
新潟県南部に位置する南魚沼市。
越後の山々の雪解け水に育まれたコシヒカリ、清らかな水で仕込まれる日本酒、
そして長い冬を越すために培われてきた保存食や発酵の知恵。雪国ならではの暮らしの中で、この土地独自の食文化が受け継がれてきました。
南魚沼市では、こうした地域の魅力を「ゼッピン雪国宣言」として発信。南魚沼市の食などを軸に、観光戦略を推進しています。
その取り組みの一環として実施されたのが、CLUB REDの3名を招いた2泊3日の産地ツアー。生産者や地元料理人の声に耳を傾けながら、
雪国の食文化と食材の可能性を体感し、新たな料理の創出につなげる試みです。
ツアーの最後には、CLUB REDメンバーがそれぞれ「将来にわたり作り続けたくなる料理」のレシピを考案します。
2泊3日の産地ツアー内容につきまして、下記3テーマに分けてご紹介します。
多数の応募の中から、南魚沼市の食が持つポテンシャルに大きな期待を寄せた下記3名が選ばれました。
雪国の食文化を巡る3日間 南魚沼市×CLUB REDシェフツアー
「産地視察編」
産地視察01
八海山 第二浩和蔵

「八海醸造株式会社」の酒蔵「第二浩和蔵」を視察しました。酒蔵のコンセプトは「よりよい酒を、より多くの人に」。
1990年代に起きた吟醸酒ブームにともない、市場では「八海山」が高値で販売されていたといいます。
八海山の日本酒は「本来、誰でも気軽に手に取れるもの」という考えが根底にあります。
その理念のもと、品質を担保しながら安定供給を実現するため、2004年に新設されたのが「第二浩和蔵」です。
主に「清酒八海山」「特別本醸造八海山」を製造しています。
「株式会社八海山」マーケティング本部の髙野さんから、原料処理、製麹(せいきく)、酒母、もろみ、上槽といった日本酒造りの各工程について
丁寧に説明いただきました。
「お酒の骨格と品質を作り上げる要素のひとつは麹。八海山の日本酒には、すべて手づくりの麹を使用しています」
と髙野さん。
原料の一種、突破精麹(つきはぜこうじ)の味を確かめ、搾ったばかりの原酒も特別に試飲させていただきました。

隣接する「八海山雪室 雪中貯蔵庫」へと移動し、豪雪地帯ならではの工夫が施されている貯蔵庫を視察しました。
雪室の中は年間を通して約5℃前後とほぼ一定。温度変化に弱い日本酒の保存に最適な環境を作り出しています。

見学後に複数銘柄の日本酒、「八海醸造株式会社」初のウイスキー「Hakkaisan シングルグレーン 魚沼8年 ライスウイスキー 2025LIMITED」や、
本みりん「麹の蜜」などを試飲させていただきました。

産地視察02
YUKIMURO WAGYU UCHIYAMA

複合施設「魚沼の里」内にある「YUKIMURO WAGYU UCHIYAMA」を訪れ、ドイツ食肉協会が主催するコンテスト「IFFA(国際食肉業専門見本市)」で
数々の賞を受賞しているプロシュート、サラミ、ジャーキーを試食させていただきました。
豊かな香りと後味に西澤シェフが、
「この後、何も口に入れたくないほど余韻が残っています」
と感想を述べました。

製造には、銘酒「八海山」の仕込み水にも使われている超軟水「雷電様の清水(らいでんさまのしみず)」が使用されています。
「ここでしか発信できない商品を作っている」と、代表取締役の内山さんから商品づくりへのこだわりと思いについてお話しいただきました。
産地視察03
ひらくの里ファーム

田畑にはまだ雪が残る中、次に訪れたのは農業法人「ひらくの里ファーム」です。
この地域は高品質な米の産地として知られており、五十沢川と三国川ダムの豊かな水源に支えられています。

代表の青木さんは2014年に就農し、その3年後には地域の農家の協力のもと農業法人を設立しました。
規模の拡大にともない精米量が増え、米ぬかが多く出るようになったことから、自家製の米ぬか発酵肥料で土づくりをはじめました。

青木さんから「ひらくの里ファーム」法人化に至った背景やライスセンター内の設備の紹介、土づくりへのこだわり、
慣行栽培と特別栽培の違いについて説明いただきました。
また、籾殻を炭にして散布し雪解けを早くするという暮らしの知恵についてご紹介いただきました。

