深く思いました」と料理人のプレゼンテーションを熱心に聞いたよう。

また各料理人からは「厳しい冬を食いつなぐための料理だったが、今だからできる料理があるのでは?」(成田氏)、「元々あった料理を別の角度から見直して進化したものを作りたい(福嶋氏)、「発酵は、今シェフの間で流行しているキーワード。東北で培われてきた技術が今回のテーマの一つになりそう」(酒井氏)、「旨味が増す東北固有の保存や発酵技術を使いたい」(菅田氏)、「地元の人が知らない料理で、地元の人に郷土料理を再認識してもらいたい」(廣川氏)、「在来食材にフォーカスして、物語のあるコースを作れたら」(早川氏)などの声が上がった。各々のプレゼンテーションが、創作意欲に火をつけたようで、熱いディスカッションが繰り広げられていた。


山形県鶴岡市の生産者を探訪し
さらなる学び・発見・創造へ

勉強の会の最後では、10月中旬に開催される「Labo #2探訪の会」について話し合う時間も設けられた。

次回の訪問先をコーディネートする鶴岡食文化創造都市推進協議会の小野愛美さんが登場。
鶴岡市は国内では唯一「ユネスコ創造都市ネットワーク食文化部門」に認定されている食文化の豊かな街。1400年続く出羽三山の精進料理や600年受け継がれる黒川能の凍み豆腐、大黒様のお歳夜膳などに育まれた歴史ある食文化や、60種類もの在来作物が今も生活の中で息づいていることをはじめ、山、里、海の各地域で特色の異なる食文化や塩蔵や乾燥による冬の保存食について紹介した。

10月のプログラムでは、地元の料理人も加わり、山や海の生産者を訪問したり、塩蔵貯蔵庫を見学したりするなど充実の内容。料理人たちからは「いいものが作れるように真摯に取り組みたい」「知らないことがたくさん。地元の人と協力してやっていきたい」「違うジャンルの料理人とコラボできるのが楽しみ」「皆さんに会えるのを楽しみにしています!」などの言葉が出るなど意欲ががぜん高まった様子だ。

こうして「Labo#1 勉強の会」は幕を閉じた。続いては10月の山形県へと舞台を移す。様々な訪問を通じて、CLUB REDメンバーたちはどんなことを学び、吸収し、そして創造していくのだろうか。「日本博×CLUB RED」はまだ始まったばかり。精鋭の料理人が、次世代の郷土料理へと昇華させるプロジェクトの、次なるリポートに期待してほしい。

※About
日本博 Japan Cultural Expo 縄文から現代まで続く「日本の美」
「日本博」は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、総合テーマ「日本人と自然」の下、日本全国で日本の文化芸術に流れる「日本の美」を国内外へ発信し、次世代に伝えることで更なる未来を創生を目指す文化芸術の祭典です。日本各地で行われる日本博が、人々の交流を促して感動を呼び起こし、世界の多様性の尊重、普遍性の共有、平和の祈りへとつながることを希求します。
主催:文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会
https://japanculturalexpo.bunka.go.jp

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