生産者と直接コミュニケーションを取れる機会は、シェフたちにとってとても貴重だったようです。
清藤シェフからは
「有機栽培が素材にどのような影響を及ぼすのか」
「料理人が“良し”としている有機栽培の味と農家の判断は同じだろうか」
という質問がありました。青木さんから、
「有機栽培だからといって食味や色が良くなるとも限らない。安定して一定の品質を保つために肥料を適切に選ぶことも技術だと思う」
と回答いただきました。
産地視察04
青木酒造株式会社

「鶴齢」で知られる「青木酒造株式会社」。江戸幕府8代将軍「徳川吉宗」の時代に創業し、南魚沼市内で最も歴史のある酒蔵です。
日本百名山に数えられる巻機山(まきはたやま)の伏流水が「青木酒造」の酒造りには欠かせません。
「水質は中軟水。新潟県内で作られるお酒の中でも硬めのお水で、ミネラル分がとても豊富。旨味成分がたくさん含まれる日本酒です」
と専務取締役の阿部さんから説明いただきました。

歴史ある酒蔵だけに地域とのつながりは深く、
「ひと昔前までは、地元の皆様を中心に飲んでいただくお酒という考えが強かった」と阿部専務。
その言葉に白井シェフは、
「地元に戻り、地元に根ざした料理を提供したいと思っているので、とても腑に落ちる考え方に思える」
と共感していました。
酒蔵を見学、酒造りについて説明いただいたのちに複数の銘柄を試飲させていただきました。
新潟県の日本酒は全般的に“淡麗辛口”と表現されることが多いですが、阿部専務によると「雪男」は辛口、「鶴齢」は旨口とのこと。
その理由について阿部専務が、
「物流網が発達する以前、この地域では新鮮な海の幸が手に入りにくく、身欠きニシンや棒鱈がご馳走でした。
農業従事者が多く、力仕事のあとの食事は甘味や塩味が強めです。そうした食事に合うよう、お米の旨みをしっかりと引き出した日本酒が、当蔵の味です」
と教えてくれました。

産地視察05
木津醸造所

大和地域に移動し、明治23年から続く「木津醸造所」で、味噌が完成するまでの工程を見学しました。
へぎを使った自家製の麹と自家培養の酵母菌で作られる味噌。加温や冷却を一切せずに、自然の温度変化に任せて醸す“天然醸造”です。
雪国の厳しい冬には、建屋そのものが天然の雪室のような低温環境になるため、
冬の間は発酵がほとんど進まず、ひと夏をこえて熟成した仕上がりになるとのこと。

ひと通り仕込み蔵を視察したあとに、味噌漬けのきりざいにふきのとう味噌を試食させていただきました。
ふきのとうは、私たちが到着する間際に当主の木津さんが自ら雪の下から採ったもの。

産地視察06
八色しいたけ事業協同組合

「八色しいたけ」を生産する「八色しいたけ事業協同組合」の生産現場を見学しました。
栽培を始めたのは昭和56年。雪が深く、農業を営むことが難しい地域であることから、ハウス栽培によるしいたけづくりがはじまりました。

代表理事の駒形さんから、菌床の栄養源として欠かせない“ふすま”についてご説明いただき、実際にしいたけが栽培されているハウスも見学しました。
今では新潟県内の約7割の生産量を誇るブランドしいたけ。“厚いにも、ほどがある”のキャッチフレーズの通り、
大きくて厚みのあるしいたけに成長する秘密は、栄養満点で新鮮な地元の米ぬかをはじめ、蠣殻やコーンスターチなどをミックスしたふすまが肝とのことです。
生産者のおすすめは、焼いたしいたけに、オリーブオイルと塩をかける食べ方。
産地視察07
みなみ魚沼青菜部会(大崎菜)

大和地域大崎地区で主に生産されている「大崎菜」の畑に足を運びました。
「大崎菜」は冬菜の一種で、江戸時代中期から栽培されている歴史があり、雪中の貴重な青菜として進物用に重宝されていた野菜です。
脈々と生産が続いてきた理由について、部会長の佐藤さんは、
「冬場に出稼ぎをするよりも、暮らしている場所に残って仕事ができる利点があったのでは。冬の産業としてちょうど良かったんでしょうね」
とお話しくださいました。

しみても(凍っても)平気。とても生命力がある葉野菜。
産地視察08
道の駅 南魚沼 雪あかり

ツアーの締めくくりに、食・美術・歴史・自然を楽しめる観光スポット「道の駅 南魚沼 雪あかり」を訪れました。
雪の下で春を待っていた山菜や雪下人参、大崎菜や八色しいたけなど、地元の名産が並びます。